学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問11
問題・正答・学習用解説
問題
保有水平耐力計算によって安全性が確かめられた建築物に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。ただし、高さが4mを超える建築物とする。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は3です。本問は保有水平耐力計算で安全性を確かめた建物なので、主筋の重ね継手の長さを原則として径の25倍以上とする仕様規定は適用除外になります。25という数字を別の数字へ直す問題ではなく、この計算方法を採用した建物に、その仕様規定が適用されるかを問うています。
主筋は、柱やはりなどの中で主要な力を受け持つ鉄筋です。長い一本の鉄筋を使えない場合には継手でつなぎ、重ね継手では一定の長さを重ねて周囲のコンクリートを通して力を伝えます。通常の仕様規定では、引張力が最も小さい位置に設ける継手は径の25倍以上などと定めます。
一方、保有水平耐力計算は、大きな地震に対し建物が最終的にどれだけの水平力に耐えられるかなどを調べる方法です。この方法で安全を確認する場合には、施行令が定める一部の仕様規定を外せます。鉄筋の継手・定着の規定はその範囲に入ります。ただし、何の確認もなく継手を短くしてよいという意味ではなく、構造計算を含む必要な安全性を確保することが前提です。高力ボルトの孔径やかぶり厚さなど、残る規定も個別に区別します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。高力ボルトを通す孔は、原則としてボルトの径より2mmを超えて大きくできません。例えば径20mmのボルトなら、原則の孔径上限は22mmです。高力ボルト接合は強く締め付けることで鋼材間に力を伝える接合方法で、孔をむやみに大きくすると接合部の条件が変わります。保有水平耐力計算を行った場合でも、この孔径の規定は残ります。高度な構造計算をしたら全ての寸法仕様が不要になる、という判断はできません。
選択肢2
(2)適当です。直接土に接する柱では、鉄筋のかぶり厚さは原則4cm以上です。かぶりは、最も外側の鉄筋の表面からコンクリート表面までの厚さをいい、鉄筋を水分や腐食、火熱などから保護します。土に接しない一般の柱の3cmという数値を、そのまま地中の柱へ使ってはいけません。かぶり厚さは保有水平耐力計算をしても必要な規定です。完成時の耐力だけでなく、長年使う間に鉄筋がさびて性能を失わないことも必要だからです。
選択肢3
(3)誤りです。通常の継手の仕様には、引張力が最も小さい位置で主筋径の25倍以上という規定がありますが、保有水平耐力計算を行う本問にはその仕様規定を適用しません。例えば径20mmなら25倍は500mmになりますが、数字の計算が合っていても、本問で必ずその仕様によると断定することはできません。条文の継手の数値を見る前に、採用する計算方法による適用除外を確認します。継手が力を安全に伝えること自体は当然必要です。
選択肢4
(4)適当です。鉄骨鉄筋コンクリート造は、鉄骨の周囲に鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造です。その柱の主筋を4本以上とする規定は、本問の保有水平耐力計算を行った場合も適用されます。内部に鉄骨があるから周囲の鉄筋を任意に省けるわけではありません。主筋は部材の力の伝達や一体性にも関係し、法令が残す基本的な構成を満たす必要があります。第3肢の継手の規定が外れることを、鉄筋に関する全ての規定が外れることへ拡大しないようにします。
周辺知識
構造の安全を確認する方法には、部材の寸法や配筋等を定めた仕様に従う部分と、荷重に対する応力・変形・耐力を計算する部分があります。仕様規定は、一定の条件を守ることで安全を確保しやすくする共通のルールです。詳しい構造計算を行えば、その計算で確認できる事項について、一部の仕様を置き換えられる場合があります。
ただし、計算方法ごとに外れる規定は異なります。保有水平耐力計算と限界耐力計算を、一括して『高度な計算』と呼んで同じ適用除外にしてはいけません。また、材料の品質、鉄筋を腐食から守るかぶり、施工時にコンクリートを適切に硬化させる養生など、計算だけで代わりにならない基本条件もあります。
重ね継手を考えるときは、鉄筋同士を単に接触させれば力が伝わるのではなく、鉄筋と周囲のコンクリートの付着を通して、必要な力を受け渡すことを想像します。引っ張られる力が大きい場所ほど、継手に厳しい条件が必要です。本問の解き方は『数値が正しいか』に加え、『この計算方法を使う建物にも、その数値の規定が適用されるか』を二段階で確かめることです。