学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅰ(計画) 問15
問題・正答・学習用解説
問題
公共建築物等の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢4です。1960年代に建設された民間の事務所建築の意匠を受け継ぎ、3階エントランスを持つ庁舎へ転用した事例は、旧千代田生命本社を利用した目黒区総合庁舎に対応します。大田区役所本庁舎と建物を取り違えています。
目黒区総合庁舎の元の建物は、村野藤吾の設計で1966年に完成しました。既存の外観や内部空間の特徴を尊重しながら、区役所として利用するための改修が行われています。大田区役所本庁舎も既存建物を転用した事例ですが、元は1992年に完成した商業・事務所の建物で、成立した年代や具体的な空間の特徴が違います。
転用では、古い建物の部屋の名前を変えるだけでは足りません。石巻市庁舎の例のように、売場の広さを執務空間へ、映画館のまとまった客席空間を議場へ読み替えるなど、既存の特徴と新しい用途を対応させます。他の肢の学校や大学は、教員の見守りや地域の防災公園とのつながりを計画しています。利用者と施設の役割に合う空間の組立てを確認します。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:博多小学校の説明は適当です。壁で閉じた従来型の職員室だけに教員が集まるのではなく、教員コーナーや作業の場所を学習空間と関係付けています。オープンプランは教室間等を開放的につなぐ構成で、複数の教員が児童の様子に気付き、関わりやすくなります。ただし、壁をなくせば自動的に見守りが成立するわけではありません。教員の居場所と視線、児童の活動範囲、運営方法を合わせて計画することで、空間の開放性を教育活動へ生かします。
選択肢2
選択肢2:立命館大学大阪いばらきキャンパスの説明は適当です。工場跡地の活用と地域の公園整備を関係付け、大学と防災公園を一体的に計画した事例です。官民連携とは、行政と民間側が役割を分担し、共通の目的へ取り組むことです。大学の敷地を学生だけで完結させるのでなく、地域の日常の利用や災害時の機能ともつなげています。隣に公園があるという位置関係だけでなく、境界や動線、利用の方法を調整して一体性をつくる点が重要です。
選択肢3
選択肢3:石巻市庁舎の説明は適当です。百貨店の売場を執務スペース、映画館を議場へ転用し、既存のエスカレーターも活用しました。大きな売場は窓口や机を配置するまとまった空間として使え、映画館は多人数が同じ方向を向く議場との対応を考えられます。ただし、用途を変えれば必要な設備、避難、耐震、安全性も確認が必要です。既存建物の形を無理に全て壊すのでなく、使える空間的な特徴を見つけ、新たな公共施設の役割へ結び付けた例です。
選択肢4
選択肢4:1960年代の建物や3階エントランスという特徴を大田区役所本庁舎と組み合わせた点が不適当です。この説明は旧千代田生命本社を改修した目黒区総合庁舎に対応します。大田区の本庁舎も民間建物の転用ですが、元の建物は1992年に完成したもので、同じ事例ではありません。両方とも「事務所から庁舎」と大まかに覚えると混同します。改修前の建物名、建設年代、特徴的な空間と、その意匠をどう引き継いだかまで関連付けて整理します。
周辺知識
コンバージョンは、既存建物の用途を変更して活用することです。傷んだ部分を直して同じ用途で使う修繕とは異なり、必要な部屋の構成、設備、利用者の動きが変わります。既存の床面積や構造、階段などを調べ、新用途に適した計画を組み立てます。
元の用途と新しい用途には、対応しやすい部分と調整が必要な部分があります。百貨店の広い売場は窓口や執務空間として使いやすい面があっても、庁舎としての機密性や待合、職員と来訪者の動線は別に考えます。既存の設備を残す場合も、安全性や利用しやすさの確認が必要です。
意匠の継承は、外壁だけを保存することに限りません。入口の印象、階段、材料、室内の光や空間の連続も建物の価値を構成します。残すべき特徴を理解し、新しい用途に必要な変更と調整することが改修設計です。実例では、改修前、残した部分、加えた機能の三つを分けて読み取ります。