学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問12
問題・正答・学習用解説
問題
図のような木造、地上2階建ての住宅(屋根を金属板で葺いたもの)の1階部分について、桁行方向に設けなければならない構造耐力上必要な軸組の最小限の長さとして、建築基準法上、正しいものは、次のうちどれか。ただし、小屋裏等に物置等は設けず、区域の地盤及び地方の風の状況に応じた「地震力」及び「風圧力」に対する軸組の割増はないものとし、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算は行わないものとする。なお、1階部分の軸組の構造の判定に用いる1階の床面積については、60m²とする。また、図は略図とする。
選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は2で、必要な軸組の長さは1,740cmです。地震に対する必要量と風に対する必要量を別々に計算し、大きい方を採用します。
本年度の仕様規定で、金属板葺きの軽い屋根を持つ2階建て住宅の1階には、床面積1m²につき29cmの軸組を用います。指定された1階の床面積60m²を掛けると、地震用は次のとおりです。
風用は、検討方向から見た建物の面積を使います。桁行方向へ押す風に対しては図の西側立面を見ます。見付面積45m²から、1階床面より1.35m以下の部分を除きます。床面は地盤より0.45m高いので、除く高さは次のとおりです。
幅6mを掛けた面積は10.8m²です。したがって有効な見付面積は次のとおりです。
必要量は次のとおりです。
1,710cmでは風の条件は満たしても、地震用の1,740cmに30cm足りません。両方を満たす最小値は、大きい方の1,740cmです。二つを足したり平均したりする計算ではありません。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)1,710cmは、風圧力に対する計算結果です。西側立面の45m²から、幅6m・高さ1.8mの下側部分を除いて34.2m²とし、50を掛けると得られます。しかし地震に対しては1,740cm必要なので、これだけの軸組では30cm不足します。地震と風は別々に確認する条件で、一方に合格しても他方が不足すれば採用できません。計算で得た二つの必要量を並べ、必ず大きい方を選ぶ最後の手順が必要です。
選択肢2
(2)1,740cmが正しい最小値です。金属板葺きの2階建ての1階では、地震用の係数29に床面積60m²を掛け、1,740cmとなります。風用の1,710cmより大きいため、こちらを採用すれば両方の必要量を満たします。問題文が小屋裏の物置や地域による割増がないと指定しているので、その追加量は考えません。数値は軸組の有効な長さの必要量であり、部屋を仕切る全ての壁を無条件に同じ耐力として足してよいわけではありません。
選択肢3
(3)1,980cmは、本問の必要最小値ではありません。60m²に33を掛けるとこの値になりますが、33は本問の金属板葺きの軽い屋根に用いる1階の係数ではありません。屋根が重いと地震で生じる力も大きくなるため、出題時点の壁量の表では屋根の種類によって係数が異なります。本問では29を選ぶ必要があります。大きな値なら安全側に見えても、問われているのは最低限必要な長さなので、条件に合う係数で算出した値を選びます。
選択肢4
(4)2,250cmは、立面に示された見付面積45m²をそのまま50に掛けた値です。風用の規定では、その階の床面から1.35m以下の部分を除くため、地盤から1.8mまでの長方形10.8m²を差し引かなければなりません。図中の45m²という面積が、既に法令の除外後の値だと決めつけた点が誤りです。地盤面と1階床面が0.45mずれていることも読み取り、基準となる高さを正しく図へ当てはめます。
周辺知識
木造の軸組は、柱とはりなどでできた骨組みです。そのままでは横から押されると四角形が平行四辺形のように変形しやすいため、筋かいや面材等で横方向の力に抵抗する部分を作ります。筋かいは骨組みに斜めに入れる材、面材は壁面に張って変形を抑える板などです。必要な長さを確保することに加え、偏らない配置や接合部の安全も重要です。
地震力は主に建物の重さに関係し、風圧力は風を受ける見付面積に関係します。そのため本問では、地震に対して床面積と屋根区分を使い、風に対して検討方向の立面を使います。桁行方向は図の横長の方向、張り間方向はそれと直交する方向です。片方の方向を満たせばもう片方も満たすとは限らないので、実際の設計では各階・各方向を検討します。
軸組には構造に応じた倍率があり、実際の壁長に倍率を掛けて有効な量として数える考え方があります。単に壁が長いほど十分と判断せず、どの仕様の耐力を持つかを確認します。また、令和7年以降は木造建築物の壁量基準が改正されています。本問の29などの値は、令和3年度の指定条件で使う値として理解し、現在の設計に無条件で流用しないようにします。