学科Ⅲ(法規)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅲ(法規) 問4
問題・正答・学習用解説
問題
次の記述のうち、建築基準法上、誤っているものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は2です。本問の地上4階建ての病院は、工事中の安全上・防火上・避難上の措置に関する計画の届出を要する規模に該当しません。仮使用の認定と、この安全計画の届出を、必ず一緒に必要になる手続として扱った点が誤りです。
病院等で安全計画の届出の対象となるのは、例えば5階以上の階の用途部分の床面積合計が1,500m²を超えるものなどです。別の対象区分でも、5階以上や地階の用途部分の面積を用います。本問は地上4階建てで、該当する5階以上の階や地階がありません。建物全体の延べ面積2,000m²を、そのまま対象階の面積に置き換えることはできません。
仮使用の認定は、検査済証交付前などの使用が制限される場合に、安全上支障がない範囲で使用を認める仕組みです。一方、安全計画の届出は、特に危険の大きい対象建物の工事について、工事中の防火・避難対策を事前に行政へ知らせる制度です。いずれも工事中の安全に関係しますが、目的と対象が完全に同一ではありません。利用者のいる病院で工事をするという共通の事情だけで、二つの手続を一括して必要と判断しないようにします。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。元の敷地を一部も減らさずに敷地を広げる変更で、変更後も法令への適合が明らかなら、軽微な変更として改めて確認を受けなくてよい扱いです。敷地が広がれば、同じ建物の建ぺい率や容積率は一般に小さくなります。ただし、境界の移動により元の敷地の一部を取り除く変更は本肢の対象外です。単に面積が差引きで増えるだけでは足りず、元の敷地を保つ条件と、変更後の適合が明らかという条件の両方が必要です。
選択肢2
(2)誤りです。地上4階建ての病院には、安全計画届の対象となる5階以上の用途部分等がありません。延べ面積2,000m²という総面積だけで、対象階の床面積条件を満たしたと考えてはいけません。工事中に使うための仮使用認定が問題となる場合でも、安全計画届はそれ自身の用途・階・面積条件で別に判定します。正しくは、本問の規模について『安全計画の届出も必ず必要』とはいえません。届出対象外でも、工事中の安全対策を実施する責任は残ります。
選択肢3
(3)適当です。令和3年度の規定では、患者の収容施設がある診療所でも、用途部分200m²ちょうどの鉄骨造平家は、本問の検査済証交付前の使用制限の対象規模に入りません。特殊建築物の面積条件は200m²を超える場合であり、非木造の規模条件も平家・200m²ちょうどでは該当しません。そのため交付前に使用することができます。これは必要な確認や完了検査等を全て省ける意味ではなく、ここで問われている使用制限の対象かどうかの結論です。
選択肢4
(4)適当です。共同住宅から寄宿舎への本問の用途変更について確認を受けた場合、工事が終わったら建築主事へ工事完了届を提出します。用途変更の完了時の手続は、新築等の通常の完了検査申請をそのまま準用する扱いとは異なります。共同住宅は住戸ごとに独立した生活を営む用途、寄宿舎は共同の生活設備等を伴う用途で、両者はこの確認の類似用途相互間の例外に入りません。設問が『確認を受けた用途変更の工事終了後』を問うていることを捉えます。
周辺知識
建物の手続は、計画時、工事中、完成時、使用中に分けると整理しやすくなります。計画時には確認、計画を変える際には変更確認または軽微な変更の判断、工事中には対象に応じた中間検査や安全計画、完成時には完了検査等、使用段階には定期調査等が関係します。一つの手続を終えたことが、他の段階の義務を全て満たしたことにはなりません。
また『確認済証』と『検査済証』は違います。前者は設計段階の計画の適合、後者は工事が完了した建物の検査に関する書類です。確認を受けた図面が正しくても、そのとおり造られているかは完成した建物で確認する必要があります。使用制限は、その検査前に人が使い始めることによる危険を防ぐための制度です。
工事中の建物では、通路が工事用の壁で狭まる、避難設備を一時的に使えない、といった事情が生じます。仮使用の認定や安全計画はその危険に対応しますが、対象建物の条件は別々です。『用途部分の面積』が建物全体なのか、5階以上なのか、地階を含むのかを図面に色を塗るつもりで特定すると、総面積を誤って代入するミスを防げます。