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学科Ⅲ(法規)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問9

問題・正答・学習用解説

問題

防火・避難に関する次の記述のうち、建築基準法に適合しないものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    屋内に設ける避難階段に通ずる出入口に、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後10分間当該加熱面以外の面に火炎を出さない性能を有する防火戸で所定の構造であるものを設けた。
  2. (2)
    延べ面積1,500m²、耐火建築物及び準耐火建築物以外の、木造、地上2階建ての美術館について、防火上有効な構造の防火壁に設ける開口部の幅及び高さを、それぞれ2.5mとし、かつ、これに特定防火設備で所定の構造であるものを設けた。
  3. (3)
    延べ面積1,500m²の体育館に、非常用の照明装置を設けなかった。
  4. (4)
    主要構造部を準耐火構造とした建築物の地上部分の層間変形角を、\(\frac{1}{150}\)以内となるようにした。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は1です。屋内避難階段の出入口に必要な防火設備は、通常の火災による加熱に対して20分間、反対側へ火炎を出さない性能を持つものです。本肢の10分間では必要な遮炎性能が不足しています。
屋内避難階段は、建物の内部にある階段を耐火構造の壁などで囲み、火災時の逃げ道として保護するものです。しかし人が出入りする場所には壁を設けられないため、そこを防火戸で閉じられるようにします。壁が火に強くても、戸が早い段階で炎を通せば階段室へ火災が及び、上階から逃げる人の経路が失われるおそれがあります。
遮炎性能とは、火で加熱される側から反対側へ炎を出さない性能です。温度上昇を抑える遮熱性能や、煙を通しにくくする性能とは区別されます。本肢は『所定の構造』と書いてありますが、その言葉があっても明示された10分という不足を埋めることはできません。20分の遮炎性能と、閉鎖・避難方向への開放など所定の構造を併せて満たす必要があります。戸があるかだけでなく、どの性能区分の戸をどこに設けるかを確認することが要点です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)不適合です。屋内避難階段に通じる出入口は、20分間の遮炎性能を持つ防火設備とする必要があります。10分の性能ではその半分であり、必要な区分の設備に該当しません。防火戸は見た目が頑丈でも、どの時間の加熱に耐える仕様かで法令上の扱いが変わります。設問では『所定の構造』という表現に安心してしまわず、その前に書かれた性能の時間を確認します。正しくは、加熱開始後20分間、加熱面以外の面へ火炎を出さない所定の防火設備です。

選択肢2

(2)適合します。防火壁に出入口等の開口部を設ける場合、その幅と高さをそれぞれ2.5m以下とし、特定防火設備を設けます。本肢はいずれも2.5mちょうどなので寸法条件を満たします。防火壁は大きな建物を火災が広がりにくい範囲に区切る壁ですが、開口部を大きくし過ぎると区切りとしての性能を確保しにくくなります。寸法を制限し、一般の防火設備より高い遮炎性能を持つ特定防火設備で補う仕組みです。幅だけでなく高さも別に比較します。

選択肢3

(3)適合します。体育館は、非常用の照明装置を設ける対象から除外される用途に含まれます。そのため延べ面積1,500m²という数値だけで、店舗などと同じ面積条件を当てはめて設置が必要と判断してはいけません。非常用照明は停電時にも避難に必要な明るさを保つ設備ですが、法令は用途や空間の性質に応じた対象・除外を定めています。なお、本肢の適合は非常用照明の規定についてのもので、消防法の誘導灯等の別制度まで一括して不要となる意味ではありません。

選択肢4

(4)適合します。主要構造部を準耐火構造とする建物の地上部分には、原則として層間変形角を150分の1以内とする基準があります。層間変形角は、上下の階の横方向のずれを階の高さで割った割合です。例えば階高3mなら、ずれ2cmで150分の1になります。地震で骨組みが大きく変形すると、防火上重要な壁等に亀裂や隙間が生じるおそれがあるため、変形も抑えます。火災の規定に地震時の変形が関係するのは、地震の後にも防火性能を保つためです。

周辺知識

建物の火災対策には、火を広げにくくする区画、逃げる通路を守る避難階段、停電時に経路を見えるようにする照明など、異なる働きがあります。一つの設備だけで全てを解決するのではなく、出火室から外へ逃げるまでの複数の対策がつながって、人の安全を守ります。防火壁の開口部の寸法や階段の戸の性能は、そのつながりを弱めないための条件です。
防火設備と特定防火設備は区別します。本年度の基本的な遮炎性能では、前者は20分、後者は1時間が基準です。ただし、設備にはそれぞれ使う場所に応じた閉鎖方法等の条件もあり、時間だけ満たせばどこへでも使えるわけではありません。人が通る戸なら避難のしやすさも必要です。
防火性能は、地震や普段の管理とも関係します。地震で区画に大きな隙間ができれば、後に火や煙が通る可能性があります。また、適法な防火戸でも荷物が邪魔をして閉まらなければ機能しません。設計上の性能、地震後も性能を保てる変形の制限、使用中の適切な管理がそれぞれ重要です。基準値を、実際にどの弱点を防ぐ数値なのかと結び付けて学ぶと理解が深まります。