学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問12
問題・正答・学習用解説
問題
空気調和設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)です。長方形ダクトのアスペクト比は、長辺を短辺で割った値です。正方形なら1、細長くなるほど大きくなります。同じ断面積、同じ風量などの条件で比較すると、正方形に近い断面ほど周長が短く、空気が内壁と接して摩擦を受ける面積を抑えやすくなります。そのため、アスペクト比を小さくすると送風機のエネルギー消費が大きくなるという本肢は逆です。
例えば断面積のダクトで、の正方形なら周長は2mです。の長方形なら同じ断面積でも周長2.5mになります。流れる空気の平均速度が同じでも、壁との接触条件が異なり、細長い断面のほうが摩擦抵抗を大きくしやすいことが分かります。
送風機は、この抵抗に逆らって空気を送る仕事をします。必要風量が同じなら、圧力損失が小さい経路ほど必要な動力を抑えられます。ただし、風量だけが同じで断面積や長さ、曲がりなどまで自由に変えた場合には、アスペクト比だけで動力の大小は決まりません。比較条件をそろえた一般的な傾向として理解します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。水蓄熱は、夜間などに作った冷熱や温熱を水槽へ蓄え、負荷が大きい時間に利用する方法です。熱源機の出力だけで瞬間的なピーク全てを受け持たなくてよいため、機器容量を小さくでき、電力需要も時間的に平準化できます。熱を使う量そのものが必ず同じ割合で減るわけではありません。設備の容量、電力のピーク、年間消費量を別の効果として評価することが重要です。
選択肢2
(2)不適当です。同じ断面積などで比較すると、アスペクト比を小さくして正方形へ近づけるほど周長が短くなり、摩擦抵抗と送風動力を抑えやすくなります。天井内の高さが小さいと扁平なダクトを使いたくなりますが、納まり上の都合と送風上の有利さは別です。細長い断面を使う場合は、風速や長さ、曲がりなども含めて圧力損失を検討し、必要な送風機能力を確保します。
選択肢3
(3)適当です。VAVは必要な冷暖房量に応じて送風量を変える装置です。部屋やゾーンごとに設ければ、日射が多い室へ多く、少ない室へ少なく送るなど、同じ主ダクトから供給しながら個別の温度制御ができます。ただし、温度負荷が小さくても衛生上の換気量は必要なので、風量を際限なくゼロへ近づけられるとは限りません。温度制御と必要外気量の確保を組み合わせることが重要です。
選択肢4
(4)適当です。部分負荷時には温度をあまり下げる必要がなくても、除湿は必要な場合があります。いったん冷却して水分を凝縮させ、その後再熱して適切な温度へ戻せば、低温になりすぎず湿度を抑えられます。ただし冷やした後に温めるため、両方のエネルギーが必要です。再熱は湿気を空気へ戻す操作ではなく、水分量をほぼ変えずに温度を上げる操作なので、相対湿度も下がる方向になります。
周辺知識
空調設備のエネルギーには、熱を作る仕事だけでなく、それを空気や水で運ぶ仕事も含まれます。ダクトの送風機や配管のポンプが搬送を担当します。送風機の必要動力は、概念的に風量と圧力差の積を効率で割った量であり、次の式で表せます。
風量が、圧力差がPaなら、動力はWです。抵抗を減らすことは、必要な風量を維持しながら電力を節約することにつながります。
VAVは、必要な時間に必要な場所へ送る量を調節する方法です。蓄熱は、熱源を動かす時間と熱を使う時間を分ける方法です。再熱は、温度と湿度の条件を両立するための方法です。それぞれ別の課題を解決しています。
湿度の処理では、温度を下げるだけの顕熱処理と、水分を凝縮させる潜熱処理を分けます。冷房の温度設定だけを満たしていても湿度が高い場合があるため、温度と水分量の両方を整える必要があります。ただし、そのために増えるエネルギーも含めて方式を選びます。