学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅴ(施工) 問15
問題・正答・学習用解説
問題
木造2階建て住宅の建築工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢3です。軸組工法の床組を補強する木製火打梁には、所定の程度以上の断面を用います。本肢のは短辺が不足します。六角ボルトで接合することだけが適切でも、部材本体の断面が必要な条件を満たしていなければ十分ではありません。
火打梁は、床組や小屋組の隅へ斜めに入れる材です。柱・梁などでつくられた四角形は、角が回転するとひし形へ変形しやすくなります。隅を斜め材でつないで三角形をつくると、対角方向の長さが変わりにくくなり、水平面の変形を抑えられます。
このとき火打梁には引張りや圧縮が働き、両端の仕口を通じて横架材へ力が伝わります。材が細すぎれば変形や座屈に対する余裕が小さくなり、接合だけ強くしても部材全体の性能は確保できません。筋かいなど別部材の45mmという寸法を混同せず、どの面を、どの部材で補強する仕様なのかを確認します。木造の施工では、材の断面、向き、加工、接合を一組として管理することが大切です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:敷居は建具の下側、鴨居は上側で建具を案内する横材です。建具用の溝を木表へ掘る本肢の取扱いは適当です。木表は樹皮に近い側で、木裏は樹心に近い側を指します。木材は乾燥に伴う収縮が方向によって異なり、表裏に関連した反りの性質があります。建具を円滑に動かし、見付けや納まりを整えるために、部材の用途に応じて向きを選びます。表裏は単に見た目のきれいな側という意味ではなく、丸太の中の位置に基づく呼び方です。
選択肢2
選択肢2:枠組壁工法で、住宅の隅角部や土台の継手付近にアンカーボルトを配置し、その他を2.0m以内とする本肢の取扱いは適当です。アンカーボルトは土台を基礎へ固定し、壁から伝わる力を基礎へ渡します。隅や継手は構成が切り替わるため、適切な位置で固定する必要があります。間隔の上限を守るだけでなく、重要な位置への配置も確認します。枠組壁工法と軸組工法では部材の組み方や仕様が異なるため、別工法で覚えた間隔をそのまま流用しないようにします。
選択肢3
選択肢3:火打梁の断面をとした点が不適当です。木製火打梁は90mm角程度以上の所定の断面を確保します。では断面積も90mm角の半分になり、短辺方向の曲がりやすさにも差が生じます。ボルトで強く締めれば材の不足を自動的に補えるわけではありません。火打梁は床の水平面を固める材であり、壁の中の筋かいなどとは働く面が異なります。名称、配置される面、必要断面、端部の接合を対応させて覚えます。
選択肢4
選択肢4:大引きは床の荷重を受ける根太などを下から支える材で、土台は基礎の上にある横材です。大入れ蟻掛けで大引きを土台へ納め、N75釘を二本斜め打ちする本肢の仕口は適当です。大入れは相手材に欠込みをつくって受ける加工、蟻掛けは抜けにくい形で掛ける加工です。木材の形による支持と釘による固定を組み合わせます。釘だけで全荷重を吊るすという理解ではなく、材同士の接触面も力を受ける納まりとして、加工精度と所定の留付けを確認します。
周辺知識
木造の構造は、木材が連続している部分と、部材をつなぐ部分の両方で力を受けます。部材の断面が十分でも仕口が弱ければ力を渡せず、接合が適切でも部材が細ければ途中で変形や破壊が生じます。断面と接合を別々に確認し、全体の力の流れをつなぐ必要があります。
火打梁は床などの水平面、筋かいは主に壁の鉛直面を補強します。どちらも三角形をつくる考え方に共通点がありますが、使う部材や納まりは同じとは限りません。建物を箱として想像し、上下面と側面のどこを固めているのかを見分けると、名前と役割を整理できます。
木材の向きや加工にも理由があります。木表と木裏で乾燥時の反り方が関係し、継手や仕口では残る断面と接触面が力を受けます。現場では、きれいに組み合わさるだけでなく、所定の位置、材の方向、欠込み、釘やボルトの種類まで確認します。部品の名称を、実際に何を支えどう固定するかへ置き換えると理解しやすくなります。