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学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅰ(計画) 問12

問題・正答・学習用解説

問題

日本の伝統的な住宅・集落等の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    卯建とは、一般に、妻壁を屋根面より高く突き出し、小屋根を付けた部分のことで、建築物の装飾としてだけではなく、防火性能を兼ね備えている。
  2. (2)
    築地塀とは、一般に、方形の平瓦を並べ四隅を釘留めし、目地に漆喰を盛り上げた外壁仕上げである。
  3. (3)
    岩手県下に多く見られた曲り屋造りとは、L字型の平面形状を有し、突出部は厩で母屋の土間とつながる民家形式の一つである。
  4. (4)
    輪中とは、河川の氾濫する低湿地帯で、周囲に堤防を築き、集落と耕地を守る水防のための集落形態のことである。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢2です。平瓦を外壁へ張り、その継目に漆喰を盛り上げる仕上げは、なまこ壁です。築地塀は土を突き固めるなどして築いた塀をいい、外壁仕上げの名称であるなまこ壁とは異なります。
なまこ壁では、瓦の間に盛り上がった白い漆喰が網目のように見えます。目地は材料同士の継目で、そこを厚く仕上げた形が、海の生き物のナマコに似ることに由来します。瓦と漆喰による外壁は雨や火への備えにもなります。一方、築地塀は境界を区切る壁そのものを土等でつくり、頂部に瓦屋根などを載せて雨から守るものです。
他の肢も、形と役割を結び付けると理解できます。卯建は屋根付近の突出部で延焼を抑え、曲り屋は人の生活と馬の飼育を一つの建物にまとめ、輪中は集落と耕地を堤防で囲って洪水へ備えます。装飾や特殊な形に見えても、火災、雨、農業、地域の地形に対応した理由があります。名称だけでなく、何をどの範囲で守る工夫かを整理します。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:卯建の形と防火上の働きの説明は適当です。妻壁は屋根の端側にある壁で、そこを屋根面より高く立ち上げ、小さな屋根を付けた部分が卯建です。隣り合う家の屋根付近で炎が横へ広がることを抑える役割を持ちます。雨が壁の上から入ることを防ぐため、小屋根も必要になります。立派な装飾として建物の外観を特徴付ける場合もありますが、見栄えだけの部品ではありません。構成する場所と、隣家との延焼経路を合わせて考えます。

選択肢2

選択肢2:記述している仕上げを築地塀と呼んだ点が不適当です。正しくはなまこ壁で、壁面の平瓦と盛り上がった漆喰目地が特徴です。築地塀は土を層状に突き固めるなどしてつくる塀そのものを指し、瓦は主に頂部を雨から保護する屋根等に使います。「瓦を使う」という共通点だけで同じものにしないことが重要です。壁の表面を覆う仕上げの話なのか、敷地を区切る塀の構造の話なのかを分けると、両者の違いを具体的に説明できます。

選択肢3

選択肢3:岩手県などに見られる曲り屋の説明は適当です。平面を上から見るとL字形で、突出した部分を馬小屋として使い、母屋の土間とつなげます。土間は床板を張らず、地面に近い高さで作業等に使う部分です。馬は農作業や運搬に関わる重要な存在だったため、人が暮らす場所の近くで世話や見守りができる構成に意味があります。L字形を単なる外観の好みとして覚えるのではなく、住まいと生業が一体になった平面として理解します。

選択肢4

選択肢4:輪中の説明は適当です。洪水が起こりやすい低い土地で、家の集まりと農地を堤防で囲い、一つのまとまりとして守る集落形態です。一軒ごとに塀をつくる話ではなく、地域全体を囲う治水の仕組みです。周囲を囲うため、外からの洪水を防ぐと同時に、内側へ降った雨を排水することも課題になります。堤防の維持や水の管理には共同の取組が必要です。土地の高さ、河川との関係、住民の協力が集落の形に表れている例です。

周辺知識

伝統的な建築や集落を読むときは、気候や災害、生業との関係を考えます。瓦や漆喰は外観をつくるとともに、雨や火に対応する材料です。馬小屋を母屋へつなぐ平面は農業や飼育の生活に、集落を囲う堤防は河川沿いの地形に対応しています。
建築の名称には、仕上げ、部位、建物形式、集落形式という異なる大きさの対象が混在します。なまこ壁は主に壁面の仕上げ、卯建は屋根付近の部位、曲り屋は家全体の平面、輪中は地域のまとまりです。対象の大きさを分けるだけでも、用語同士の取り違えを減らせます。
防災の働きも万能ではありません。卯建があればどんな火災でも安全ということではなく、輪中にも堤防の損傷や排水の課題があります。昔の工夫が何を改善したのかと、その仕組みの限界を合わせて考えます。形を理由と結び付けて学ぶことで、現代の防火や治水の計画にもつながります。