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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問24

問題・正答・学習用解説

問題

建築士事務所の業務に関するものとして作成した帳簿及び図書で、建築士法の規定によって保存が義務付けられているものについて、次の記述のうち、同法上、誤っているものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    帳簿及び図書の保存が義務付けられる対象となる建築物は、確認済証の交付を受けることが必要とされる建築物に限られている。
  2. (2)
    保存が義務付けられている図書は、配置図、各階平面図、構造詳細図等の設計図書及び工事監理報告書である。
  3. (3)
    保存が義務付けられている帳簿の記載事項は、業務の概要、報酬の額、業務に従事した建築士の氏名等である。
  4. (4)
    帳簿や図書の保存義務を怠った場合、建築士事務所の開設者に対しては、戒告、1年以内の事務所閉鎖の命令又は事務所登録の取消しの処分が行われる場合がある。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は1です。建築士事務所の帳簿・図書の保存義務は、確認済証が必要な建物だけに限定されません。建築確認の手続が不要な建物や業務であっても、建築士事務所の業務として作成した所定の帳簿・図書は保存の対象になります。
建築確認は、一定の建築計画等が基準に適合するかを事前に審査する制度です。一方、帳簿・図書の保存は、どの依頼を受け、誰がどのように設計や工事監理を行ったかを記録し、後から確かめられるようにする制度です。この二つの対象範囲は同じではありません。確認を必要としない工事でも、依頼者との契約や設計者の業務責任は存在します。
例えば後に不具合の原因を調べるとき、設計図面や工事監理報告書があれば、予定した構造・材料と実際の工事の確認内容を追えます。業務の帳簿があれば、担当者や報酬、業務の概要等も確かめられます。建物は長い期間使われるため、完成直後に書類を捨てると、改修や責任の確認が困難になります。保存義務を『確認申請した建物の控えを残すだけ』と狭く捉えず、建築士事務所が行った業務の記録を残す義務として理解します。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)誤りです。建築士法の保存義務は、建築確認が必要かどうかで一律に限定していません。確認不要の小規模な工事等でも、事務所が設計や工事監理を受託すれば、所定の業務記録や図書を保存します。申請書類を行政へ出す必要がないことと、依頼者に対して行った仕事の記録を残さなくてよいことは別です。『確認済証の交付が必要な建築物に限る』という条件を勝手に付け加えた点が誤りです。法律が保存対象とする帳簿・図書の内容から判断します。

選択肢2

(2)適当です。保存対象の図書には、配置図、各階平面図、構造詳細図等の所定の設計図書と、工事監理報告書があります。配置図は敷地内での建物の位置、平面図は各階の部屋や構成、構造詳細図は部材や接合等の具体的な造り方を示します。工事監理報告書は、工事と図面を照合した結果等を依頼者に報告する記録です。役割の違う図書がそろうことで、建物をどう計画し、どう確認したかを後から追えます。確認済証だけを残せば十分ということではありません。

選択肢3

(3)適当です。帳簿には、業務の概要、報酬額、業務に従事した建築士の氏名等の所定の事項を記載します。図面が建物の内容を示すのに対し、帳簿は誰からどの仕事を受け、誰が担当したかという業務の流れを示します。例えば似た建物の案件が複数あっても、担当者や業務概要が記録されていれば案件を特定できます。単なる社内の売上メモとは異なり、法令に定める事項を備えた記録が必要です。図書の保存と帳簿の保存は、それぞれ別に行います。

選択肢4

(4)適当です。保存義務に違反すると、事務所の開設者に対して戒告、1年以内の期間を定めた事務所閉鎖命令、事務所登録の取消しなどの監督処分が行われる場合があります。戒告は違反を指摘して将来を戒める処分です。書類を紛失した場合に必ず直ちに登録取消しになるという意味ではなく、法令が一定の違反についてこれらの処分を可能にしています。帳簿・図書の保存は任意のサービスではなく、登録事務所として適切に業務を行う義務の一部です。

周辺知識

設計や工事監理の記録は、建物の履歴を支えるものです。建築時の図面がないと、改修時に壁の中や床の下をどう造ったか推測する範囲が増え、適切な補強や設備更新の判断が難しくなることがあります。誰がどの業務を行ったかの記録は、依頼内容や責任を確認するときにも役立ちます。建物より先に業務記録が消えてしまわないよう、法令は保存を義務付けています。
帳簿と図書は内容が違います。帳簿は案件の概要や担当者、報酬等を整理する記録、図書は設計内容や工事監理の結果を具体的に示すものです。本年度の原則では、所定の帳簿・図書をそれぞれ定められた起算点から15年間保存します。帳簿は事業年度末に閉鎖した日の翌日、図書は作成日からという、期間を数え始める基準も確認します。
保存する人の義務、依頼者へ交付する義務、行政へ提出する義務は同じではありません。依頼者へ一部を渡したから事務所の保存が不要になるわけでも、行政へ申請書類を出したから必要な図書が全て保存されたことになるわけでもありません。書類ごとに、作る目的、渡す相手、事務所に残す内容、保存期間を対応させると、実務に結び付く理解になります。