学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅰ(計画) 問8
問題・正答・学習用解説
問題
建築物の各部の高さに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢1です。乳幼児用おむつ交換台を高さ50cmにすると、立っておむつを交換する大人が深く前かがみになりやすく、作業台として低過ぎます。一般に70〜80cm程度など、保護者が無理のない姿勢で手を届かせられる高さを検討します。
台に寝かせるのは乳幼児ですが、作業するのは大人です。子どもの身長に合わせて低くするという考えでは、抱き上げ、身体を支え、おむつや衣類を扱う姿勢が不自然になります。一方、高過ぎると小柄な人が手を伸ばしにくくなるため、単に高くするほどよいものでもありません。
押しボタンは車椅子から届く範囲、カウンターは立位と座位の作業面、パーティションは座ったときの目の高さとの関係で決めます。高さの意味がそれぞれ違うため、全部を同じ寸法にそろえることは合理的ではありません。また、交換台には転落防止、手を離さず使える荷物置場、カウンターには膝下空間なども必要です。高さだけを単独で満たすのでなく、姿勢と動作の連続を確認します。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:おむつ交換台の高さ50cmが不適当です。立って作業する人の手元として低く、腰を深く曲げる姿勢になりやすいためです。一般的な計画例では70〜80cm程度の高さを考えますが、製品や対象者に応じて使いやすさを確認します。寝かせる子どもが小さいことと、作業台を低くすることは結び付きません。転落防止措置や荷物置場の位置も必要で、保護者が物を取るために子どもから手や目を離さずに済むよう、周囲を含めて計画します。
選択肢2
選択肢2:ドアの押しボタンスイッチを高さ110cmとする本肢は適当です。車椅子使用者が座った位置から操作できる範囲に設けます。立っている人に合わせて高過ぎる位置へ置くと、腕が届いても無理な姿勢になり、操作しにくくなる場合があります。高さだけでなく、車椅子全体が戸の動く範囲から離れてボタンを押せる位置、壁へ近づける空間も確認します。110cmという値を全ての利用者に唯一最適な高さとするのではなく、操作面の位置と動線を合わせて考えます。
選択肢3
選択肢3:一般用100cm、車椅子使用者用70cmのフロントカウンターとする本肢は適当です。立位の人と座位の人では、書類を書いたり物を受け取ったりしやすい作業面の高さが異なります。低い部分を設ければ、車椅子から受付担当者とやり取りしやすくなります。ただし下部が箱状に塞がっていると、膝や足先が入らず身体を近づけられません。天板の高さに加え、下部の高さ・奥行き、通路の幅を確保し、受付を一続きの動作として利用できるようにします。
選択肢4
選択肢4:座位の視界を遮るパーティションの高さ120cmは適当です。椅子に座ったときの目線を遮り、立ち上がったときには周囲の様子を見渡しやすくする高さの計画です。机の高さと同じ仕切りでは相手の顔が見えやすく、高過ぎれば立位でも空間を分断します。ただし人の身長や椅子の調整によって目線は変わります。また視線を遮る低い仕切りだけでは、音が上を回り込むため十分な遮音壁にはなりません。視線の遮断と音の遮断を分けて考えます。
周辺知識
人体寸法に基づく計画では、床から測った高さだけでなく、目、肘、手、膝などの位置と動作を考えます。作業する面は手元、見通しを調整する仕切りは目線、車椅子用のカウンター下は膝や足先との関係で決まります。何を基準にした寸法かを見分けることが重要です。
同じ人でも、立つ、座る、かがむ、車椅子で近づくと姿勢が変わります。子どものための設備でも、操作や介助をする大人の寸法を考える必要があります。おむつ交換台がその例で、寝かせる面の広さと保護者の作業しやすい高さを両方確保します。
高さを適切にしても、前に障害物があれば手が届かず、扉がぶつかれば安全に操作できません。幅、奥行き、接近方向、動作に必要な空間を合わせて計画します。典型的な数値は検討の出発点であり、利用者の違いや実際の製品寸法を確認し、無理な姿勢や介助の負担が生じないかを具体的に考えます。