資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅰ(計画) 問7

問題・正答・学習用解説

問題

建築物内で発生する音に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    室内の反射音を防ぐために、壁と天井の仕上げに孔あき板を採用し、低音域の吸音率を向上させるために、その仕上げとコンクリート躯体との間に空気層を十分に確保した。
  2. (2)
    音圧が極端に弱くなることにより、音が聞こえにくくなる場所(デッドスポット)の発生を防ぐために、天井面や壁面を大きな凹曲面で構成した。
  3. (3)
    オープンプラン型の小学校において、隣接する教室からの音の伝播を防止するため、廊下の天井の仕上げに表面をガラスクロスで覆ったグラスウールを使用した。
  4. (4)
    隣り合う部屋の間仕切りにおいて、せっこうボードを両面張りとした壁の遮音性能を向上させるため、共通間柱構造から、壁のボードを各面ごとに別々の間柱に取り付ける独立間柱構造に変更した。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢2です。大きな凹曲面は反射音を特定の場所へ集中させ、音の強い場所と弱い場所をつくる原因になります。デッドスポットを防ぐために凹曲面を採用するという方向が誤りです。反射音が均等に届くよう、面の形や向き、吸音・拡散を計画します。
凹曲面は内側へへこんだ曲面です。光を集める凹面鏡に似て、音もその面で反射すると一部へ集まりやすくなります。集中した場所では大きく聞こえる一方、ほかの場所には必要な反射音が届きにくくなります。音の干渉等も含めて局所的に音圧が弱い場所が生じるため、全ての座席で聞き取りやすい計画が必要です。
他の肢では、孔あき板と背後空気層で低い音を吸収しやすくすること、グラスウールで廊下の反射伝搬を減らすこと、独立間柱で壁を介する振動の伝達を減らすことを述べています。音を吸収する、音を散らす、隣室へ伝わる経路を切るという別々の対策です。一つの吸音材を張れば、形状による集中や全ての遮音問題が同時に解決するわけではありません。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:孔あき板とコンクリートの間に十分な空気層を確保する本肢は適当です。孔あき板の小孔内の空気と背後の空気層は、共鳴によって特定の周波数の音を吸収する仕組みをつくります。一般に背後の空気層を厚くすると、吸音しやすい周波数を低い側へ移すことができます。低音は波長が長く、薄い仕上げをただ張るだけでは吸音しにくいことがあります。孔の大きさや開孔率、板厚等も性能へ影響するため、空気層だけで全帯域の吸音率が上がると考えないようにします。

選択肢2

選択肢2:デッドスポット防止のため大きな凹曲面とした点が不適当です。凹曲面は反射音を集めやすく、音場のむらを生む原因になります。音が集まった場所だけを測ってよく聞こえると判断しても、別の場所では聞き取りにくい場合があります。凸面や適切な凹凸などによって反射を分散する方法、面の角度の調整、必要な吸音を組み合わせます。単に反射音を全てなくせばよいのでもなく、用途に応じて有用な反射を残し、各位置での聞こえ方を検討します。

選択肢3

選択肢3:廊下天井にガラスクロスで覆ったグラスウールを用いる本肢は適当です。グラスウールは細い繊維の隙間へ音が入る多孔質吸音材で、空気の振動が繊維間で減衰します。開放的な教室間では、廊下の天井などで反射しながら音が隣室へ届くため、その反射を吸音で減らします。表面のガラスクロスは、吸音を妨げにくい通気性を保ちながら材料を保護するためのものです。ただし、教室間の直接音まで完全に遮る壁の代わりになるわけではありません。

選択肢4

選択肢4:共通間柱から独立間柱へ変更する本肢は適当です。両側のボードを同じ柱へ固定すると、一方の面の振動が柱を通じて反対側へ伝わります。各面を別々の間柱へ取り付ければ、その直接の振動経路を減らせます。二重壁で空気層を設けても、硬い下地で両側がつながっていると遮音性能に影響するためです。ただし、床や天井を回り込む音、配管貫通部、隙間などの経路が残る場合があります。壁の構造だけでなく周辺の接続も含めて計画します。

周辺知識

吸音と遮音は異なります。吸音は室内の音の反射を減らすこと、遮音は音が隣の空間へ透過することを抑えることです。柔らかい吸音材を室内へ張ると響きは減りますが、それだけで隣室への音を十分に止められるとは限りません。音の経路に合う対策を選びます。
反射面の形も重要です。平面は一定方向へ反射し、凹面は集中させやすく、凸面や適切な細かい凹凸は分散に用いられます。ただし、音の波長と面の大きさの関係によって働き方が変わります。小さな凹凸を付ければ、どんな低音でも均等に散るという単純な関係ではありません。
二重壁では、空気を伝わる音に加え、下地や接合部を通る振動も考えます。独立間柱は後者の経路を減らす工夫です。学校のように開放性も必要な建築では、交流しやすさと授業の聞き取りやすさを両立するため、教室配置、距離、吸音、間仕切りを総合的に計画します。