学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅳ(構造) 問30
問題・正答・学習用解説
問題
非構造部材等の設計用地震力に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
一端固定のエスカレーター固定部の設計用鉛直標準震度を、全ての階で同じ値とする記述が誤りです。標準震度は、機器の重さに掛けて設計用の地震力を求めるための無次元の係数です。気象庁が発表する震度階級の数字ではありません。
標準的な設計では設置階によって区分し、鉛直標準震度は上層階・屋上が0.5、中間階が0.3、地階・1階が0.2となります。適用する仕様では、この標準値に地域係数等の所定条件を反映します。たとえば同じ重量Wに対し、係数0.5なら鉛直地震力の大きさは、0.2ならとなり、固定部に必要な抵抗が異なります。
地震動は建物を通じて機器の支持部へ伝わり、設置階や建物の応答によって増幅の程度が変わります。そのため鉛直方向だから全階一定と判断できません。またエスカレーターは上下の床を斜めに結ぶため、支持部の強度だけでなく、床同士の相対移動でかかり代が失われて脱落しないことも必要です。機器自身の慣性力と、支持する建物から与えられる変位の両方を確認します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)補強コンクリートブロック塀は地表から突出し、基礎から片持ち状に地震力へ抵抗する構造物です。その構造設計で煙突に準じた地震力を用いる記述は適切です。背後に建物があるから建物の室内壁と同じように支えられるとは限りません。塀自身の重さによる慣性力が高さ方向に作用し、基礎へ曲げやせん断を伝えます。高さ・厚さ・配筋・控壁・基礎の条件と合わせ、転倒や崩壊を防ぐ必要があります。
選択肢2
(2)屋上から突出する水槽等では、転倒や移動による危害を防ぐ有効な措置がある場合、所定の範囲で設計用地震力を減じられる扱いがあります。従って記述は適切です。水槽を置いた場所が低そう、安全そうという主観ではなく、基準の条件に対応した具体的な措置が必要です。また地震力を減らせることは、固定部や支持架台、配管等の確認を不要にする意味ではありません。満水時等の重量と、転倒に抵抗する力の経路を確認します。
選択肢3
(3)建物の上部では地震による応答が増幅しやすいため、設備機器の設計用水平震度は一般に中間階より上層階で大きく設定します。同じ機器を別の階へ移すと、必要な固定部耐力が同じとは限らないことになります。記述は適切です。ただし高層建物の実際の応答には高次モードなども影響するため、個別の応答解析結果等を用いる場合はその条件に従います。一般的な階区分の係数と、実際の各階の時刻歴応答を区別します。
選択肢4
(4)設計用鉛直標準震度は設置階で異なり、標準的には上層階・屋上0.5、中間階0.3、地階・1階0.2です。したがって全階で同じ値とする記述は不適切です。固定部は自重を支えるだけでなく、地震時には鉛直力の増減や浮上がり方向も考えて設計します。また上層階の区分は建物の階数等により定められるので、単に最上階だけを指すとは限りません。適用する基準の設置階区分と地域係数を確認して力を算定します。
周辺知識
設備機器の設計用地震力は、代表的には重量に設計用震度を掛けて求めます。重量は力なので、無次元の係数を掛けた結果も力です。実際には設置階、機器の重要度、支持形式、建物の免震・制振の有無などに応じた基準の条件を確認します。
機器を固定するアンカーや架台には、水平せん断だけでなく、重心の高さによる転倒モーメントや鉛直方向の力も作用します。水槽のような機器では内容物を含む荷重状態も重要です。建物本体が安全でも機器が倒れたり配管が壊れたりすると、避難や建物機能に支障が出ます。
エスカレーターは異なる階をまたぐため、地震時に上下の床が違う量だけ動くことが特に問題になります。一端を固定し他端で移動を許す場合も、十分なかかり代や衝突への配慮が必要です。慣性力に耐える強度と、建物の変形に追従して落ちない納まりを両方満たすことが、非構造部材・設備の耐震設計の基本です。