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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和4年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問9

問題・正答・学習用解説

問題

音響に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    カラレーションは、「直接音」と「短い遅れ時間の反射音」の干渉によって、音の高さの変化が知覚される現象をいう。
  2. (2)
    聴覚のマスキング現象において、「マスクする音」と「マスクされる音」の高さが異なる場合には、マスクする音より高い周波数の音のほうが低い周波数の音に比べてマスクされやすい。
  3. (3)
    人の可聴周波数の範囲はおよそ20 Hzから20 kHzであり、対応する波長の範囲は十数mから十数mmである。
  4. (4)
    同種で同じ音圧レベルの音源の数が、ほぼ同じ位置において4 つになると、音源が1 つの場合に比べて、音圧レベルの値は約6 dB増加する。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は(1)です。カラレーションは、直接音と、少し遅れて到達する反射音が重なり、周波数ごとに強まったり弱まったりして、音色が変わる現象です。本肢の「音の高さの変化」は不適当です。音の高さは主に基本となる周波数に関係し、音色は複数の周波数成分の組合せや時間的な形に関係します。
同じ高さの音でも、ピアノと笛では違って聞こえます。これは含まれる倍音などのバランスが違うためです。反射音との干渉でそのバランスが変わると、こもった感じや金属的な感じなどが付くことがありますが、元の音の音程が別の高さへ移ることとは区別します。
干渉とは、波同士が重なったとき、山と山が合えば強まり、山と谷が合えば弱まることです。遅れ時間が一定でも、周波数によって山谷の重なり方が違うため、ある成分は増え、別の成分は減ります。非常に遅い反射なら別の音として聞こえるエコーになることがありますが、短い遅れの反射では別音に分かれず、音色への影響として現れます。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)不適当です。カラレーションで変わるのは、主に音の周波数成分のバランス、すなわち音色です。音の高さが変わる現象と説明するのは誤りです。反射音がわずかに遅れて重なると、周波数によって強め合うか打ち消し合うかが異なり、原音へ色付けが生じます。音源が動いて周波数そのものが変わって聞こえるドップラー効果などとは、仕組みも知覚される特徴も別です。

選択肢2

(2)適当です。マスキングは、ある音が別の音のために聞こえにくくなる現象です。高さが違う場合には、一般にマスクする音より高い周波数側の音が隠されやすいという非対称性があります。大きな低音があると、それより高い音も聞き取りにくくなることがあるためです。単に二つの音量だけでなく、周波数の関係が聞こえ方を変えます。ただし、どれほど隠れるかは音の強さや周波数差にも左右されます。

選択肢3

(3)適当です。音速を約340 m/s\displaystyle 340\,\mathrm{m/s}とすると、波長はλ=cf\displaystyle \lambda=\frac{c}{f}です。20Hzでは34020=17\displaystyle \frac{340}{20}=17 m、20kHzは20,000Hzなので34020000=0.017\displaystyle \frac{340}{20000}=0.017 m、17mmとなります。したがって十数mから十数mmという範囲に対応します。周波数が高いほど波長は短くなります。可聴範囲は年齢や個人によって異なり、全員が20kHzまで同じように聞こえるという意味ではありません。

選択肢4

(4)適当です。独立した同程度の音源を4つにすると、受音点での音のエネルギーは約4倍となり、レベル差は10log⁡104≒6\displaystyle 10\log_{10}4\fallingdotseq6 dBです。dBの値を4倍するのではありません。1台が50dBなら、同じ条件の4台で約56dBとなります。これは通常の独立した音源のエネルギーを加える扱いです。位相が完全にそろう特別な音源を波として足す場合とは計算条件が異なります。

周辺知識

音の三つの基本的な感じ方を分けましょう。高さは高音・低音、大きさは大音量・小音量、音色は同じ音程でも楽器などを聞き分ける特徴です。物理的には、周波数、振幅やエネルギー、周波数成分と時間波形がそれぞれ深く関わりますが、人の感じ方は完全な一対一対応ではありません。
波長は、音が一周期の間に進む距離です。音速がほぼ同じなら、1秒に振動する回数が多い高音ほど、波の山から次の山までの距離が短くなります。低音は波長が部屋の寸法に近くなることがあり、共鳴や回り込みが建築音響上の問題になります。
また、音圧レベルのdBは対数で表すため、音源の台数を増やす際に普通の足し算はできません。同じ独立音源を2台にすれば約3dB、4台なら約6dB、10台なら10dBの増加です。一方、カラレーションは短い時間差の波の干渉を扱います。同じ「音が重なる」場合でも、独立音のエネルギー合成と、位相関係による干渉を区別することが大切です。