学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅰ(計画) 問13
問題・正答・学習用解説
問題
自然災害からの復興支援のための住宅、住宅地等の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢4です。グループハウス尼崎は、阪神・淡路大震災後のケア付き仮設住宅からの生活の継続を背景に、高齢者が支援を受けながら共同で暮らすためにつくられた福祉型の市営住宅です。高齢者向けと一般向けの住戸を組み合わせ、サポートセンターを併設した住宅という説明とは異なります。
この事例では、単に部屋を提供するだけでなく、介助が必要な人の暮らしと人間関係を支えることが課題でした。小さなまとまりでの生活や、職員による継続的な支援を伴う住まいとして理解します。一般の住戸を多数並べた災害公営住宅と、支援を受けながら集まって暮らす形式を区別する必要があります。
災害後の住まいには複数の段階があります。応急借上げ住宅は既存の賃貸住宅を利用して当面の生活を確保し、防災集団移転は危険な場所からより安全な場所へ住宅のまとまりを移す事業です。みんなの家は住宅そのものではなく、人が再び集まり、話し合える場です。住居の確保、安全な立地、福祉、交流というそれぞれの役割を分けて考えます。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:防災集団移転促進事業の説明は適当です。災害の被害を受けた場所や災害危険区域等で、住み続けることが適切でない区域から住宅を集団で移すことを促します。一軒だけを修理して元へ戻す対策とは異なり、再び災害を受ける危険がある立地そのものを見直します。集団移転には、これまでの近隣関係を保ちやすい面もあります。一方、仕事場への距離や生活施設へのアクセスも変わるため、安全性に加えて移転後の暮らしを具体的に検討します。
選択肢2
選択肢2:応急借上げ住宅の説明は適当です。新たな仮設住宅を建てる代わりに、自治体が既存の民間賃貸住宅を借り上げ、被災者へ当面の住まいとして提供します。みなし仮設住宅とも呼ばれます。既存住宅を利用できる反面、入居先が広い地域へ分散すると、以前の近所の人と離れたり、支援の情報が届きにくくなったりします。建物を早く確保できることだけで評価せず、生活相談、移動、見守りなど、分散した居住を支える取組も必要です。
選択肢3
選択肢3:陸前高田のみんなの家の説明は適当です。津波の被害で立ち枯れたスギの丸太を使い、被災した人々が集う場所としてつくられました。ここでの建築の役割は、各世帯が寝泊まりする住宅を増やすことではなく、人が出会い、話し、地域とのつながりを取り戻す場所を用意することです。材料は地域の被災の記憶とも結び付きます。災害復興では道路や住宅の整備に加え、人間関係や日常の居場所を支える小さな建築も重要だと示す事例です。
選択肢4
選択肢4:グループハウス尼崎を一般向け住戸と高齢者向け住戸の組合せとして説明した点が不適当です。ケア付き仮設住宅で暮らした高齢者等の生活を引き継ぎ、支援を受けながら共同生活を送る福祉型の住まいという特徴を捉えます。職員の支援と少人数での生活の場が組み合わされており、単に住宅の横へ相談センターを置く説明では中心的な特徴が伝わりません。災害後の住まいを比較するときは、対象者と支援の方法、生活単位を確認します。
周辺知識
災害からの復興には、当面の安全確保、仮の住まい、恒久的な住まい、地域の生活の再建という課題があります。全てを一種類の施設で解決できるわけではありません。応急住宅と恒久住宅、集会の場、介護を伴う住まいの役割を分けることが出発点です。
高齢者や介助を必要とする人は、建物を移るだけでも生活が大きく変わります。通院先、支援者、顔見知りの人との関係が切れると、部屋の面積が十分でも暮らしにくくなります。住宅の計画では、個室の設備と同時に、共同で過ごす場所や見守りの仕組みを考えます。
移転によって災害危険性を下げても、地域のつながりまで自動的に回復するわけではありません。集会場で人が会えること、支援を受け続けられること、買物や仕事へ移動できることも生活再建の条件です。復興の建築を、建物の完成と、その後に営まれる日常の両方から理解します。