資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和4年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問8

問題・正答・学習用解説

問題

色彩に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    平均演色評価数(Ra)は、評価対象となる光源による物体色の見え方と、同じ相関色温度の基準の光の下における物体色の見え方とのずれをもとにした数値である。
  2. (2)
    短波長成分を多く含む色温度の高い光を午前中に浴びることで、サーカディアンリズムを保つ効果が期待できる。
  3. (3)
    色票を用いて視感測色を行う際は、一般に、測色する部分の面積を色票の面積と同程度とする。
  4. (4)
    記憶色(記憶上の色彩)は、一般に、実際の色彩に比べて、彩度が低くなる傾向がある。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は(4)です。記憶色は、目の前に実物がないときに、頭の中で思い浮かべる対象の色です。一般には、実際に測った色より鮮やかに記憶される傾向があり、彩度が低くなるとする本肢は逆です。彩度は灰色からどれだけ離れた鮮やかな色かを表す属性です。
例えば、青空や新緑の色を思い出すと、実際の照明や周囲の条件を含む色より、はっきりと青い空、鮮やかな緑を想像することがあります。人の記憶は測色器のように数値をそのまま保存するのではなく、その物らしい特徴や印象の影響を受けます。ただし、全ての人が全ての対象を一定量だけ鮮やかに記憶するという法則ではありません。
このため、壁の塗装や材料の色を決めるときに、以前見た色の記憶だけで選ぶと、出来上がりの印象がずれる場合があります。実物や色票を同じ照明条件、似た面積で比較することが大切です。ほかの肢にある演色性、体内時計への光の作用、比較する色面の大きさも、それぞれ色や光の見え方・作用を変える別の要因です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。演色性は、その照明の下で物の色がどのように見えるかという性質です。平均演色評価数Raは、同じ相関色温度の基準光と比べた物体色のずれに基づきます。光源そのものが白いか暖色かという色温度の説明とは異なります。同じような白い光に見える二つの照明でも、含む波長の組合せが違えば、食品や衣服の色の見え方が変わることがあります。その違いを評価する指標です。

選択肢2

(2)適当です。サーカディアンリズムは、睡眠や覚醒などに関わる約24時間の体内の周期です。午前中に短波長成分を含む光を受けることは、体内時計を一日の明暗の周期へ合わせる手掛かりになります。ただし、色温度だけで作用が一意に決まるわけではなく、光の量、浴びる時間、長さなども関係します。夜に同じ光を浴びる場合とは影響が違うので、本肢の「午前中」という条件も重要です。

選択肢3

(3)適当です。色は同じ材料でも、広い面と小さな色票では明るさや鮮やかさの印象が変わる場合があります。視感測色では、比較する部分の面積を色票と同程度にして、面積による見え方の違いを抑えます。さらに、同じ照明や背景で並べることも大切です。小さな色票で壁全面の印象を完全に予測できるわけではありませんが、色を比べる際の条件をそろえることで判断のずれを減らせます。

選択肢4

(4)不適当です。記憶色は、一般に実際の色より彩度が高く、鮮やかになる傾向があります。低くなるという記述は逆です。対象の典型的な印象が記憶に影響するため、色を正確に合わせる作業では記憶だけに頼らず、実物と色票を同条件で比較します。鮮やかに覚えることと、より明るく覚えることは同じではありません。彩度と明度を分けて読み、どの属性の傾向を問うているか確認します。

周辺知識

色の見え方は、物体、照明、観察する人の三つが関わって成立します。赤い布が赤く見えるのは、入射した光のうち、布が反射しやすい波長の光が目に入るためです。照明に含まれる光が変われば、同じ布でも見え方が変わります。演色性はこの照明側の影響を評価し、記憶色は観察者の記憶の働きに関係します。
色温度は光の色みの尺度で、一般に高いと青白く、低いと暖かみのある色になります。温度という名称でも、部屋の空気温度や光源の表面温度を直接示す値ではありません。演色評価数とは別の軸なので、色温度が高ければ必ず物の色を忠実に見せる、という関係もありません。
建築の照明計画では、昼に活動しやすい光、夜に落ち着く光、商品の色を適切に見せる光など、目的が異なります。明るさだけでなく、光の時間帯、色、演色性を組み合わせます。内装色を選ぶときは、使用する照明と実際の面積に近い見本で確認すると、小さな色票や記憶だけでは気付きにくい差を把握できます。