学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅰ(計画) 問4
問題・正答・学習用解説
問題
建築計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢4です。貴重書保存用書庫を半地下に置き、年間を通じて自然換気するだけの計画では、保存に適した温湿度を安定して保ちにくくなります。夏の湿った外気や、温度差による結露、ほこり・虫等の侵入を制御する必要があります。
紙や製本材料は周囲の湿気を吸ったり放出したりし、温湿度の大きな変化や高湿度によって劣化やカビの問題が起きます。特に冷えた半地下の壁等へ暖かく湿った外気を入れると、換気したのに表面の湿度が高くなることがあります。「風を入れれば必ず乾く」という計画は適切ではありません。
半地下や地下を保存書庫にすること自体が、常に不適当なのではありません。防水、浸水対策、温湿度管理等を計画すれば、外部の変化を受けにくい書庫にもできます。誤りは、貴重書の保存条件を考えず年間自然換気を採用した点です。他の肢は、交流を支える学校、診療を続けながら設備更新する病院、車椅子移動を改善する客室という、使う人の活動に合わせた計画です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:障害のある児童とない児童が交流や共同学習できる施設とする本肢は適当です。インクルーシブ教育は、障害の有無に関わらず共に学ぶ機会を考え、一人一人に必要な支援も確保する方向の取組です。単に同じ建物へ入れれば成立するわけではなく、移動しやすい経路、学習活動を共有できる空間、落ち着ける場所などを計画します。個別の支援空間を全てなくすという意味ではありません。交流と必要な配慮を両立できる環境をつくることが重要です。
選択肢2
選択肢2:手術室の上に設備階を設ける本肢は適当です。インタースティシャル・スペースは、配管やダクト等の点検・更新に使う設備用空間です。手術室の天井内設備を更新するたびに室内へ入り天井を壊す方法では、清潔な環境や医療の継続に影響します。独立した設備空間があれば、作業場所と医療行為を分けやすくなります。ただし、設備を止めず更新するには系統の切替えや予備能力等も必要であり、空間だけで全ての医療継続が自動的に保証されるわけではありません。
選択肢3
選択肢3:二室を一室にして移動空間を増やし、水回りの床高さへ客室側を合わせる本肢は適当です。一般客室では浴室等の床が高く、入口に段差がある場合があります。客室側の床を上げて水回りとの段差をなくし、入口側等の必要な高さ調整をスロープで行えば、車椅子で移動しやすくなります。広くするだけでなく、旋回、扉の開閉、ベッドへの移乗等の余地も必要です。スロープの勾配や幅が適切であることを前提に、動線全体を連続させて計画します。
選択肢4
選択肢4:貴重書の保存書庫を年間自然換気とする点が不適当です。自然換気では外気の温度や湿度がそのまま入りやすく、保存に適した環境を安定させにくくなります。半地下は浸水や地盤側からの湿気にも配慮が必要です。閲覧室で人が気持ちよく過ごすための開放性を、保存書庫へそのまま移せません。温湿度を計測して適切に制御し、光、ほこり、虫、水からも資料を守ります。地下配置そのものを禁止する問題ではなく、資料の保存条件に合う環境計画を問うています。
周辺知識
建築計画では、室の名前だけでなく、そこで行う活動と守る対象を具体的に考えます。学校では共同学習と個別支援、病院では医療の継続と衛生、客室では移動と日常動作、保存書庫では資料の長期保存が中心になります。一般的に広い・明るい・開放的なら全用途に適するわけではありません。
建物は完成後にも設備更新や利用方法の変化が起こります。病院の設備階は、工事する人の経路と診療する人の経路を分け、将来の作業をしやすくする計画です。客室改修では、既存の水回りの高さという制約を読み、その制約を残したまま移動しやすくする方法を考えます。
空気の扱いにも目的があります。人が滞在する室では換気による空気質の確保が必要ですが、保存書庫では外気を入れる量や状態を管理し、資料に適した温湿度を保ちます。自然換気を使うか機械設備を使うかは、単に省エネかどうかだけで決めず、必要性能と外部環境を合わせて判断します。