学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問7
問題・正答・学習用解説
問題
主要構造部を耐火構造とした耐火建築物に関する次の記述のうち、建築基準法に適合しないものはどれか。ただし、自動式のスプリンクラー設備等は設けられていないものとし、居室については、内装の制限を受ける「窓その他の開口部を有しない居室」には該当しないものとする。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は2です。特別避難階段の階段室と付室の壁・天井には、仕上げだけでなく下地にも不燃材料が必要です。本肢では仕上げを不燃材料にしていますが、下地を準不燃材料としているため適合しません。階避難安全検証法で各階の避難安全を確かめていても、この階段部分の内装規定は省けません。
仕上げは室内から見える表面の材料、下地はその裏で仕上げを支える材料です。表面だけが火に強くても、その裏の材料が火災の拡大に関われば、避難経路の安全に影響します。特別避難階段は、屋内と階段室の間に付室やバルコニーなどを設け、煙が階段へ入りにくくした、保護の程度が高い避難経路です。高層階の人は地上に出るまで長い階段移動が必要になるため、この経路の安全が重要です。
階避難安全検証は、その階の人が直通階段へ避難し終えるまで、煙等が避難を妨げないことを確かめる制度です。これによって外れる規定は法令が定めた範囲に限られます。20階建ての各階で検証したから、階段室や付室の材料まで自由になるわけではありません。正しくは、下地も不燃材料とする必要があります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。地階の劇場の客席は、地上へ出るために階段等を通る必要があり、火災時には煙によって出口へ近づけなくなる危険があります。そのため客席と地上へ通ずる主な廊下・階段等の壁・天井の仕上げには、準不燃材料を用いる基準があります。本肢はその材料で仕上げているので適合します。主要構造部が耐火構造であっても、室内の仕上げまで自動的に安全になるわけではありません。建物の骨組みと、室内で火の広がりを抑える材料を別に確認します。
選択肢2
(2)不適合です。特別避難階段の階段室・付室の下地は不燃材料とする必要があり、準不燃材料では不足します。不燃と準不燃は似た名称でも、標準的な火熱に対して求める時間などが異なる法定の性能区分です。階避難安全検証による適用除外には、階段部分の内装規定を自由に省ける効果はありません。各階から階段に入れれば終わりではなく、その後に階段を下りる人の安全も保つ必要があります。表面と下地、検証する範囲と残る規定をそれぞれ確かめます。
選択肢3
(3)適当です。図書館は特殊建築物ですが、劇場や店舗と同じ用途別の内装基準をそのまま使うわけではありません。本問の3階建て・延べ面積600m²は、3階以上かつ500m²超という規模による内装制限に該当し、図書室の壁と天井は難燃材料による仕上げで適合します。『3階の特殊建築物だから天井は必ず準不燃』と別の用途の規定を流用しないことが要点です。用途、階数、面積、室の種類を確認し、どの内装制限の区分で判定するかを選びます。
選択肢4
(4)適当です。避難階の1階と、その直上階である2階だけをつなぐ吹抜けには、壁・天井の仕上げと下地を不燃材料とするなどの条件で、竪穴区画を省ける扱いがあります。竪穴区画は、吹抜けや階段のような上下に通じる空間を通して、火や煙が上階へ広がることを抑える区画です。本肢は1階と2階だけをつなぎ、材料条件も満たします。同じ2層の吹抜けでも、2階と3階の間や、1階から3階まで連続する場合に、この例外をそのまま使うことはできません。
周辺知識
内装制限は、室内の壁や天井が火災を急激に広げたり、大量の煙を出して避難を妨げたりしないようにする規定です。難燃・準不燃・不燃の順に、標準的な火災加熱に対する要求時間が長くなり、それぞれ5分、10分、20分の区分が基本です。ただし、その時間だけ実際の建物全体が安全と保証される意味ではなく、材料を判定するための性能区分です。
同じ建物でも、居室と廊下、階段では必要な材料が異なります。居室で火災が起きても、人は廊下や階段を通って逃げなければならないため、避難経路にはより確実に火や煙の発生を抑える条件が求められます。特別避難階段は最後まで使える経路として、見える仕上げだけでなく裏の下地も確認します。
性能を計算で確かめる制度と、材料や寸法を定めた仕様の規定は、部分的に置き換えられる場合があります。しかし置き換えられる範囲は制度ごとに決まっています。階避難安全検証は一つの階から階段等へ至る避難、全館避難安全検証は建物全体から地上への避難を扱います。検証をしたという事実だけで、残る階段の基準まで全て解除されると判断しないことが大切です。