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学科Ⅰ(計画)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅰ(計画) 問1

問題・正答・学習用解説

問題

次の用語に関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    SDGsは、誰一人取り残さない、持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の17 の開発目標からなり、その目標の一つに「持続可能な都市」がある。
  2. (2)
    QOLは、近年、生活の質的向上を目指そうとする気運の高まりとともに、建築計画においても、医療福祉等の分野で重要性が増している。
  3. (3)
    ZEBは、資源の有効な利用を確保する観点から、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(建設リサイクル法)によって定められた分別解体及び再資源化等の実施義務の対象となる建築物のことである。
  4. (4)
    重要伝統的建造物群保存地区における「修景事業」は、伝統的建造物以外の建造物や新築される建造物が歴史的風致と調和するよう、外観を整備するために行う事業のことである。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢3です。ZEBはNet Zero Energy Buildingの略で、省エネルギーと再生可能エネルギーの利用によって、建物で使う年間の一次エネルギー収支を正味ゼロにすることを目指す建築物です。建設リサイクル法で分別解体や再資源化が義務付けられる建物の呼び名ではありません。
例えば、断熱や日射遮蔽で冷暖房の必要量を減らし、高効率な照明・空調で消費を抑えたうえで、太陽光発電等を組み合わせます。快適さを犠牲にして電気を使わなくするという考えではありません。また、年間の収支を扱うため、一瞬も外部の電力を使わない建物という意味でもありません。
一方、建設リサイクル法は、解体等で出るコンクリートや木材等の分別・再資源化を扱います。どちらも環境に関係しますが、エネルギーと資材という対象が違います。SDGsは社会全体の目標、QOLは生活の質、修景は歴史的な町並みとの調和を扱う言葉です。「環境によさそうな略語」とまとめず、何を改善・評価する概念かを区別します。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:SDGsを17の目標からなる持続可能な社会に向けた目標とする本肢は適当です。貧困、教育、健康、環境など幅広い分野を含み、都市に関する目標もあります。建築では、住まいの安全、公共施設へのアクセス、省エネルギー等が関連します。単に環境負荷だけを減らすのでなく、利用しにくい人や支援が届きにくい人にも目を向けます。都市の目標があるから他の目標と無関係というわけではなく、一つの建築計画が複数の課題に関わると考えます。

選択肢2

選択肢2:QOLを生活の質として、医療福祉等の建築計画で重視する本肢は適当です。例えば病院では、治療を受けられるだけでなく、落ち着いて休める、家族と会える、自分でできる行動を保てることも生活の質に関係します。廊下の幅や設備数という数量だけでは、それらを十分に評価できません。身体的な状態に加え、心理的な安心や社会とのつながりも考慮します。利用者がどのように暮らすかから空間を考える概念であり、建物の高級さを表す略語ではありません。

選択肢3

選択肢3:ZEBを建設リサイクル法の対象建築物とする点が不適当です。ZEBは建物の年間の一次エネルギー収支に関わる概念です。断熱や自然採光等で必要なエネルギーを減らし、効率のよい設備と再生可能エネルギーを組み合わせます。一次エネルギーは、電気等を生み出す前の資源段階へ換算して扱うエネルギーです。建設リサイクル法の対象かどうかは工事の種類や規模等で判断する別の制度であり、ZEBであることから決まるわけではありません。

選択肢4

選択肢4:伝統的建造物以外や新築建物の外観を歴史的風致へ調和させる修景事業の説明は適当です。歴史的な町並みでは、保存する建物だけが昔の姿でも、隣の建物の屋根や看板が大きく不調和だと地区全体の景観が損なわれます。そこで周辺建物の外観も調和するよう整えます。伝統的建造物そのものを保存の方針に沿って直す「修理」と、主な対象が異なります。町を全て新築の古風な建物へ置き換える事業ではなく、地区の価値を支えるための整備です。

周辺知識

建築を評価する視点には、使うエネルギー、資源循環、生活の質、歴史的な環境などがあります。同じ「よい建築」という目標でも、評価対象が違えば必要な対策も変わります。省エネルギー性能が高いことだけで、使いやすさや歴史との調和まで自動的に満たすわけではありません。
ZEBでは、まず消費を抑えることが重要です。窓の日射を調整し、断熱して、必要な冷暖房負荷を減らしてから設備効率や創エネルギーを考えます。無駄な消費を残したまま発電設備だけを増やすという一段階の話ではありません。達成水準による区分もあり、ZEB Ready等と完全な正味ゼロを区別します。
計画用語は、利用場面を一つずつ思い浮かべると理解できます。病院で自立した生活を支えるならQOL、歴史地区の新しい店の外観を調整するなら修景、建物の運用エネルギーを減らすならZEBです。具体的な行為と結び付けておくと、略称と別制度の説明を組み替えた問題を見抜きやすくなります。