学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問4
問題・正答・学習用解説
問題
建築物の伝熱に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。日射遮蔽係数は、基準となる透明ガラスを通って室内へ入る日射熱に対し、対象の窓ガラスとブラインドなどの組合せから、どれだけ日射熱が入るかを表す比です。したがって、小さいほど熱の侵入が少なく、日射を遮る効果が高くなります。本肢の「大きいほど遮蔽効果が大きい」は逆です。
例えば、同じ条件の基準ガラスから日射熱が100入るとき、ある窓の組合せから40入るなら遮蔽係数は0.4です。70入る組合せの0.7より、0.4のほうがよく遮っています。「遮蔽」という名称から、遮った割合そのものを数値にしていると連想しないことが重要です。分子は室内へ入る熱であり、遮った熱ではありません。
日射への対策では、光がガラスを直接通る分だけでなく、ガラスやブラインドに吸収された熱が室内へ放出される分も考えます。見た目に暗くなったから同じ割合で熱も減ったとは限りません。窓の断熱性能、日射を遮る性能、可視光を通す性能は関係しつつも別の指標です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。日射遮蔽係数は基準ガラスに対する日射熱の入りやすさなので、小さいほど遮蔽効果が高くなります。係数0.3と0.8なら、同じ日射条件では0.3のほうが室内へ入る熱が少なくなります。値が大きいほど良いと読みたくなりますが、「遮蔽した割合」ではないことを確認します。窓ガラス単体だけでなくブラインドなどを含む条件が示されているので、組合せ全体としての評価です。
選択肢2
(2)適当です。入射した日射は、反射する分、透過する分、ガラスに吸収される分へ分かれます。吸収された熱の一部は屋外へ、残りの一部は室内へ放出されます。日射熱取得率は、直接透過した分と、吸収後に室内へ入る分を合計して、入射日射で割った割合です。直接通り抜ける光だけを数える日射透過率とは異なります。ガラス自体が日差しで熱くなることも冷房負荷へつながると理解します。
選択肢3
(3)適当です。壁の表面では、空気の流れによる対流と、周囲の面との放射が同時に起こります。それぞれの熱交換を熱伝達率で表し、加えたものを総合熱伝達率とします。材料の内部を通る熱伝導率とは別の量です。表面での熱の受け渡しと壁内部の熱の通りやすさを分けると、表面熱抵抗と材料熱抵抗を足し合わせて壁全体を計算する理由も分かります。
選択肢4
(4)適当です。外壁の近くには、表面温度の影響を受けた空気の層ができます。風が強くなるとその空気が入れ替わり、壁と外気の間で対流によって熱が運ばれやすくなるため、対流熱伝達率が大きくなります。熱の向きは壁と空気の温度差で決まります。冬に暖かい壁が冷える場合だけでなく、日射で熱くなった壁から熱を逃がす場合もあるので、風が強いと常に室内へ熱が入るわけではありません。
周辺知識
窓を通る熱は、温度差による移動と、日射による取得を分けて考えます。外と中の温度差で熱が通る程度は熱貫流率Uで表し、入射する日射のうち室内へ入る割合は日射熱取得率などで表します。外気温が室温と同じでも、強い日射が窓に当たれば室内は熱を取得します。逆に、日射のない夜でも温度差があれば熱は移動します。
熱貫流率が小さい窓は断熱性が高いですが、日射の取得が小さいかどうかは別に確かめます。冬の日射を利用して暖房を減らす場合と、夏の日射を遮って冷房を減らす場合では、望ましい取り込み方が違うため、庇や可動ブラインドなども役立ちます。
表面の熱交換では対流と放射、材料の内部では伝導というように、場所ごとに仕組みを整理しましょう。日射で暖められた外壁は、外気へ対流で熱を渡し、周囲へ放射し、一部を壁内部へ伝導します。熱が分かれて流れる様子を考えると、一つの係数だけで全ての熱移動を表していないことが分かります。