学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問19
問題・正答・学習用解説
問題
図のような敷地において、用途上不可分の関係にあるA〜Dの建築物を新築する場合、建築基準法上、誤っているものは、次のうちどれか。ただし、いずれの建築物も防火壁を設けていないものとし、建築物に附属する門又は塀はないものとする。また、図に記載されているものを除き、地域、地区等の制限については考慮しないものとし、危険物の貯蔵等は行わないものとする。A:延べ面積600m²、地上3階建ての事務所棟B:延べ面積2,000m²、地上4階建ての事務所棟C:延べ面積80m²、地上2階建ての事務所棟D:延べ面積120m²、平家建ての自動車車庫棟
選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。A棟は準防火地域内の3階建て、延べ面積600m²なので、準耐火建築物等とする方法が認められます。耐火建築物またはそれと同等以上の延焼防止時間の建物だけに限定した点が誤りです。
防火地域・準防火地域は、市街地で一つの建物の火災が周囲へ次々と広がることを抑えるため、建物の規模等に応じた防火性能を求める地域です。準防火地域では、地階を除く階数が4以上、または延べ面積1,500m²超になると、耐火建築物等の区分が必要になります。A棟は3階で600m²なので、その厳しい区分には入りません。3階・1,500m²以下の区分として、準耐火等の方法を採れます。
本問では一つの敷地に用途上不可分の4棟がありますが、防火上の規定を判定する際に、敷地全体を最も厳しい地域に一括して塗り替えるわけではありません。原則としてそれぞれの建物がどの地域にかかるかを読みます。建物自体が境界をまたぎ、防火壁で分けられていない場合には厳しい側の規定を全体へ適用します。図と各棟の階数・面積を組み合わせて、一棟ずつ判定することが必要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)誤りです。A棟は全体が準防火地域にあり、地上3階・600m²です。準防火地域で耐火等が必要となる4階以上または1,500m²超には該当せず、準耐火建築物等で計画できる範囲に入ります。もちろん耐火建築物とすることは可能ですが、『耐火等でなければならない』と限定することはできません。必要最低限の性能と、より高い性能を採用してよいことは別です。敷地の別の場所に防火地域があることだけでA棟まで防火地域扱いにしないようにします。
選択肢2
(2)適当です。B棟は大部分が無指定の区域にありますが、一部が準防火地域にかかっています。防火壁による所定の区分がないので、原則として建物全体を準防火地域の規定で判定します。地上4階建てで、さらに延べ面積2,000m²は1,500m²を超えるため、耐火建築物等が必要です。面積の大部分が規制のない側にあるという理由で、緩い規定へ変更することはできません。ここでは敷地の過半ではなく、建物が境界をまたぐことが重要です。
選択肢3
(3)適当です。C棟は防火地域にかかるので、原則として全体に防火地域の規定を適用します。ただし地上2階、80m²なので、防火地域の中でも2階以下かつ100m²以下の区分に入り、耐火または準耐火建築物等とする方法が認められます。小規模だから防火性能が不要になるわけではありません。反対に、防火地域というだけで規模に関係なく全て耐火建築物に限定されるわけでもありません。地域を決めた後に、階数と面積の区分を確認します。
選択肢4
(4)適当です。D棟は防火地域と無指定の区域にまたがり、防火壁を設けないので、防火地域の規定を全体に適用します。平家でも延べ面積120m²は100m²を超えるため、耐火建築物等の区分に該当します。階数が少ないという条件だけでは足りず、面積の境目も見ます。防火地域では『3階以上または100m²超』が厳しい区分の条件で、どちらか一方に該当すれば対象です。車庫が別棟であることも、その建物の規模を個別に判定する前提になります。
周辺知識
防火地域と準防火地域は、都市の火災を広がりにくくするための指定です。一般に防火地域の方が厳しく、小さい建物から耐火・準耐火等の性能が求められます。準防火地域では、階数や面積に応じて段階的に必要な性能が変わります。境目を覚えるときは、地域名と『何階以上・何m²超』を組み合わせます。
耐火建築物等という表現には、定められた構造の建物のほか、それと同等以上の延焼防止時間を持つ性能による方法が含まれます。延焼防止時間は、通常の火災で周囲への延焼を防げる時間を意味します。単に材料が燃えないかだけでなく、主要構造部や開口部の防火設備等を組み合わせた建物全体の性能を考える仕組みです。
複数地域にまたがる場合の扱いは、規定ごとに異なります。容積率は敷地の面積割合で合わせる方法がありますが、防火地域の規定では、建物自体がまたぐと原則として厳しい側を全体へ適用します。同じ敷地にある別棟まで、常に最も厳しい地域の扱いに統一するわけではありません。本問ではA〜Dの一棟ずつについて、図の境界、棟の階数、延べ面積、防火壁の有無を順に確認すると誤りを防げます。