学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問5
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は1です。階段に代わる傾斜路にも、幅が3mを超える場合の中間手すりの規定が適用されます。本問は幅4m、高さ1.5mなので、中間に手すりを設けなければなりません。勾配が緩やかな15分の1であっても、傾斜路であることだけで省けません。
中間手すりは、幅の広い階段や傾斜路の中央近くを歩く人にも、体を支える場所を確保するためのものです。両端にしか手すりがない幅4mの通路では、中央の人がふらついても手が届きにくくなります。高低差1.5mを上り下りする本問では、高さ1m以下の部分に認められる除外も使えません。
通常の階段には、蹴上げ15cm以下かつ踏面30cm以上なら中間手すりを省ける例外があります。蹴上げは一段の高さ、踏面は足を載せる奥行きです。しかし、傾斜路へ階段の規定を当てはめる際には、蹴上げ・踏面に関する部分を除くと定められています。段のない傾斜路を『蹴上げ0cmだから条件を満たす』などと扱うことはできません。勾配の適合と手すりの要否は、別々に確認する必要があります。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)誤りです。幅4mは3mを超え、高さ1.5mは1mを超えるため、中間手すりが必要です。勾配15分の1は、水平に15進むと1上がる緩やかな傾斜ですが、その緩さだけで手すりを不要にはできません。高さ1.5mをこの勾配で上るには、水平距離も22.5m必要になり、長い移動になります。幅の中央を歩く人にも体を支える場所を設けることが必要です。階段の蹴上げと踏面に関する例外を、段のない傾斜路に流用した点が判断の落とし穴です。
選択肢2
(2)適当です。有料老人ホームの入所者用娯楽室は、入所者が継続して使う居室で、採光に有効な開口部の面積を、原則として床面積の10分の1以上とします。床50m²なら、必要面積はです。採光は昼間の自然光を取り入れ、健康的な室内環境を確保するための規定です。ただし、窓のガラス面積がそのまま有効面積になるとは限りません。隣地との距離などを踏まえた有効性を考慮して、法令上の採光面積が5m²以上あるか確認します。
選択肢3
(3)適当です。界壁は隣り合う住戸を分ける壁で、火の広がりと生活音の伝わりを抑える役割があります。通常は天井の上まで達する必要がありますが、天井側で所定の防火性能と遮音性能を確保する構成なら、天井裏まで壁を伸ばさないことができます。本肢は強化天井に加え、音を低減する技術的基準と定められた構造方法も満たしています。火に強い天井であるだけでは音の条件まで満たすとは限らないため、二つの性能を併せて確認することが重要です。
選択肢4
(4)適当です。木造の床の下に湿気がこもると、木材の腐朽や床下環境の悪化につながります。そのため最下階の居室の床が木造の場合、原則として外壁の床下部分に、壁長5m以下ごとに面積300cm²以上の換気孔を設けます。300cm²は、例えばに相当する面積です。穴は湿気を逃がす役割がありますが、同時にねずみの出入口にもなり得るので、侵入を防ぐ設備が必要です。換気の確保と動物の侵入防止を一組で規定しています。
周辺知識
居室や通路に関する基準は、普段の使いやすさと健康を支えています。採光は自然光、換気は空気や湿気の入替え、界壁の遮音は隣戸からの生活音の低減、手すりは歩行中の体の支えに関係します。建物が地震に耐えるだけでなく、毎日安全に過ごせることも建築基準法の目的です。
傾斜路は階段の代わりになりますが、全ての点で階段と同じ構造ではありません。法律で『準用する』とある場合は、別の対象の規定を必要な調整をして当てはめる意味です。本問では手すりなどの規定を当てはめますが、蹴上げや踏面に関する部分を除きます。準用すると書かれているだけで、元の条文の例外まで無条件に持ち込まないことが大切です。
また、一つの部材が複数の性能を担う場合があります。住戸間の界壁は防火と遮音、床下換気孔は換気と動物侵入の防止を考えます。一方を改善すると他方が自動的に満たされるとは限りません。例えば天井裏に音が回り込む経路があれば、見える壁だけ厚くしても十分でない場合があります。部材そのものに加え、その周囲を通る火・音・空気の経路まで想像すると、規定の理由が理解しやすくなります。