学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅰ(計画) 問14
問題・正答・学習用解説
問題
建築物と周辺環境に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢1です。屋根全体を大階段状の広場にし、その間のスリット状の経路から入口へ導く構成は、大阪府立近つ飛鳥博物館の特徴です。京都のTIME’S Ⅰ,Ⅱの説明としている点が誤りです。
TIME’Sは高瀬川沿いの商業建築で、水面に近い高さのテラスや通路によって建物と川との関係をつくっています。一方、近つ飛鳥博物館では建物を一つの丘のように構成し、段状の屋根から周辺の環境を見渡せます。同じ安藤忠雄の設計でも、水辺へ近づく低い外部空間と、屋根を上って見渡す広場という空間のつくり方が違います。
他の肢は、広場や通路を建物の余りの場所として扱わず、街と建築をつなぐ主要な空間としています。アオーレ長岡は屋根付き広場を中心に機能を配置し、太田市美術館・図書館は内外を巡る経路をつくり、ヒルサイドテラスは広場や路地を連続させます。何の施設かに加えて、人がどこから入り、どこを歩き、何が見えるかを想像すると実例を区別できます。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:大階段の屋根とスリット状の入口経路をTIME’Sの特徴とした点が不適当です。その構成は近つ飛鳥博物館に対応します。TIME’Sは京都の高瀬川へ向けてテラスや通路を配置し、水面に近い位置で水辺を感じる構成が特徴です。建物名だけを別名へ置き換えて覚えるのでなく、敷地が川沿いなのか、古墳群のある丘陵の環境なのかを対応させます。周辺の地形や水面との関係が、入口や外部空間のつくり方の違いに表れています。
選択肢2
選択肢2:アオーレ長岡の説明は適当です。屋根付き広場のナカドマを核に、アリーナや市役所、市民交流の機能を組み合わせています。中土間という名前のとおり、複数の用途の間をつなぎ、集まりや活動の場となる空間です。役所へ用事がある人だけが入る閉じた施設とせず、街から人を受け入れる広場を中心にしています。大きな屋根は天候への配慮にもなります。複合施設では部屋の種類だけでなく、それらの間にどのような公共の場所を置くかが重要です。
選択肢3
選択肢3:太田市美術館・図書館の説明は適当です。スロープ、階段、テラス、緑化された屋上がつながり、建物の内外を巡る経路を形成します。展示を見る、読書をするという目的に加え、散策しながら街を眺める体験も組み込まれています。駅前から内部の活動が感じられ、建物側からも街が見えるという双方向の関係が特徴です。ガラスを多く使えば同じ効果になるわけではなく、人が実際に歩く経路や滞在する場所と、視線の抜けを合わせて計画します。
選択肢4
選択肢4:代官山ヒルサイドテラスの説明は適当です。複数の建物の間にある広場や路地が、外部空間を構成する重要な要素になっています。建物を独立した物体として並べるだけでなく、歩いて移動する際に次の場所が見え、周囲の建築や庭園との関係を感じられる構成です。ゲートは単なる飾りではなく、場所のつながりや境目を分かりやすくします。段階的に整備された建築群でも、建物同士の間と周辺の街への接続を考えることで、まとまりをつくれます。
周辺知識
建築の外部空間は、建物以外の残った敷地というだけではありません。人を迎える広場、通り抜ける路地、水辺へ下りるテラス、街を眺める屋上など、そこで起こる行動を積極的につくる場所です。実例の学習では、平面や断面の中で人の動きをたどります。
同じ階段でも、単なる階移動の設備と、座ったり眺めたりする大きな広場では役割が異なります。同じ屋根も、部屋の上を覆うだけでなく、上面を歩ける場所や下部を公共広場として利用できます。一つの部位が複数の役割を持つことに注目します。
街へ開くという表現も、外壁を透明にすることだけを意味しません。入りやすい経路、用途を越えて共有できる場所、周囲の景観への視線、地域の人が滞在できる使い方が関係します。建物名と設計者に加え、街との接点がどこにあり、どのような体験を生むかを整理すると理解が深まります。