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学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅰ(計画) 問3

問題・正答・学習用解説

問題

図に示す日本の歴史的な建築物に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    選択肢1の図三重塔の各層に裳階を付け、六つの屋根が交互に出入りする独特の構造を有する建築物である。
  2. (2)
    選択肢2の図貫で軸部を水平方向に固め、挿肘木を重ねて軒の荷重を支える大仏様の建築物である。
  3. (3)
    選択肢3の図主体部の柱と裳階の柱を海老虹梁でつなぎ、組物を柱の上のみならず柱と柱の間にも組んで詰組とする禅宗様の建築物である。
  4. (4)
    選択肢4の図長い束柱を貫で固めた足代によって、急な崖の上に張り出した床を支える懸造の建築物である。

(注)図については、著作権法上の関係から、その出所等を明示しています。また、著作権法上の関係から、肢1及び肢2の図は、試験実施時と類似の図を掲載しています。 肢1:「薬師寺東塔及び南門修理工事報告書」(奈良県教育委員会文化財保存課、昭和31年3月発行)第3図東塔正面 第4図東塔断面 肢2:「東大寺南大門史及昭和修理要録」(奈良県庁内 東大寺南大門修理工事事務所、昭和5年4月発行)実測図版 第八 竣成(横断面) 肢3:「法隆寺国宝保存工事報告書第14冊附図国宝法隆寺金堂修理工事報告書」 肢4:「国宝清水寺本堂修理工事報告書」(京都府教育庁文化財保護課)

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢3です。図3は法隆寺金堂で、飛鳥時代の建築です。海老虹梁や詰組を用いる禅宗様という本肢の説明は、法隆寺金堂の様式と一致しません。禅宗様は鎌倉時代に伝わる様式であり、成立した時代からも区別できます。
図3には、二重の主要な屋根と、下層の外側へ付いた裳階が見えます。法隆寺金堂では、雲のような形をした雲斗・雲肘木などが特徴です。一方、禅宗様の詰組は柱上だけでなく柱間にも組物を密に配置する構成で、海老虹梁は高さの違う部分をつなぐ曲がった梁です。「木造寺院だから同じ様式」とまとめないことが大切です。
図1は薬師寺東塔で、三重の塔の各層に裳階が付くため屋根が六つに見えます。図2は東大寺南大門で、長い柱を貫で固め、挿肘木で軒を支える大仏様です。図4は清水寺本堂で、崖の上へ張り出す床を長い柱と貫で支える懸造です。屋根の数、柱のつながり、地面との関係を順に見ると、図と説明を対応させられます。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:薬師寺東塔を、各層に裳階を付けた三重塔とする本肢は適当です。裳階は建物の周囲に付く庇状の部分で、独立した一つの階を増やすものではありません。図では大きな屋根と小さな屋根が交互に現れますが、六重塔とは呼びません。断面図でも、主な三つの層とその外側の裳階を分けて追うと理解できます。屋根の枚数だけで階数を判断せず、内部の構成と外側の庇を区別することが、この建物を見分ける手掛かりです。

選択肢2

選択肢2:東大寺南大門を貫と挿肘木による大仏様とする本肢は適当です。貫は柱を横に貫いてつなぐ材で、長い柱同士を固めます。挿肘木は柱へ差し込んだ水平材で、重ねて軒の張出しを支えます。図2では背の高い柱を横材が結び、外へ張り出す軒の支持が積み重なっています。鎌倉時代の東大寺復興に関わる様式で、大きな空間や重い屋根を支える構成が読み取れます。同時期に伝来した禅宗様と、名称だけでなく組物の仕組みを分けて覚えます。

選択肢3

選択肢3:法隆寺金堂の図に禅宗様の説明を当てた点が不適当です。法隆寺金堂は飛鳥時代の建築で、雲斗・雲肘木等を用いる古代建築の特徴があります。詰組は柱と柱の間にも組物を密に配する禅宗様の特徴で、海老虹梁は高低差のある部分を湾曲した形でつなぐ梁です。本肢はこれらの用語自体が無意味なのではなく、図の建物との組合せが誤っています。まず図が法隆寺金堂であることを屋根と裳階の構成から読み、時代と支持形式を照合します。

選択肢4

選択肢4:清水寺本堂を、急な崖へ張り出す床を支える懸造とする本肢は適当です。懸造は、斜面や崖に対して長い柱などで床を持ち上げて支える構法です。図4の右側では地面が低くなり、その上の床を長い縦材と横につなぐ貫が支えています。足代はこの床下の足場状の支持構造を指します。崖から梁だけを片持ちで長く突き出しているわけではありません。地形、床の高さ、下から支える柱の関係を見ることで、構造の特徴を理解できます。

周辺知識

歴史的木造建築の図は、部材名を知らなくても、屋根を何で支え、柱を何でつなぎ、床を地面からどう持ち上げるかを追うと読み始められます。垂直材が柱、柱同士をつなぐ水平材に貫等があり、軒の荷重を柱へ伝える部分に組物があります。
裳階は庇状の付加部分なので、屋根の数と建物の重数をずらします。薬師寺東塔の三重と六つの屋根、法隆寺金堂の主要な二重屋根と下層の裳階は、この区別を確かめるよい例です。図の線を数えるだけでなく、主屋と周辺の構成を分けて見ることが重要です。
様式の名称には時代と技術の特徴が結び付きます。飛鳥時代の法隆寺、鎌倉時代の大仏様や禅宗様という時代の軸を持つと、別の建物の特徴を入れ替えた選択肢を見抜けます。一方、懸造は地形に対応した構法を表す言葉です。時代様式を示す用語と、構造形式や部材を示す用語を分けると、建築史の説明を整理して読めます。