学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅲ(法規) 問2
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。屋外階段は、大規模の模様替の判定に使う『主要構造部』の定義から除かれています。そのため、木造の屋外階段を全部鉄骨造に取り替えることだけでは、大規模の模様替には当たりません。
模様替は、材料や仕様などを変更する工事です。木造から鉄骨造へ取り替えることはその性質を持ちますが、『大規模の模様替』という法定の分類になるには、主要構造部の一種以上について過半を行う条件が必要です。ここで主要構造部は、壁、柱、床、はり、屋根、階段とされる一方、構造上重要でない部分や屋外階段等が除かれる定義です。
したがって、『階段を全部替える』という量だけを見て、過半だから該当すると判断してはいけません。まず屋外階段がその定義の対象かを確かめると、除外されるため、この工事だけでは結論に至らないと分かります。これは屋外階段が安全上重要でない、あるいは交換の際に構造や避難の基準を守らなくてよいという意味ではありません。工事の分類と、安全な階段を設ける義務は別です。日常語の『大きな工事』と法律用語の『大規模の模様替』を区別することが要点です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。延焼のおそれのある部分は、道路中心線などから、1階では3m以下の範囲が基本です。幅4mの道路に接して塀を設けると、道路中心から塀までは2mなので3m以下に入り、該当します。道路の幅4mをそのまま3mと比べるのではなく、基準線が道路の中心にあることに注意します。住宅に附属する塀も建築物の定義に含まれ、防火上の規定を検討する対象です。図を描いて道路中心から半分の幅を測ると理解しやすくなります。
選択肢2
(2)適当です。居室は、居住、執務、作業、集会、娯楽等のために継続的に使用する室です。病院の入院患者が会話や休息のために使う談話室は、この居室に当たります。寝泊まりする部屋だけが居室ではありません。継続的という言葉も、同じ人が24時間ずっといるという意味ではなく、その用途のために繰り返し使用する性質を考えます。談話室が居室となることで、採光や換気、避難等の規定を用途に応じて検討する必要があります。
選択肢3
(3)適当です。天井から50cm下方へ突出し、不燃材料で造られた垂れ壁は、防煙壁の条件を満たします。垂れ壁は天井から下がり、床までは達しない壁です。火災の煙は熱くて天井付近にたまり、横へ流れるため、上部を区切ることで広がりを抑えます。50cmちょうどは『50cm以上』に含まれます。防煙壁は煙の流動を妨げるもので、床から天井まで火炎を遮る防火区画の壁と同じではありません。名称が似ていても役割と構造を区別します。
選択肢4
(4)誤りです。屋外階段は主要構造部の定義から除かれるため、全てを木造から鉄骨造へ替えても、その部分だけで大規模の模様替には該当しません。材料を変更するという工事の内容と、対象部位・過半という法定の条件を二段階で見ます。『全部』という強い表現に引かれて即答せず、条文がどの階段を数えるかを確認する必要があります。別に屋内階段や柱等も大きく変更する工事なら、その部分について改めて大規模の模様替に該当するかを判定します。
周辺知識
法律の用語は、普段の呼び方より範囲が広い場合も、狭い場合もあります。病院の談話室は普段の『居間』ではありませんが法律上の居室です。一方、屋外階段は建物の重要な部分に見えても、大規模工事の判定に使う主要構造部からは除かれます。言葉の印象ではなく、定義の本文と除外する部分を一緒に読むことが大切です。
延焼のおそれのある部分は、隣地境界、道路中心線、同一敷地内の建物間の中心線等からの距離で判定します。何mかを覚えるだけでなく、どこから測るかが重要です。道路に面した建物なら、道路境界から3mを測るのではありません。図上に基準線を引くことで、距離の取り違えを防げます。
防煙壁は煙を、防火区画は火災の拡大を抑えるためのものです。煙は上にたまるので垂れ壁にも効果がありますが、それだけで炎を長時間閉じ込められるとは限りません。居室かどうか、延焼範囲に入るか、防煙壁の条件を満たすか、主要構造部かという分類は、それぞれ後に適用する安全規定を決める入口です。定義を実際の部屋や部材の働きと結び付けて理解しましょう。