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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問23

問題・正答・学習用解説

問題

建築士事務所に関する次の記述のうち、建築士法上、誤っているものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    建築士事務所の開設者は、設計受託契約又は工事監理受託契約を締結する場合、あらかじめ、建築主に対して、報酬の額や契約の解除に関する事項等の重要事項について、所定の方法により管理建築士や当該事務所に所属する建築士に説明させる必要がある。
  2. (2)
    建築士事務所の開設者は、当該事務所に所属する建築士に変更があった場合、管理建築士については2週間以内に、それ以外の建築士については3月以内に、都道府県知事(都道府県知事が指定事務所登録機関を指定したときは、原則として、当該指定事務所登録機関)に届け出なければならない。
  3. (3)
    建築士事務所を開設しようとする者は、設計等の業務範囲が複数の都道府県にわたる場合、業務を行おうとする全ての地域について都道府県知事(都道府県知事が指定事務所登録機関を指定したときは、原則として、当該指定事務所登録機関)の登録を受ける必要がある。
  4. (4)
    建築士事務所の開設者は、設計等の業務に関し生じた損害を賠償するために必要な金額を担保するための保険契約の締結その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は3です。建築士事務所の登録は、その事務所の所在地を管轄する都道府県で受けます。設計や工事監理の仕事をする全ての都道府県で、事務所登録を受ける必要があるわけではありません。
建築士の免許は、個人が専門資格を持つことを示します。一方、建築士事務所の登録は、報酬を得て他人から設計等の仕事を受ける業務の拠点について、所在地、管理建築士、所属建築士等を明らかにし、適切な業務体制を確保するための制度です。登録の対象は仕事をする地域の範囲そのものではなく、事務所です。
例えば東京都に一つの事務所を開設して登録し、神奈川県や千葉県の建物の設計を受託しても、その仕事があるという理由だけで各県に同じ事務所の登録を重ねる必要はありません。他県に別の事務所を開設して業務を行う場合には、その事務所について所在地の登録を検討します。業務範囲と事務所の所在地を分けることが要点です。なお、仕事をする土地ごとの条例や建築確認の申請先等は別に確認するため、事務所登録が一県でよいことを、地域ごとの法令確認も不要という意味に広げてはいけません。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。設計や工事監理の契約を結ぶ前に、管理建築士またはその事務所に所属する建築士が、報酬、解除条件等の重要事項を所定の書面で説明します。工事監理は工事が設計図書どおりかを確認する業務で、依頼者が何をどこまで頼むのかを理解して契約することが必要です。単に営業担当者が口頭で概算を伝えるだけでは、所定の重要事項説明とはなりません。説明する人の資格と、契約前という時期、書面に記す内容を併せて確認します。

選択肢2

(2)適当です。管理建築士の変更は2週間以内、その他の所属建築士の変更は3月以内に届出をします。管理建築士は事務所の技術的な業務を統括する立場なので、担当者が変わったことを早く公的な登録情報へ反映する必要があります。一般の所属建築士の異動と同じ期限ではありません。届出先は、知事が指定事務所登録機関を指定している場合には原則その機関です。『人の変更だから全部3月』などとまとめず、変更した役割によって期限を分けます。

選択肢3

(3)誤りです。登録を受ける場所は業務先の全地域ではなく、事務所の所在地です。設計対象の建物が複数県にあっても、同じ事務所を各県で重複登録する制度ではありません。例えば一県の事務所から全国の設計を受けることと、各県に支店等の事務所を実際に開設することは異なります。前者は業務範囲の広がり、後者は登録対象となる業務拠点の追加です。問題文の『業務を行おうとする全ての地域』を『事務所の所在地を管轄する都道府県』に直します。

選択肢4

(4)適当です。事務所の開設者には、設計等の業務で生じた損害を賠償できるよう、保険契約その他の措置に努める義務があります。例えば設計上の不具合により依頼者へ損害を与えた場合、責任を負っても支払う資金がなければ被害の回復が難しくなるためです。条文は『努めなければならない』という努力義務であり、特定の保険商品へ必ず加入することだけを求める規定ではありません。保険以外の措置も含め、賠償に備える体制を考えます。

周辺知識

建築士事務所を理解するには、開設者、管理建築士、所属建築士の役割を分けると役立ちます。開設者は事務所を設け運営する者、管理建築士は技術面を統括する建築士、所属建築士は事務所で設計等を担う資格者です。同じ人が複数の役割を持つこともありますが、法律が誰に義務を課しているかは区別して読みます。
登録制度は、依頼者が業務を頼む相手の体制を把握でき、行政が監督できるようにする仕組みです。所在地や管理建築士等の情報が古いままでは制度が機能しないため、変更の届出が必要です。登録は一度受ければ永久に有効というものでもなく、継続するには所定の更新が必要です。
契約前の重要事項説明は、依頼者が専門知識を持たなくても、仕事の範囲、担当者、お金、契約を終える条件を理解して決められるようにするものです。さらに賠償に備える措置は、万一損害を生じたときに責任を果たす準備です。登録、説明、変更届、保険等は書類の事務に見えますが、それぞれ依頼者が安心して専門家へ仕事を頼めるための異なる支えになっています。