学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅰ(計画) 問16
問題・正答・学習用解説
問題
高齢者施設に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢3です。個室ユニットケア型の特別養護老人ホームでは、個室と共同生活室を組み合わせて一つの生活単位をつくります。隣接する二つのユニットで共同生活室を共用し、生活単位を一体化する計画は、この考え方に合いません。
ユニットは、少人数の入居者が顔なじみの人や職員と暮らすまとまりです。共同生活室は施設全体の大食堂ではなく、そのユニットの居間に相当します。二つをまとめれば広い部屋になるというだけでは、人数が増え、落ち着いた関係の中で過ごす目的を保てません。各ユニットに属する共同生活室を設け、他のユニットの通り道にしない配慮も必要です。
他の肢は、それぞれ対象施設と利用者の行動に合う計画です。認知症高齢者グループホームの8人は5〜9人の生活単位に収まり、小規模多機能の宿泊個室10平方メートルは7.43平方メートル以上を満たします。トイレを近くに適切な数だけ設けることは、移動負担や待ち時間を減らします。施設名が似ていても、居住やサービスの形式を区別して基準を判断します。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:認知症高齢者グループホームの一ユニットを8人とする本肢は適当です。一つの共同生活住居の入居定員は5〜9人で、8人はその範囲内です。少人数で食事や日常の活動を共にすることで、顔なじみの関係をつくり、生活環境を理解しやすくする狙いがあります。大人数を一室へ集めて効率だけを高める発想とは異なります。人数を守ることに加え、個人の落ち着ける居室と、無理なく参加できる共同の場所を設け、支援する職員の体制も合わせて考えます。
選択肢2
選択肢2:小規模多機能型居宅介護の宿泊個室を10平方メートルとする本肢は適当です。宿泊室の個室は7.43平方メートル以上が基準なので、10平方メートルは満たしています。このサービスは、在宅生活を支えるため、通いを中心に泊まりや訪問を組み合わせます。特別養護老人ホームの恒久的な居室と同じ施設ではありません。また面積だけで使いやすさは決まらず、ベッドの配置、介助する人の立つ場所、入口からの移動なども確認する必要があります。
選択肢3
選択肢3:二つのユニットの共同生活室を共用にした点が不適当です。共同生活室は、いずれか一つのユニットに属し、その入居者が食事や交流をする生活の中心として計画します。自分たちの居間を隣の集団と常時共用にすると、小さな生活単位という特徴が失われます。必要に応じて施設全体で交流する場所を別に設けることと、毎日の居間を統合することは別です。個室の集まりと居間を一体のまとまりとして読み、生活単位を空間的にも保ちます。
選択肢4
選択肢4:トイレを近くに設け、個室3部屋に一つ以上とする本肢は適当です。食事や起床の後など、複数の人が同じ時間帯に利用したくなる場合を考えています。トイレが遠いと移動の負担が大きく、待ち時間が長いと自立した排泄を妨げることがあります。この比率を全ての施設に共通する唯一の法定数と覚えるのでなく、本問の生活を支える計画として理解します。便房内の車椅子の動き、手すり、介助の空間、分かりやすい位置も併せて確保します。
周辺知識
高齢者施設は、単に介護の作業を行う建物ではなく、利用者が日常を過ごす場所です。ユニットケアは、個室による私的な居場所と、少人数で共有する居間を組み合わせます。一人で落ち着く時間と、他者と過ごす時間の両方を選べることが大切です。
認知症のある人にとって、知らない人が多く出入りする大空間や複雑な経路は負担になる場合があります。生活のまとまりを分かりやすくし、顔なじみの関係を保つ計画には意味があります。ただし全員を同じ生活時刻へ合わせるのでなく、一人ひとりの習慣や状態に応じた支援が必要です。
建築の寸法は、介護のしやすさと自立のしやすさに影響します。トイレまでの短い動線、手を支えられる位置、車椅子と介助者が動ける余地は、本人ができる動作を保つ助けになります。最低面積や人数を確認した上で、実際の一日の行動をたどって計画を検討します。