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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問27

問題・正答・学習用解説

問題

次の記述のうち、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」上、誤っているものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    床面積の合計が1,500m²の既存の老人ホームにおいて、床面積の合計が500m²の増築を行うときは、建築物移動等円滑化基準に適合させなければならない。
  2. (2)
    建築主等は、共同住宅のエレベーターを修繕しようとするときは、当該エレベーターを建築物移動等円滑化基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
  3. (3)
    床面積の合計が3,000m²のホテルを新築するに当たって、客室の総数が150室の場合には、車椅子使用者用客室を2室以上設けなければならない。
  4. (4)
    地方公共団体が、条例で建築物移動等円滑化基準に必要な事項を付加した場合、当該条例の規定は、建築基準法に規定する建築基準関係規定とみなす。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は1です。増築の場合、建築物移動等円滑化基準への適合義務を判定する規模は、原則として増築する部分の床面積です。本問では500m²を2,000m²の境目と比べるので、国の原則の規模に達していません。既存1,500m²と足して全体2,000m²になることだけを理由に、適合義務があるとした点が誤りです。
建築物移動等円滑化基準は、高齢者や障害者等が建物へ入り、通路や便所などを利用しやすくするための基準です。老人ホームは特別特定建築物に当たり、一定規模以上の新築等に適合義務があります。しかし増築時の規模を測る条文は、増築部分の床面積と定めています。どの床を数えるかが重要です。
例えば既存1,500m²に500m²を増築する場合は、判定に用いる面積は500m²です。一方、増築部分だけで2,000m²あれば原則の規模に達します。義務の対象となった場合に整備すべき範囲は、増築部分から利用する経路等の規定も確認します。なお、地方公共団体の条例で対象規模等を強める場合や、努力義務もあるため、国の原則の適合義務の対象外という結果を、バリアフリーへの配慮が一切不要という意味にはしません。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)誤りです。増築による適合義務の規模は、原則として増築部分の500m²で判定します。既存1,500m²を足した完成後の2,000m²ではありません。老人ホームという対象用途であることは満たしても、今回の増築部分は2,000m²に達しないため、本肢のように義務があるとはいえません。面積の境目だけでなく、『どの部分の面積か』を必ず確認します。対象外でも改善に向けた努力や地域の条例等は別に関係し得るので、建物全体を自由に不便なままにしてよいという結論ではありません。

選択肢2

(2)適当です。共同住宅のエレベーターを修繕するときにも、移動等円滑化のために必要な措置を講ずる努力義務があります。エレベーターは階段を使いにくい人が上下階へ移動する重要な手段で、修繕はボタンや出入口などの使いやすさを改善する機会にもなります。本肢は『必ず基準の全てへ適合させる』という一律の義務ではなく、必要な措置に努めると述べています。新築の大規模施設だけがバリアフリー法の対象で、既存設備には何の関係もないと考えてはいけません。

選択肢3

(3)適当です。本年度のホテルの基準では、客室総数50以上の場合に、その総数の1%以上の車椅子使用者用客室を設けます。本問は150室なので、150×0.01=1.5 室\displaystyle 150\times0.01=1.5\,\text{室}となり、整数の室数として2室以上が必要です。1室では1%を下回ります。車椅子使用者用客室は、単に広いだけでなく、出入口や便所・浴室等を円滑に使える構造を確保するものです。総床面積3,000m²は建物の適合義務の規模、150室は必要客室数の計算と、使う数字の役割を分けます。

選択肢4

(4)適当です。法律の委任に基づき、地方公共団体が条例で移動等円滑化基準に必要な事項を加えた場合、その規定も建築基準関係規定とみなされます。建築確認では建築基準法の本文だけでなく、関係する他法令の基準も扱うためです。地域の利用者の状況等に応じて加えたバリアフリーの基準が、単なる任意のお願いで終わるわけではありません。ただし、条例に書かれていること全てが自動的に同じ扱いになるのではなく、法律に基づいて定めた本肢の規定についての扱いです。

周辺知識

バリアフリーの建物は、入口にスロープがあるだけでは完成しません。道路や駐車場から入口へ入り、受付、各階、客室、便所など必要な場所まで、段差や狭さに阻まれず移動できる経路をつなげる必要があります。エレベーターや出入口の操作のしやすさ、車椅子が方向転換できる空間なども関係します。
法律は、不特定多数の人や主に高齢者等が使う特別特定建築物の一定規模以上の新築等に、基準への適合を義務付けています。それ以外でも、特定建築物等について改善の努力義務があります。適合義務、努力義務、より高い基準へ誘導する認定制度は、役割が異なるため区別して読みます。
増築では、義務対象の規模の判定に使う面積と、実際に整備すべき経路の範囲を分けて考えます。判定面積が増築部分だからといって、必要となった整備が増築部分の内部だけで完結するとは限りません。客室数の割合では端数も重要で、1.5室という必要量を1室に切り捨てると基準を下回ります。利用する人が実際に使える一室を確保するため、必要数以上となる整数へ切り上げます。