学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅳ(構造) 問20
問題・正答・学習用解説
問題
地盤の沈下に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
圧密沈下の主因を土粒子そのものの変形とした記述が誤りです。通常の土の圧密では、粒子自体が大きくつぶれるのではなく、粒子の配置が変わって粒子間の空隙が小さくなります。飽和した粘土では、その空隙に入っていた水が外へ排出されるため、時間をかけて沈下が進みます。
建物の荷重が急に加わると、すぐには水が抜けない粘土では、当初は増えた荷重の一部を間隙水圧が受け持ちます。その水が徐々に抜けると、土粒子同士で伝える有効応力が増加し、粒子の骨組みがより密な状態へ移ります。土粒子の固体部分をほぼ変わらないと考え、空隙の減少で全体の体積が小さくなることを説明するのが基本です。
細かい穴から水が抜けるばね入りの容器を押すと、初めは水が支え、排水につれてばねが縮む様子を想像すると理解できます。ここでばねは土の骨組み、水は間隙水に対応します。粒子の材料自体の圧縮が主因という説明へ置き換えてはいけません。沈下量だけでなく、排水経路の長さや水の通りにくさによって沈下の速さも変わります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)液状化では繰返しの揺れで間隙水圧が上がり、水が砂を伴って地表へ噴き出す噴砂が生じることがあります。水や砂の移動、排水後の粒子の再配列などによって地盤が沈下するため、記述は適切です。ただし地表に明瞭な噴砂が見えなければ沈下しないという意味ではありません。液状化層が密になる変化や側方への流動なども地盤変形に関わります。粘土の長期的な圧密と、地震による砂の抵抗喪失・排水を区別します。
選択肢2
(2)実際の地盤は、力を増やすと変形が比例せず、剛性が変わる非線形性を持ちます。それでも通常の設計では、対象とする応力・変形の範囲に対応した等価な弾性係数などを用い、弾性体として即時沈下を計算する扱いができます。記述は適切です。小さなひずみで測った非常に高い剛性を、あらゆる荷重段階へそのまま使えるという意味ではありません。簡略化する際は、実際の変形範囲を代表する値と、計算方法の適用条件を確認します。
選択肢3
(3)粘性土では、荷重を受けた直後の変形に加え、間隙水がゆっくり抜けることで長期間にわたる圧密沈下が生じます。そのため即時沈下だけでなく圧密沈下も考慮する記述は適切です。完成直後の床が水平でも、その後に不同沈下が進む可能性があります。粘性土層の厚さ、圧縮性、排水条件、過去に受けた圧力などから、将来の沈下量と進行の速さを評価します。基礎直下だけでなく荷重の影響が及ぶ深い層も対象です。
選択肢4
(4)有効応力が増える点は正しいですが、主に変化するのは粒子自体の体積ではなく、土粒子の配列と粒子間の空隙です。間隙水が排出され、空隙が減って土の骨組みが縮むことが圧密沈下の基本です。土粒子そのものが柔らかいスポンジのようにつぶれる説明ではありません。圧密試験では全体の高さの減少を測りますが、その内部で何が減っているかを、固体部分と水の入る空隙に分けて考える必要があります。
周辺知識
地盤の沈下は、原因と時間の経過を分けて整理します。即時沈下は荷重を受けた際の土の変形、圧密沈下は主に排水と有効応力の変化に伴う時間依存の沈下です。地震時には砂の液状化や、その後の排水・再配列による沈下も起こります。
全応力は、粒子の骨組みが受け持つ有効応力と、間隙水圧に分けて考えます。圧密では荷重が加わった後に水圧の分担が減って有効応力が増えます。液状化の進行時には、繰返し作用で水圧が増え、有効応力が減るという反対向きの変化が重要です。
同じ「水が関係する地盤変形」でも、土質、作用、時間、応力の変化が異なります。また、沈下の総量が小さくても場所ごとの差が大きければ建物は傾きます。地層のばらつきや基礎荷重の違いを調べ、建物全体としてどのように変形するかを確認する必要があります。沈下計算は一つの許容支持力度の値だけでは代用できません。