学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅴ(施工) 問13
問題・正答・学習用解説
問題
鉄骨工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢2です。高力ボルト用の孔あけは、原則として工場でドリルを用いて行います。板厚10mm以下だから工事現場で孔をあけてよいという扱いではありません。板厚による加工方法の条件と、加工を行う場所の原則を取り違えています。
高力ボルト摩擦接合は、ボルトで鋼板を強く締め付け、板同士の接触面の摩擦によって力を伝える接合です。孔の位置や径が不適切だと、部材が正しく組み合わさらず、現場で無理にボルトを入れたり孔を広げたりすることにつながります。管理された工場で、製作図に従って加工精度を確保します。
普通ボルトやアンカーボルト、鉄筋の貫通孔などには、所定の板厚以下でせん断孔あけを認める取扱いがありますが、それを高力ボルト孔へ広げることはできません。また、ドリルという適切な道具を使っていても、現場で自由に加工してよいという結論にはなりません。対象となる孔の用途、加工方法、加工場所の三つを区別して読みます。他の肢は、工場の認定範囲、摩擦面、締付け後の余長を管理する適切な内容です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:鉄骨製作工場の認定グレードはJ、R、M、H、Sの順に区分され、取り扱う建物規模や鋼材・溶接条件などの範囲が定められます。本肢は適当です。工場名の知名度や生産量だけで区分するものではありません。計画する建物の材料と施工条件が、その工場の認定する製作範囲に入っているかを確認します。低いグレードだから規格内の製品も不良という意味ではなく、対応できる条件の範囲の違いです。必要な範囲に適合する工場を選ぶことが重要です。
選択肢2
選択肢2:高力ボルト用の孔を、板厚10mm以下を理由に現場でドリルあけしてよいとする点が不適当です。孔あけは工場で行い、高力ボルト孔はドリル加工が基本です。普通ボルトなどに認められる所定の薄板のせん断孔あけの扱いは、孔の用途が異なります。ドリルあけという方法が合っていても、現場加工を自由に認める理由にはなりません。現場で孔が合わない場合にも、独断で広げるのではなく、原因と必要な処置を確認することが大切です。
選択肢3
選択肢3:ミルスケールは、鋼材の製造時に表面へ生じる黒い酸化皮膜です。摩擦接合面からこれを除き、一様なさびを発生させて所定のすべり係数0.45以上を確保する方法は適当です。すべり係数は、締め付けた面同士が滑りにくい程度に関係する値です。単に汚れた面なら摩擦が大きいという意味ではなく、所定の処理で均一な接触状態をつくります。油や塗料などを付着させると摩擦性能を損なうおそれがあるため、処理後の保管や施工中の汚染も管理します。
選択肢4
選択肢4:締付け後、ナット面から出るねじ部分の余長が1〜6山の範囲にあることを確認する本肢は適当です。余長は、使用したボルトの長さが板の総厚さや座金・ナットに対応しているかを確認する指標になります。短すぎれば十分なねじのかかりを確保しにくく、長すぎても適切な長さを選んでいない可能性があります。ただし、余長が合うだけで締付け力の全てを確認できるわけではありません。トルシア形ではピンテールの破断など、所定の他の検査も行います。
周辺知識
鉄骨の接合では、材料、工場加工、現場組立ての管理が連続します。工場の認定範囲を確認し、製作図に従って孔をあけ、摩擦面を処理し、現場で適切に締め付けます。現場で組み立てやすいようにする精度管理が、完成後の接合性能にもつながります。
摩擦接合では、力を伝える仕組みを理解することが重要です。ボルトが鋼板を強く押さえることで、面同士の摩擦が外力に抵抗します。したがって、ボルトの強さだけでなく、接触面のすべり係数や締付け状態も必要になります。油が付いた滑りやすい面を、丈夫なボルトだけで補えると考えてはいけません。
施工の検査項目は、何を確認するかが異なります。孔の位置は組合せの精度、摩擦面は滑りにくさ、余長はボルト長さの適合、締付け検査は必要な締結状態を調べます。一つの合格をもって他を省略しないことが大切です。部品の用途や施工段階を確認すれば、板厚などの条件を別の加工へ誤用することを防げます。