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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和4年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問11

問題・正答・学習用解説

問題

建築物とその空調負荷の一般的な特徴との組合せとして、最も不適当なものは、次のうちどれか。

選択肢

  1. (1)
    劇場 ピーク負荷が小さく、予冷・予熱の時間が短い傾向にある。
  2. (2)
    百貨店 休日と平日、一日の午前と夕方の時間帯等によって負荷が大きく異なる傾向にある。
  3. (3)
    ビジネスホテル ピーク負荷が夕方から夜間にかけて発生する傾向にある。
  4. (4)
    データセンター 外皮負荷や外気負荷より室内で発生する顕熱負荷のほうが大きい傾向にある。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は(1)です。空調負荷は、室内を所定の温度・湿度に保つために、取り除いたり加えたりする必要のある熱です。劇場は開演前後に大人数が集まり、人体の発熱、照明の発熱、在室者に必要な外気の取り入れが短時間に集中します。そのためピーク負荷が大きくなりやすく、「小さい」とする本肢は不適当です。
さらに、使っていない間に暑くなったり冷えたりした壁、床、座席なども、開場までに快適な状態へ近づける必要があります。空気だけを短時間で冷やしても、周囲の面が熱いままなら人は暑く感じ、空気も再び温められます。このため、予冷・予熱の時間も十分に確保する必要があり、「短い傾向」という説明も適切ではありません。
予冷・予熱は、利用者が来る前に冷暖房を始め、使用開始時に室内条件を整えることです。劇場のような間欠使用では、開演中の人数だけでなく、停止中に建物へ蓄えられた熱と、再び運転を始める際の負荷まで考えます。建物の用途から人や設備の動きを想像することが、負荷の特徴を判断する手掛かりになります。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)不適当です。劇場は大人数と照明の発熱が集中し、換気のために取り込む外気も増えるので、ピーク負荷が大きい用途です。また、開場前に壁や座席を含めた室内を整えるため、予冷・予熱も十分な時間が必要です。公演時間が短いことは、空調負荷のピークが小さいことを意味しません。短い時間へ需要が集中する場合は、むしろ必要能力が大きくなることを、人の入退場の様子と結び付けて考えます。

選択肢2

(2)適当です。百貨店では平日と休日、午前と夕方などで来店者数が変わり、人体の発熱や必要な換気量が変動します。出入口の開閉や売場の照明、各階の営業状況も負荷に関係します。そのため、建物の床面積が同じでも一日中一定の冷房負荷にはなりません。設備を最大能力だけで選ぶのではなく、混雑していない時間帯に効率よく運転できる制御も重要になります。

選択肢3

(3)適当です。ビジネスホテルでは、宿泊客が外出から戻って客室を使う夕方から夜間に、客室の空調が集中しやすくなります。日中の外気温だけでピーク時刻が決まるわけではなく、利用者の生活時間が影響します。客室ごとの使用・不使用の差も大きいため、個別制御が重要です。ただし、建物の方位や地域、利用状況で実際の負荷は変わり、本肢は一般的な用途の傾向を述べています。

選択肢4

(4)適当です。データセンターでは、多数のサーバーなどが消費した電力の大部分が室内の熱になります。主に温度を上げる顕熱であり、機器は長時間連続して運転するため、外皮や換気より内部発熱が支配的になりやすい用途です。外が寒い冬でも冷却が必要になる理由です。人が少ないから空調負荷も小さいとは判断できず、何が室内で熱を発生させているかを確認します。

周辺知識

空調負荷は、外から来る熱と、室内で生まれる熱に分けられます。外皮負荷は壁や窓を通る熱や日射、外気負荷は換気で取り入れる空気を室内条件へ近づけるための熱です。内部負荷は人体、照明、機器などの発熱です。暑い外気を冷やすだけが冷房の仕事ではありません。
人体は対流や放射で顕熱を放出するほか、汗や呼気による水蒸気も出します。この水分を取り除くための潜熱負荷も必要です。サーバーの発熱は主に顕熱なので、大人数が集まる劇場とは負荷の内訳が異なります。
また、ピーク負荷kWと年間の処理熱量kWhは、瞬間的な能力と長期間の総量の違いです。短時間だけ非常に混雑する劇場と、連続運転するデータセンターでは、最大能力が同じでも年間のエネルギー消費は異なります。用途、利用時間、人数、機器、外気の取り入れ、建物の蓄熱を順に整理すれば、なぜその時間に負荷が大きくなるのかまで説明できるようになります。