学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅲ(法規) 問3
問題・正答・学習用解説
問題
防火地域内における次の行為のうち、建築基準法上、確認済証の交付を受ける必要がないものはどれか。ただし、建築物の建築等に関する確認済証の交付を受ける必要がない区域の指定はないものとする。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は3です。共同住宅の新築工事を施工するため、その現場に設ける仮設の工事管理事務所は、建築基準法第85条の規定により建築確認の適用が除かれます。防火地域内であっても、本肢の現場事務所の新築に確認済証は必要ありません。
現場の事務所は、工事の打合せや図面管理などのため、工事期間に合わせて設ける一時的な建物です。恒久的な事務所と同じ手続を全て求めると、本体工事を進めるための準備にも過度な負担がかかるため、所定の規定を除く扱いがあります。本問はその用途と設置場所を明記しています。
一方、防火地域での小さな増築には、地域外で使える10m²以内の確認不要の特例がありません。また、屋根や壁を持たない鉄柱でも、高さによっては工作物として確認対象になります。ホテルから共同住宅への用途変更も、似た宿泊・居住用途に見えますが、法定の類似用途の例外には入りません。確認の要否は、建物の大小だけでなく、増築、工作物、現場仮設、用途変更という行為ごとの規定で判定します。現場事務所の特例を、一般の営業用事務所へ広げないことが重要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)確認が必要です。防火地域・準防火地域の外であれば、増築等の部分が10m²以内のときに確認不要の特例があります。しかし本問は防火地域の中なので使えません。増築部分10m²ちょうどでも同じです。既存事務所が100m²の平家で小さいという事情より、地域の条件が特例を外します。火が密集した市街地へ広がる危険を抑える地域では、小さな増築でも防火上の適合を確認します。特例の面積条件と区域条件は、両方を満たす必要があります。
選択肢2
(2)確認が必要です。高さ15mを超える鉄柱等は、法令で指定された工作物として建築確認の対象になります。ゴルフ練習場のネットを支える鉄柱は20mなので該当します。建物の屋根や室内がないから建築基準法と無関係、という判断はできません。高い柱が風や地震で倒れると周囲へ大きな被害を与えるおそれがあるため、構造等を確認します。柱の高さ20mと、対象の境目15m超を比較して判定する問題です。
選択肢3
(3)確認は不要です。工事を施工するため現場に設ける仮設事務所は、法第85条第2項の適用除外の対象です。本肢は共同住宅の新築現場に設ける50m²の工事管理事務所なので、その条件に合います。仮設という名前だけでは足りず、現に行う工事のため、その現場に設けるという関係が重要です。工事と無関係な土地に営業の拠点として事務所を設ける場合は、同じ扱いにはできません。また確認が不要であることを、必要な構造上の安全まで不要とする意味に広げないようにします。
選択肢4
(4)確認が必要です。ホテルから共同住宅への変更は、政令で指定された類似用途相互間の例外に該当しません。変更後の共同住宅の用途部分は800m²で、用途変更確認の200m²超の範囲に入ります。どちらも人が寝る用途に見えますが、ホテルは不慣れな客の一時的宿泊、共同住宅は独立した住戸での継続的な生活と、使われ方が違います。類似かどうかは感覚で決めず、政令のグループを確認します。大規模工事をしないことだけでは用途変更確認を免れません。
周辺知識
建築確認は、一定の建物や工作物の計画が法令に適合するかを工事前に審査する仕組みです。対象には新築だけでなく、増築、大規模の修繕・模様替、用途変更、昇降機の設置、一定の工作物の築造等が含まれます。それぞれの行為に違う面積・高さ・用途等の条件があるので、一つの物差しでまとめて判定できません。
仮設建築物の特例にも種類があります。災害救助の応急仮設、災害時の公益的な仮設、工事現場の事務所、許可を受ける仮設店舗などは、適用除外となる規定と手続が異なります。本問の現場事務所は、工事のための場所という点が特例の根拠であり、全ての仮設建築物が確認不要ということではありません。
建築物と工作物の区別も重要です。土地に定着した屋根・柱等を持つ建物だけでなく、高い鉄柱や擁壁等の一定の工作物も、倒壊等を防ぐため法の規制を受けます。用途変更では建物の形を大きく変えなくても、安全対策が変わるため確認が必要になる場合があります。『小さいから』『部屋がないから』『工事をほとんどしないから』という見た目ではなく、行為と条文の条件を対応させます。