学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問13
問題・正答・学習用解説
問題
構造強度に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は2です。公会堂の固定席の客席には、柱が支える床の数に応じて積載荷重を減らす特例を使えません。実況によらず法令の表を用いて柱を計算する場合の値は2,600で、本肢の1,950まで減らすことはできません。
積載荷重は、建物そのものの重さとは別に、床に載る人や家具などが及ぼす荷重です。柱は上にある複数の床をまとめて支えます。通常の用途では、全ての階が同時に最大限の荷重で満たされるとは限らないため、柱や基礎の圧縮力の計算について、支える床の数に応じた低減が認められます。6床を支える場合の係数は0.75なので、単純に表を適用した場合の計算は次のとおりです。
しかし、劇場や公会堂などの客席・集会室は、この低減の対象外です。催し物等で多数の人が同時に集まる用途では、荷重が一斉に大きくなることを十分に考える必要があります。したがって計算式の掛け算自体は合っていても、使ってはいけない低減係数を使っているため誤りです。『6床なら0.75』と数だけを覚えず、適用できる室の種類も一緒に確認することが重要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。れんが等を積んだ組積造の塀には、原則として長さ4m以下ごとに、厚さの1.5倍以上突出した控壁が必要です。控壁は塀の面から直角方向に突き出し、横から押された塀を支える壁です。例えば塀厚20cmなら、突出は30cm以上となります。高さ1.2mであっても本問の原則の対象です。鉄筋を入れた補強コンクリートブロック造には別の規定があるため、その高さ等による例外を、補強のない組積造の塀へ持ち込まないようにします。
選択肢2
(2)誤りです。公会堂の固定席の客席は、床数による積載荷重の低減を使えません。表の柱・大ばり・基礎用の値2,600を、6床用の0.75で減らした1,950とするのは不適切です。固定席とは椅子などが一定の位置に固定されている客席ですが、それによって観客の荷重がなくなるわけではありません。座席が同時に使われる状況を考慮する用途として、低減の例外から除かれています。床の構造用や地震力用の別欄の値とも混同しないようにします。
選択肢3
(3)適当です。許容応力度等計算では、部材に生じる力だけでなく、地震による上下の階のずれも確認します。層間変形角は、そのずれを階の高さで割った割合です。例えば階高3mでずれ15mmなら200分の1です。部材が破壊しなくても、変形が大きいと外壁や間仕切り等を傷めるため、所定の限度内とする必要があります。本肢は地上部分の各階についてこの確認を行うと述べており、計算で安全性を確かめる際の適切な手順です。
選択肢4
(4)適当です。限界耐力計算では、建物の揺れ方や変形を考慮して安全を確認しますが、地下部分の部材の地震時の検討を省くことはできません。地下部分の構造耐力上主要な部分には、所定の地震力によって生じる応力度が短期許容応力度を超えないことを確認します。短期許容応力度は、地震等が一時的に作用するときに許容する部材断面の力の程度です。地上部分の計算方法が高度であることと、地下部分の安全確認が不要であることは別です。
周辺知識
構造計算では、何の荷重を、どの部材の、どの状態の確認に使うかを明確にします。固定荷重は建物自身の重さ、積載荷重は人や物の重さ、地震力や風圧力は横方向等に作用する力です。同じ室でも、床そのものを計算する場合、柱を計算する場合、地震力を求める場合では、法令の表の数値が異なります。想定する荷重の集まり方や作用の仕方が違うためです。
一本の柱が多くの床を支えるとき、各階の最大荷重が同時に生じる可能性を考慮して低減する仕組みがあります。しかし人が集まる客席等はその対象から除かれます。低減係数は単に設計を小さくするための便利な数字ではなく、適用できる状況が限定された規定です。表を読むときは、数値の欄と但し書きの両方を確認します。
応力度は部材断面が受ける力の程度、変形角は建物がどれほど傾くように変形するかを表します。力に耐えても変形で壁が壊れる場合があるので、両方の確認が必要です。また、塀の控壁のように、計算の前提になる具体的な構造の規定もあります。数式の結果だけでなく、材料・形・支え方・荷重の想定が適切かを一体で考えるのが構造法規の基本です。