学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅲ(法規) 問4
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は2です。用途変更の確認を受けた工事が完了した場合の手続は、建築主事への工事完了届です。本肢のように、通常の新築と同じ完了検査を申請しなければならないとした点が誤っています。
飲食店を物品販売店舗へ変える本問では、変更部分300m²が確認対象の規模に入り、用途変更の確認を受けています。その後の手続には、建築基準法第87条が完了に関する規定を読み替えて適用します。この読み替えにより『検査を申請』ではなく『届け出』となります。建物を新築する場合の手順を、そのまま用途変更にも使うことはできません。
新築の完了検査は、出来上がった建物を検査して、計画どおり法に適合しているかを確認する制度です。一方、本問の用途変更の完了時は工事が終わった旨を届け出ます。ただし、完了検査の申請が不要だから、変更後の店舗が必要な基準に適合しなくてもよいわけではありません。適法な用途変更の工事を行い、所定の完了届を提出する必要があります。確認済証、完了検査、工事完了届、定期報告は、安全を確認する時点と対象が違う手続として整理します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。定期報告を要する建物で、所有者と管理者が異なる場合には、管理者が報告義務者となります。所有者は建物を所有する人、管理者は使用中の建物の維持管理を担う人です。例えば建物を所有する会社と、実際に施設を管理する主体が異なることがあります。定期報告は、構造や避難施設等の状態を資格者に調べさせ、行政へ報告する仕組みなので、日常の管理を担う側に義務を置きます。単に図面を設計した建築士が自動的に報告義務者になるわけではありません。
選択肢2
(2)誤りです。大規模の修繕や模様替を伴わない本問の用途変更確認では、工事終了時に建築主事へ工事完了届を提出します。新築等に用いる完了検査の申請をそのまま求めるものではありません。飲食店から店舗という用途の変更を行う行為と、建物を新築する行為では、法が準用する手続の範囲と読み替えが異なります。正しくは『建築主事に届け出なければならない』です。手続の名前が違っても、変更後の用途に必要な実体的な安全基準への適合義務は残ります。
選択肢3
(3)適当です。設備の材料・位置・能力の変更で、性能が低下する材料への変更や能力の減少を含まず、変更後の適合が明らかなものは、軽微な変更として改めて確認を受けなくてよい場合があります。例えば必要な性能を保った設備への変更でも、位置が変わって避難通路を妨げれば適合が明らかとはいえません。単に高性能な機器へ替えたという一条件だけではなく、変更後の計画全体が基準に適合することを確認します。全ての設備変更が自動的に軽微になるわけではありません。
選択肢4
(4)適当です。完了検査の申請を建築主事が受理した日から7日を経過した場合には、検査済証の交付前でも、仮に使用できる法定の例外があります。本問の3階建て鉄骨造事務所は通常、検査済証交付前の使用制限を検討する建物ですが、その例外に該当します。起算日は工事終了日や申請書の作成日ではなく、申請の受理日です。仮使用の認定を受ける方法とは別の例外であり、7日経過が建物の不適合を合法に変えるという意味ではありません。
周辺知識
建物の手続は、時系列で整理すると理解しやすくなります。設計段階に計画の確認を受け、工事中に変更があれば変更確認または軽微な変更の判断をし、完成後は行為の種類に応じて完了検査や完了届を行います。使用が始まってからも、対象建物には定期調査・報告が必要です。最初の確認が通れば、完成後まで何もしなくてよいわけではありません。
確認済証は計画段階の審査に関する書類、検査済証は工事が終わった建物の検査に関する書類です。用途変更の工事完了届は、完了した事実を届ける手続で、同じ名前の書類ではありません。法令が別の条文を準用するときには、そのまま使うのか、言葉を読み替えるのかまで読む必要があります。
定期報告では、所有者と管理者が同じかどうかも関係します。長く使う間に防火戸が閉まらなくなったり、避難通路に物が置かれたりすれば、完成時の適合だけでは安全を保てません。建築主、所有者、管理者、設計者、検査をする行政等の役割を分け、誰がいつ何を確認して届ける制度かを表にするつもりで整理すると、手続の混同を防げます。