学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問10
問題・正答・学習用解説
問題
建築設備に関する次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は4です。エレベーターの常時の応力度は、昇降する部分に通常の動きによる加速度の影響を考慮して計算します。固定荷重と積載荷重をそのまま全部足すだけでは不十分です。施行令の組合せは です。
は昇降しない部分の重さによって生じる力、 は昇降する部分の重さによって生じる力、 はかごに載る人や物によって生じる力です。係数 は、普段の上昇・下降で生じる加速度を考慮する数値です。本肢の単純な合計では、動く部分にこの係数を掛ける手順がありません。
エレベーターが上向きに動き始めると、足が床へ押し付けられ、体が重くなったように感じます。これはかごや人を加速させるため、静止して支えるだけの場合とは違う力が必要になるためです。かごを支える部品にも、その影響が加わります。『常時』とは通常の使用状態で、動かず停止した状態だけではありません。安全装置が作動して急停止する場合には別の係数を用いるため、通常の昇降時と非常時の両方をそれぞれ確認します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。機械室の床面から天井またははり下までの高さは、かごの定格速度に応じて定められます。毎分150mは『60mを超え150m以下』の区分なので、2.2m以上です。定格速度は、定められた積載荷重を載せて上昇するときの毎分の最高速度です。150mちょうどを次の『150mを超える』区分へ入れないことが要点です。機械室は装置を置くだけでなく点検等を行う空間なので、機器の能力等に対応した必要な空間を確保します。
選択肢2
(2)適当です。住宅の居室の必要有効換気量は、原則として室の容積に0.5を掛けます。例えば床20m²、天井高2.4mなら容積は48m³で、必要量は24です。ホルムアルデヒドは建材等から発散することがあり、濃度が高いと目や喉などに影響するため、継続的な換気で濃くならないようにします。0.5は窓を半分開ける意味でも、床面積の半分でもありません。1時間当たりに室容積の半分に相当する空気を入れ替える換気量を表します。
選択肢3
(3)適当です。ホテルの客室で、耐火構造の床・壁や所定の防火設備により100m²以内に区画されている部分は、排煙設備の設置を省ける対象です。本肢はその区画条件を満たすので、高い位置の開放できる窓面積が床面積の50分の1未満でも、直ちに排煙設備が必要とはなりません。煙を外へ出す窓の面積による判定だけでなく、法令が定める用途と区画の除外を確認します。単に客室が100m²以下であればよいのではなく、区切る床・壁・戸の性能も条件です。
選択肢4
(4)誤りです。正しい組合せは で、動く部分と人・物の影響には通常昇降時の加速度を考慮します。例えば係数が1より大きい条件なら、単純に とした場合は支持部分へかかる力を小さく見積もることになります。係数の具体値は法令の定めに従うもので、自由に決めるものではありません。静止して載っている重さに加え、動き始めや停止に伴う力を考えることが、かごや支持部分の安全につながります。
周辺知識
設備の基準は、その装置が普段どのように働き、故障や火災のときに何が起きるかを想像すると理解しやすくなります。換気は室内に発生する物質を薄め、排煙は火災時の煙を排出し、エレベーターの構造基準は昇降中や停止時の力に耐えることを確認します。どれも設備ですが、同じ計算や性能で判定するものではありません。
換気量の単位は、1時間に流れる空気の体積です。床面積m²と天井高さmを掛けると室容積m³になり、そこへ1時間当たりの換気回数を掛けます。単位を追うと、床面積だけに0.5を掛ける誤りを発見できます。一方、エレベーターの応力度は、部材の断面にどれほどの力がかかるかという量で、材料の許容できる範囲と比べます。
建物の構造でも、人や物の重さを積載荷重と呼びますが、エレベーターではその重さ自体が動きます。動く物を加速・減速させるには力が必要なので、静的な重さだけでは足りません。『常時』でも動きを含め、『安全装置の作動時』にはさらに別の条件で検討するという区別が、装置を日常的にも非常時にも安全に使うための基本です。