学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅰ(計画) 問5
問題・正答・学習用解説
問題
建築物の各部に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢2です。室内へ効果的な通風の気流を導くには、一般に風上側の入口を風下側の出口より小さくし、出口を十分に確保する計画を考えます。本肢は入口を出口より大きくすればよいとしており、入口を通る風の速さと出口側の抵抗を適切に捉えていません。
風は、風上側と風下側の圧力差によって室内を通ります。入った空気は外へ出る必要があるため、入口だけを大きくしても出口が小さければ流れを制限します。流量を、開口面積を、平均風速をとするとです。同じ流量なら小さい入口の方が入口の風速は大きくなります。
ただし、入口を極端に小さくすれば換気量まで必ず増えるという意味ではありません。実際の流量は両開口、風向、圧力差、室内の障害物等で変わります。人に届く風速と部屋全体の換気量を区別して計画します。他の肢は、光ダクトで反射損失を減らすこと、木の炭化層と残る断面を利用すること、心材の性質を生かすことについて適当です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:光ダクトの曲がりを減らし断面を大きくする本肢は適当です。光ダクトは、外部から取り入れた光を反射面のある通路で建物の奥へ導く仕組みです。反射するたびに光の一部が吸収されるため、反射回数が多いほど届く光が減ります。同じ長さなら断面を大きくし、不要な曲がりを減らすことで損失を抑えやすくなります。例えば1回の反射で95%残る場合も、10回ではとなります。高い反射率でも経路の工夫が重要です。
選択肢2
選択肢2:風上の入口を風下の出口より大きくする本肢が不適当です。出口を十分に取り、入口を相対的に小さくすると、入口から入る気流の速度を高めやすくなります。入った空気が出る経路も必要なので、大きな入口だけを設けても十分な通風とは限りません。ただし、これは入口を細くするほど換気量が増えるという法則ではありません。窓の位置や高さ、風向、室内の通り道も影響します。気流が人のいる場所を通るかと、室全体の空気が入れ替わるかを分けて確認します。
選択肢3
選択肢3:木材の断面を大きくして火災時に残る断面を確保する本肢は適当です。木は燃えますが、表面が炭化すると、その層が内部への熱移動を抑える働きをします。太い部材では外側が炭化しても、内側に力を負担できる部分を残す考え方が使えます。これは木材を大きくすれば法令上の耐火構造に必ずなるという意味ではありません。必要な時間、炭化速度、接合部、荷重等を検討し、所定の構造方法に従います。燃えない材料という説明に置き換えないことが重要です。
選択肢4
選択肢4:心材の腐朽しにくさや寸法変化の性質を生かして選定する本肢は適当です。心材は幹の中心側の部分で、外側の辺材に比べ耐朽性に関係する成分を含むなどの特徴があります。ただし、どの樹種の心材でも腐らず、収縮や反りが全く起きないわけではありません。乾燥状態、木取り、繊維方向、樹種によって挙動が変わります。必要な強度等級と含水率を確認し、水がたまりにくい納まりも計画します。心材という名称だけで全ての構造性能を判定するものではありません。
周辺知識
光、風、熱は、それぞれ通る経路の条件によって伝わり方が変わります。光は反射や吸収で減り、風は圧力差と通路の抵抗によって流れ、熱は温度差と材料の性質に応じて伝わります。窓を大きくする、部材を太くするという同じ寸法変更でも、対象となる現象を分けて考える必要があります。
通風では、流量と風速の違いが重要です。流量は一定時間に通る空気の体積、風速はその場所の空気の速さです。同じ流量でも細い通路では速くなりますが、通路を細くすると抵抗も変わり、流量自体が減る場合があります。この二つを混同しないことで、入口と出口の計画を単純な大小の暗記から理解へ進められます。
木材も、燃えるか燃えないかの二択だけで性能を捉えません。表面の炭化、内部に残る断面、水分による変形、菌による腐朽など、それぞれの性質を考えます。材料の長所を使うことと、弱点への対策を省くことは別です。火災時の断面確保と、日常の乾燥・防湿の管理を、異なる性能として整理します。