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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和4年度 学科Ⅴ(施工) 問12

問題・正答・学習用解説

問題

プレキャスト鉄筋コンクリート工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    高強度コンクリートを用いて部材厚の大きなプレキャスト部材を製造するに当たり、セメントの水和熱により中心部と表面部の温度差が大きくなることを考慮した加熱養生計画とした。
  2. (2)
    プレキャスト部材の製造工場における製品検査において、外壁のプレキャスト部材の屋外に面する部分に、外壁の性能上支障がない「幅0.10mm以下のひび割れ」があったので、プレキャスト部材製造要領書に従って、初期補修用プレミックスポリマーセメントペーストによる補修を行ったうえで合格とした。
  3. (3)
    工事現場における部材の受入検査において、特殊な形状や特に注意を要する部材については、専用の架台に仮置きして、製品検査済などの表示を確認したうえで、積込み時や運搬中に生じる可能性があるひび割れ、破損、変形などの状況を確認した。
  4. (4)
    プレキャストの柱部材と梁部材の組立て精度の検査については、当該階の全てのプレキャスト部材の仮固定完了後、接合作業前に行った。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢4です。プレキャスト部材の組立て精度は、各作業工程で部材の調整が可能な時期に適宜検査します。当該階の全ての部材を仮固定するまで待ち、そこで初めて確認する方法は不適切です。ずれた部材を基準に次々と組み立てると、後から直すことが難しくなります。
例えば柱の位置や傾きがずれたまま梁を架けると、梁のかかり代や接合位置、さらに次の柱との位置関係へ影響します。仮固定は、最終的な接合が完成するまで部材を一時的に保持することです。この調整できる段階で位置、高さ、傾きなどを確認し、次の工程へ進む必要があります。
「接合作業前だから間に合う」とは限りません。接合前でも、多数の部材が組み合わされれば、一つを動かすために周囲を外すなど大きな手戻りが必要になります。工場での製品検査、現場搬入時の受入検査、組立て途中の精度検査は、それぞれ別の段階の品質を調べます。一度工場で合格したことや、最後にまとめて検査することだけで、施工途中の適切な確認を代替できません。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:高強度で厚いプレキャスト部材では、セメントの水和熱が内部にたまり、表面との温度差が大きくなるため、それを考慮した加熱養生計画は適当です。水和熱はセメントと水の反応で発生する熱です。外部から加熱する温度だけでなく、材料自身が発する熱も部材温度に影響します。中心と表面の温度差が大きいと、伸び縮みの差によってひび割れを起こすおそれがあります。早く強度を出す目的でも、昇温や冷却の速度、最高温度などを含めて計画します。

選択肢2

選択肢2:本肢は、外壁性能に支障のない幅0.10mm以下の微細なひび割れを、製造要領書に従って所定の材料で初期補修した場合です。この条件で合格とする対応は適当です。プレミックスは、必要な成分があらかじめ調合されている材料を意味します。ひび割れなら幅だけを見て何でも同じ材料で塞げばよいわけではありません。発生原因、位置、深さ、性能への影響を確認し、適用条件に合う補修を行います。補修後も必要な性能が保たれることが前提です。

選択肢3

選択肢3:工場で製品検査済みでも、積込みや運搬中に新たな損傷が生じる可能性があるため、現場で受入検査を行う本肢は適当です。特殊な形の部材は、通常の平らな置き方では無理な力が加わる場合があり、専用架台で適切に支持します。検査済み表示を確認するとともに、ひび割れ、破損、変形を実物で調べます。書類の確認と外観の確認は役割が違います。「工場合格」という情報は工場を出た時点の品質であり、運搬後の健全さまで自動的に保証するものではありません。

選択肢4

選択肢4:当該階の全部材の仮固定が終わるまで精度検査を待つ点が不適当です。各部材を調整できる時期に、位置や高さ、傾き、かかり代などを確認しながら組み立てます。後でまとめて測るだけでは、誤った柱の位置を梁や床へ引き継いでしまいます。仮固定中であっても、後続部材が載ると調整は容易とは限りません。各工程の確認と、必要な全体の整合確認を組み合わせます。「最後に検査する」より前に、「次へ進める状態か」を確かめることが重要です。

周辺知識

プレキャスト工法は、工場などでつくった部材を現場で組み合わせる工法です。工場生産による品質の安定が期待できますが、運搬、仮置き、建込み、接合という現場の工程でも品質が変わる可能性があります。完成した部材を運ぶことと、建物として正しく組み立てることは別の管理対象です。
検査の時期を流れで考えましょう。製造時には形状やひび割れ、受入時には運搬中の損傷、組立て時には位置や高さ、接合時にはグラウトなどの充填を確認します。前の検査で後の工程の不具合まで予測して合格にすることはできないため、節目ごとの確認が必要になります。
特に位置の誤差は、次の部材へ伝わりやすいものです。柱が少しずれると梁の納まりが変わり、その梁を基準にした床にも影響します。調整できるときに修正すれば小さな作業で済む問題も、全体がそろってからでは大きな手戻りになります。品質確認を工程に組み込み、確認後に次の作業へ進む考え方を押さえましょう。