学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅳ(構造) 問1
問題・正答・学習用解説
問題
図-1のように、脚部で固定された柱の頂部に、鉛直荷重N及び水平荷重Qが作用している。柱の断面形状は図-2に示すような長方形断面であり、N及びQは断面の図心に作用しているものとする。柱脚部断面における引張縁応力度、圧縮縁応力度及び最大せん断応力度の組合せとして、正しいものは、次のうちどれか。ただし、柱は全長にわたって等質等断面の弾性部材とし、自重は無視する。また、引張応力度を「+」、圧縮応力度を「-」とする。
選択肢
- (1)
+16:−24:0.50
- (2)
+16:−24:0.75
- (3)
+26:−34:0.50
- (4)
+26:−34:0.75
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
柱を均等に押す軸力の応力度と、横荷重が柱を曲げる応力度を重ねます。N=240kNは断面全体を圧縮し、Q=30kNは柱脚から2,000mm離れて作用するため、柱脚に M=Qh=60,000,000Nmm の曲げモーメントを生じます。
図-2ではQの方向に沿う寸法が300mmなので、曲げに使う断面せいは300mm、幅は200mmです。面積は A=200×300=60,000mm2 、断面係数は
Z=200×63002=3,000,000mm3 軸力の圧縮は
A−N=60,000−240,000=−4N/mm2 、曲げの縁応力度は±ZM=±20N/mm2です。重ねると引張側−4+20=+16、圧縮側−4−20=−24となります。 せん断は平均が
AQ=60,00030,000=0.50N/mm2 ですが、長方形の分布は中央で最大となり、最大値は平均の1.5倍です。よってτmax=0.75N/mm2。三つが一致する(2)が正解です。最大せん断が生じる位置と、曲げの縁応力度を求める位置は同じではありません。 各選択肢の解説
選択肢1
(1)引張側+16、圧縮側−24N/mm2は、軸圧縮−4へ曲げの±20を重ねた正しい値です。しかし0.50は断面全体でせん断力を均等に分けた平均値AQです。長方形の実際のせん断応力度は一様でなく、中央ほど大きい放物線状となります。問題は「最大」を求めるため、平均の1.5倍の0.75を選ぶ必要があります。垂直応力度二つが合っていても、せん断の平均と最大を取り違えた組合せです。 選択肢2
(2)軸力は断面全体を4N/mm2圧縮し、曲げは片側へ20の引張り、反対側へ20の圧縮を加えます。そのため+16と−24になり、圧縮の絶対値の方が大きくなります。せん断は長方形断面の中央で平均0.50の1.5倍、0.75です。軸力と曲げを重ねた符号、曲げ方向の断面せい、せん断分布の最大値を全て正しく組み合わせた選択肢です。各値の単位はN/mm2です。 選択肢3
(3)+26と−34は、軸圧縮−4に曲げ±30を加えた値ですが、本図の曲げ縁応力度は±20です。断面せいを200mm、幅を300mmと逆にするとZ=2,000,000mm3となり、誤って30が出ます。荷重の向きに沿う寸法300mmを断面せいに使う必要があります。さらに0.50は平均せん断応力度で、最大ではありません。曲げ軸の読み取りと、せん断分布の二点で条件に一致しません。 選択肢4
(4)最大せん断応力度0.75N/mm2は正しい値ですが、縁応力度の二つが違います。図-2の300mm方向へ柱が曲げられるため、断面係数は3,000,000mm3、曲げ縁応力度は20です。従って軸圧縮を合わせた値は+16と−24になります。200mmと300mmを逆にしても面積は変わらず、軸応力度やせん断応力度は同じままなので、曲げの計算だけが誤っていることを見抜く必要があります。 周辺知識
応力度は、力を断面の面積で割って、材料の各部分がどれだけ負担しているかを表す量です。軸力が図心に作用する場合、断面には一様な垂直応力度ANが生じます。曲げでは中心から遠い部分ほど伸縮が大きくなり、弾性範囲の垂直応力度は直線的に分布します。 断面二次モーメントIは材料が曲げ軸からどれだけ離れて分布するかを表し、縁までの距離で割ったものが断面係数Zです。長方形ではI=12bh3、Z=6bh2なので、幅とせいを逆にすると曲げへの抵抗が変わります。面積が同じでも、定規を寝かせるか立てるかで曲がりやすさが違うことに対応します。 せん断応力度は断面をずらす向きの応力で、曲げによる垂直応力度とは方向も分布も違います。長方形では上下縁で0、中央で最大です。計算時はkNをNへ、長さをmmへそろえ、ZMなら Nmm/mm3=N/mm2 となることを確認すると、千倍の単位間違いも防げます。