学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問14
問題・正答・学習用解説
問題
事務所(避難階は1階)の5階にある居室(床面積50m²で、「避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準」に適合しない居室)の設計に際して、以下の条件に該当する開口部を設置することとした場合、窓その他の開口部を有しない居室の規定に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。【条件】・採光に有効な部分の面積の合計:2.0m²・換気に有効な部分の面積の合計:3.0m²・天井又は天井から下方80cm以内で開放できる部分の面積の合計:0.5m²・避難上有効な構造の開口部ではない。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は2です。換気に有効な開口面積は3.0m²あり、床面積50m²の20分の1である2.5m²以上を確保しています。したがって、この居室について、換気開口が不足することを理由に所定の換気設備を必ず設けるとはいえません。
『無窓居室』は、窓が一枚もない部屋だけを指す言葉ではありません。採光、換気、排煙、避難など、規定の目的ごとに有効な開口部の条件があり、同じ窓でも有効と数える部分や必要面積が違います。本問では採光に有効な面積2.0m²は2.5m²に足りませんが、換気に有効な面積3.0m²は2.5m²を満たします。この二つを一緒に無窓と判断することはできません。
さらに排煙に用いる高い位置の開放部分は0.5m²で、床面積の50分の1に当たる1.0m²未満です。光を取り入れる窓、普段の空気を入れ替える窓、上にたまった煙を外へ出す窓は、それぞれ目的が違うためです。正答の判断では、換気の列だけに3.0m²を代入します。なお、ホルムアルデヒド対策など別の規定による換気設備の要否は、ここで問う換気開口不足の判定とは別に確認します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。採光に有効な面積2.0m²は、50m²の20分の1である2.5m²未満で、避難上有効な構造の開口部もありません。そのため本問の無窓居室の規定により、その居室を区画する主要構造部を耐火構造または不燃材料で造る必要があります。窓からの避難等に頼りにくい室で、周囲の構造が早く火災に負けないようにする考え方です。『主要構造部』と書かれていても建物全体を一律に対象とする記述ではなく、ここではその居室を区画する部分を確認します。
選択肢2
(2)誤りです。換気用の必要開口面積は原則として床面積の20分の1なので、です。設問の3.0m²はこれ以上あり、通常の窓による換気面積を満たしています。採光が不足していることや、高い位置の排煙開口が不足することを理由に、換気開口まで不足とみなしてはいけません。正しくは、少なくとも本問の開口面積から所定の換気設備が必須とは結論できません。別目的の常時換気などに必要な設備まで不要だと拡大しないようにします。
選択肢3
(3)適当です。直通階段までの歩行距離で用いる無窓の判定は、採光有効面積が床面積の20分の1未満であるかという条件です。本問は2.0m²で2.5m²に足りず、所定の除外にも適合しないので、距離は原則30m以下です。内装が難燃材料では、準不燃材料による10m加算は使えません。ここを排煙開口0.5m²の不足で説明するのは、判定の根拠が違います。同じ30mという結論でも、どの面積を用いたかまで正確に区別します。
選択肢4
(4)適当です。排煙に有効な高い位置の開口は0.5m²で、に足りません。そのため、排煙設備を設けるか、火災時に煙等が避難を妨げる高さまで下がらないものとして大臣が定める除外の条件に適合させる必要があります。普段の換気に有効な3.0m²全体を、そのまま排煙用へ数えることはできません。煙は熱くて上にたまるため、本年度の本問では天井または天井から80cm以内の開放部分という位置の条件も重要になります。
周辺知識
窓には複数の役割があります。光を入れる採光、空気を入れ替える換気、火災時の煙を出す排煙、人が逃げる・救助されるための開口は、必要な位置・大きさ・開き方が異なります。ガラスがあるだけのはめごろし窓は光を入れられても、開かないので換気の開放面積にはなりません。また低い位置の窓は普段の換気に使えても、上部にたまる煙の排出には同じように数えられません。
本問は床面積50m²なので、20分の1は2.5m²、50分の1は1.0m²です。採光は2.0対2.5で不足、換気は3.0対2.5で足りる、排煙は0.5対1.0で不足、と三行に分けると混同しません。同じ20分の1という割合でも、採光有効面積と換気有効面積は違う数値です。
無窓かどうかによって、主要構造部、歩行距離、排煙等の必要条件が変わりますが、それぞれの条文が参照している無窓の定義を読むことが必要です。『この部屋は無窓』という一つのラベルで全規定を判断せず、『採光の判定では不足、換気の判定では充足』と目的を付けて表すと、条件を正しく設計へ結び付けられます。