学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅴ(施工) 問11
問題・正答・学習用解説
問題
コンクリート工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢4です。床スラブ表面のタンピングは、コンクリートがまだ塑性を持ち、締め直しができる適切な時期に行います。「凝結完了後」では遅く、固まり始めた組織を無理に動かすことになります。プラスチック収縮ひび割れを防ぐという目的は適切でも、実施時期が合っていません。
ここでいうプラスチックは、材料としての樹脂ではなく、まだ柔らかく変形できる状態を意味します。打込み後のコンクリート表面から水分が急に蒸発すると、内部が十分に固まる前に表面が縮み、ひび割れることがあります。日射、風、低湿度などは表面の乾燥を速めます。
タンピングは表面をたたいて締め直す作業ですが、ひび割れ対策をこれだけに頼るのではなく、風や日射を遮り、適切な養生で水分喪失を抑える必要があります。まだ修正できる時期に表面を整え、その後は保護するという順序です。他の肢は、流動化剤で流れやすさを調整すること、材料を加温すること、圧送管の内面をなじませることにより、打込み時の品質を整える対応です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:ベースコンクリートは、流動化剤を加える前のコンクリートです。本問の調合管理強度27で、ベースのスランプ15cmから流動化後21cmへ高める組合せは適当です。流動化剤によってセメント粒子などの分散を改善し、必要な流動性を得ます。現場で水を勝手に追加して柔らかくする方法とは違います。流動化後も材料分離を起こさず、必要な強度や施工性を保つよう、使用量や施工時間を管理します。高める前後のスランプを組合せで確認する問題です。
選択肢2
選択肢2:寒中ではコンクリートが冷えすぎると硬化が遅れ、初期凍害のおそれもあるため、練混ぜ水などを温めます。本肢の水40℃を使用し、荷卸し時のコンクリートを10℃以上20℃未満にする対応は適当です。水の温度と、すべての材料を混ぜた後のコンクリート温度は同じではありません。冷たい骨材や運搬中の放熱も影響するからです。材料の温度と配合を考慮して、現場へ届いたときの必要温度を確保します。セメントを直接加熱する方法と混同しないようにします。
選択肢3
選択肢3:コンクリートを流す前に富調合のモルタルを圧送し、配管の内面をなじませる本肢の方法は適当です。管の内側がなじんでいないと、最初のコンクリートのモルタル分が管壁へ取られ、粗骨材が多い状態になって詰まりや品質変化を起こすおそれがあります。富調合はセメント分の比較的多い調合を意味します。この先送りモルタルは圧送を安定させるための材料であり、通常の構造体コンクリートと同じものとして、そのまま必要な部材へ打ち込むとは限りません。
選択肢4
選択肢4:凝結が完了した後にタンピングする点が不適当です。コンクリートがまだ柔らかく、表面を締め直せる適切な時期に行います。凝結は、練った材料が流動性を失って固まっていく過程で、完了後にたたくと組織を傷めるおそれがあります。また、プラスチック収縮は初期の急な水分喪失が原因なので、表面を後で押さえるだけでなく、風や日射から保護する対策も必要です。施工時期と乾燥防止を組み合わせ、材料の状態を見て仕上げと養生へ進みます。
周辺知識
コンクリートは、練混ぜから硬化まで同じ状態ではありません。工場で練った材料が運搬され、ポンプを通り、型枠へ打ち込まれ、次第に固まります。それぞれの段階で流動性や温度、水分が変わるため、その時点の状態に合う施工を行う必要があります。
流動化は材料の分散を改善して施工しやすくする操作、加温は寒い環境で必要な温度を保つ操作、先送りモルタルは配管での品質変化を抑える操作です。どれも打込み時の品質を守るためですが、役割が違います。水を増やすだけで流動性も温度も解決するという単純な方法は取れません。
表面仕上げでは、柔らかいうちにできる操作と、硬化後にしてはいけない操作を区別します。初期のひび割れは、乾燥や沈みなど原因も異なります。タンピングを適切な時期に行い、その後は必要な養生で保護します。「固まる前だから自由に扱える」でも「一度打てば放置でよい」でもなく、材料の変化に合わせた管理が必要です。