学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅴ(施工) 問2
問題・正答・学習用解説
問題
工事現場の管理等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢2です。遣方の検査では、施工者とできる限り同じ順序・同じ方法で確かめるのではなく、異なる順序や測定方法を用いるなどして、独立した確認を行います。同じ手順をなぞるだけでは、最初に基準を取り違えた誤りまで繰り返してしまうおそれがあります。
遣方は、建物をつくる位置や高さを現場に示すため、杭や板などを使って基準を設ける作業です。これをもとに基礎や柱の位置が決まるため、基準自体の誤りは後の工事へ広く影響します。監理者の検査では、施工者の作業記録を確認するとともに、別方向からの寸法や対角線などでも整合を確かめることが役立ちます。
例えばA点を誤って選び、Aから一定の距離を測った場合、同じ誤ったAから何度測り直しても同じ結果になります。別の確実な点Bや、敷地境界との位置関係から確かめて初めて取り違いに気付けます。検査は作業を再現するだけでなく、誤りを発見できる見方を加える行為です。他の肢は、基準墨の移動、工程変更の共有、石綿廃棄物の適切な管理を述べています。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:墨出しは、設計上の位置や寸法を現場へ線などで示す作業です。床に設けた小さな孔を通し、下げ振りなどで下階の基準を上階へ移す本肢の方法は適当です。下げ振りは糸の先におもりを付け、重力によって鉛直方向を示す道具です。上下階で別々に基準を決めると、柱や壁の位置がずれてしまうため、建物全体で基準を対応させます。孔の位置や基準の保護、測定時の揺れなども確認し、上げた墨を別の寸法との整合でも点検することが大切です。
選択肢2
選択肢2:施工者と同じ順序・同じ方法を優先する点が不適当です。検査では、逆方向からの測定や別の基準との照合なども用い、同じ取り違いを再現しないようにします。これは施工者の方法を否定するという意味ではなく、独立した確認によって誤りの発見性を高める考え方です。計算を検算するときに、同じ足し算をなぞるだけでなく引き算でも確かめることに似ています。位置、高さ、直角、敷地との関係など、遣方が担う複数の条件を合わせて確認します。
選択肢3
選択肢3:施工条件の相違や工事変更によって工程が変わる場合、施工者が工程表を直ちに見直し、変更部分の施工前に発注者と監理者へ提出する対応は適当です。工程変更はその作業だけでなく、資材の納入、後続の職種、検査や試運転にも影響します。現場で先に変更工事を進め、後から関係者へ知らせると、必要な調整の機会を失います。工事内容の変更について必要な協議や契約上の手続も別途行い、その決まった条件に応じて実施工程を整えます。
選択肢4
選択肢4:石綿除去に使われ、石綿が付着しているおそれのあるシートや防じんマスクなどは、廃石綿等として特別管理産業廃棄物の管理が必要です。本肢の扱いは適当です。見た目が普通のプラスチックや布でも、付着した石綿が飛散する危険は残ります。材質だけで一般の廃棄物へ分けず、どの作業に使用し何が付着したかを確認します。石綿含有成形板などの区分と、除去作業で汚染された保護具の扱いも区別し、所定の梱包や処理を行います。
周辺知識
現場管理では、基準を正しくつくること、その基準に従って施工すること、別の視点で結果を確認することを組み合わせます。位置や高さの基準が間違っていれば、作業員が丁寧に施工しても建物全体がずれます。初期の遣方や墨出しを重視するのは、誤りの影響が後工程へ広がるためです。
検査の独立性は、同じ人が同じ数値を何回測れば十分という考え方とは異なります。使用する基準点、測る向き、計算方法などが共通していると、誤りも共通になる場合があります。別の根拠から同じ結論になるかを確かめることで、基準の取り違いや転記ミスを発見しやすくなります。
工程変更や廃棄物管理でも、現場の実際の状態を捉えることが必要です。予定が変われば関係者へ共有し、廃棄物は見た目の材質だけでなく汚染の有無を確認します。図面・予定表・材料の名称だけを形式的に扱わず、何を基準として判断し、誰と情報を共有するかまで考えることが現場管理の基本です。