学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問28
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、関係法令上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。低炭素建築物の容積率の特例で、所定の床面積を算入しない上限は、建物の延べ面積の20分の1、すなわち5%です。本肢の10分の1、すなわち10%ではありません。
低炭素建築物は、エネルギー使用等に伴う二酸化炭素の排出を抑える措置を講じ、所定の計画の認定を受けた建物です。性能を高めるために設備等を設けると、通常の建物より追加の床面積が必要になる場合があります。その追加部分によって居室等の計画が過度に不利にならないよう、一定の部分を容積率の計算から除く仕組みがあります。
例えば延べ面積2,000m²なら上限は次のとおりです。
低炭素化のための対象部分が60m²なら60m²、150m²なら上限100m²までとなります。建物の任意の床を5%分差し引ける制度でも、対象部分なら際限なく除ける制度でもありません。対象となる措置で通常より増える所定の面積と、5%の上限の両方を確認します。類似する省エネ性能向上計画の制度等には異なる不算入上限があるので、制度名を省略して数字だけ覚えないことが重要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)誤りです。低炭素建築物の特例の上限は延べ面積の20分の1です。10分の1にすると除ける面積を2倍に見積もってしまいます。例えば2,000m²の建物で100m²が上限のところを200m²まで除く計算になるため、容積率の結論に影響します。対象は認定基準に適合するための措置によって通常の建物より増える所定の床面積です。省エネのための建物という共通点だけで、別制度の数値を使わず、低炭素建築物という制度名と20分の1を対応させます。
選択肢2
(2)適当です。請負型規格住宅は、事業者が定める構造や設備の規格に基づき、注文を受けて建てる住宅です。一戸建てを年間300戸以上供給する本年度の対象事業者には、住宅トップランナー基準への適合に努める義務があります。大量に供給する事業者の標準的な仕様が向上すれば、多くの住宅の省エネ性能を引き上げられるためです。本問は300戸ちょうどなので『以上』の範囲に入ります。一棟ごとの一般の省エネ手続と、事業者単位の基準を区別します。
選択肢3
(3)適当です。大規模・特定の用途等の重点的な対象に入らない既存耐震不適格建築物でも、所有者には耐震診断を行い、必要に応じて改修に努める義務があります。耐震診断は、既存の構造が地震にどの程度耐えられるかを調べることです。既存耐震不適格は、建築後の基準変更等により現在の耐震基準に合わない状態で、直ちに違法建築という意味ではありません。小さな住宅等であっても、倒壊が住人や周辺の避難へ影響するため、安全性を確認して改善を進めます。
選択肢4
(4)適当です。新築住宅の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入防止部分についての瑕疵担保責任は、原則として引渡しから10年間です。契約でその期間を20年まで延長できます。瑕疵は、必要な品質等を欠く不具合を意味し、本肢では構造耐力や雨水浸入に影響するものを対象としています。10年は延長できない上限ではなく、購入者等を守る基本の期間です。20年とする合意は責任を長くする側なので認められますが、全ての設備を必ず20年無償で直す規定ではありません。
周辺知識
建物の質を高める法律は、異なる目的を持っています。低炭素化・省エネはエネルギー使用や二酸化炭素の排出を抑えること、耐震改修は既存建物の地震被害を減らすこと、住宅品質確保は住宅の性能や不具合に対する依頼者・購入者の保護に関係します。どれも良い建物を増やす制度ですが、認定、努力義務、契約責任という方法は同じではありません。
省エネには、断熱で冷暖房の負担を減らすことと、設備自体の効率を高めることなどがあります。認定に伴う容積率の特例は、こうした措置で必要となる空間を整備しやすくする方法です。一方、住宅トップランナー制度は、多数の住宅を供給する事業者の規格や仕様の改善を通して、市場全体の性能向上を促します。個々の建物の認定と事業者単位の取組を分けます。
耐震診断は現状を知る段階、耐震改修は不足を補う段階です。瑕疵担保責任は、契約した新築住宅に一定の不具合がある場合の責任であり、耐震改修の努力義務とは別です。各制度の数字を覚える際には、低炭素の不算入5%、対象事業者の年間戸数、新築住宅の責任期間というように、何を測る数字かを必ず言葉にすると混同を防げます。