学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅰ(計画) 問2
問題・正答・学習用解説
問題
海外の都市に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢3です。レッチワースは、エベネザー・ハワードの田園都市構想に基づき、バリー・パーカーとレイモンド・アンウィンが計画したイギリスの都市です。パトリック・ゲデスの「保存的外科手術」に基づく再開発都市という説明は一致しません。
田園都市は、大都市の過密や劣悪な住環境という問題に対し、都市の仕事や便利さと、田園の緑やゆとりを組み合わせる構想です。レッチワースはその実現例として20世紀初頭に開発されました。庭のある住宅を並べるだけでなく、住宅、仕事、公共施設、緑地等を都市として計画する点が大切です。
これに対して保存的外科手術は、既存の都市を全面的に壊すのでなく、地域を調査し、歴史や生活を尊重して必要な部分へ改善を加える考え方です。新しい都市づくりの田園都市と、既存のまちへの選択的な介入を区別します。他の肢は、古代の格子状都市、広場の軸線構成、近代の地区と道路の機能分けを示しており、都市計画が何を秩序立てようとしたかで比較できます。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:ミレトスをヒッポダモスの計画に結び付く格子状都市として説明する本肢は適当です。格子状道路網は、縦横の道を直交させ、街区を規則的に区切る構成です。行政、宗教、商業などの公共的機能と住宅地を配し、都市空間に秩序を与えています。古代の都市が全て自然発生的な曲がり道だけでできていたわけではありません。ただし格子状という形だけから、古代都市と近代計画都市の目的が同じとは判断できません。中心施設と住宅の関係も合わせて読みます。
選択肢2
選択肢2:カンピドリオ広場の台形、階段、三つのパラッツォを対称的に構成する説明は適当です。パラッツォは宮殿や大きな都市建築を指します。建物単体でなく、階段から広場へ入り、正面を見るという体験全体を計画しています。台形の広場を囲む建物と中心軸が、視線の方向や空間のまとまりを強めます。本肢の「バロック的」は、このような動きや軸線を強調する空間構成の性質を示しています。建築の年代を後の盛期バロックそのものへ置き換える意味ではありません。
選択肢3
選択肢3:レッチワースと保存的外科手術を組み合わせた点が不適当です。正しくはハワードの田園都市構想と、パーカー・アンウィンによる計画に結び付けます。田園都市は都市生活の利点と田園の環境を両立するため、新しい都市の構成や運営を考える構想です。ゲデスの保存的外科手術は、既存市街地の価値を調べ、必要箇所を選んで改善する考え方です。人物名だけでなく、新都市の計画か、既存都市の改善かという違いを押さえると取り違えに気付けます。
選択肢4
選択肢4:チャンディガールを区域単位と7段階の道路網で構成する本肢は適当です。ル・コルビュジエの計画では、セクターと呼ぶ地区を組み合わせ、道路を都市間交通、幹線、地区内の交通、住宅へのアクセス、歩行などの役割に分けました。高速に通り抜ける車と住宅の身近な生活動線を、全く同じ道へ集めない考え方です。格子状の見た目に加えて道路の役割を分けた点が特徴です。7Vという当初の体系と、その後に加えられた交通上の整備は区別します。
周辺知識
都市計画は、建物の配置を決めるだけでなく、人の移動、仕事、公共活動、住環境を組織する計画です。同じ格子状の道でも、古代の公共施設を中心とする構成と、近代の自動車交通を機能分けする構成では、問題意識が異なります。形と目的の両方を読むことが必要です。
田園都市と保存的外科手術は、都市の問題へ異なる方法で対応します。前者は都市と田園の長所を組み合わせる都市像を実現しようとし、後者は既にある地域の暮らしや歴史を読み取り、壊し過ぎずに改善します。どちらも単に緑を増やす考え方というまとめ方では、違いが見えなくなります。
広場の計画では、道路の交通処理とは別に、人がどこから入り、何を見るかという空間体験も重要です。カンピドリオのように階段、広場、正面建築を一体に組むと、歩くにつれて中心軸が感じられます。都市史の事例を、道路、地区、中心、視線、既存環境への対応という観点で比較すると、人物と作品の暗記を理解へつなげられます。