学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問18
問題・正答・学習用解説
問題
消防用設備等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。消防用水は、消防隊が本格的な消火活動に用いるために確保する水です。屋内消火栓やスプリンクラーなどの初期消火設備の専用水源を指すものではありません。本肢は、誰がどの段階で使う水かを取り違えています。
屋内消火栓は建物の利用者や関係者などが初期段階に用い、スプリンクラーは火災を自動で抑える設備です。これらの設備用水源は、それぞれ必要な水量や継続時間に応じて計画します。一方、消防用水は消防車などが吸水して消火するための水で、消防隊が接近し、確実に利用できる配置も重要になります。
同じ建物に水槽があっても、目的と必要条件は同じではありません。初期消火の設備へ使う水を準備したから、消防隊用の水の条件も自動的に満たすとはいえません。また、火災が大きくなった場合には初期消火設備だけで対応できるとは限らず、消防隊が使う水の確保が別に必要となる場合があります。消火設備の名前を覚える際には、検知、自動抑制、利用者の初期消火、消防隊の活動という段階に分けると役割が整理できます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。所定の用途や規模などの条件を満たす施設では、消火薬剤を自動で放射するパッケージ型自動消火設備をスプリンクラーの代替として設けられます。本問の延べ面積の特別養護老人ホームへの計画は適当です。自力避難が難しい人のいる施設では、早い段階で火を抑えることが重要です。ただし、建物面積だけで全条件が満たされるとは限らず、対象施設や区画、機器性能などの適用条件を確認します。
選択肢2
(2)適当です。泡は燃焼面を覆って空気中の酸素が届くのを抑え、含まれる水分によって冷却する働きも持ちます。そのため、車両や油類の火災が想定される地下駐車場の消火に用いられます。普通の水をかける場合と異なり、燃料表面を覆う層をつくることが特徴です。ただし、対象の燃料や空間に合う泡薬剤と放射方式が必要で、泡ならどの火災にも同じように有効という意味ではありません。
選択肢3
(3)適当です。ドレンチャーは水の幕をつくり、外部からの炎や放射熱による延焼を防ぐ設備です。重要文化財の神社のように、建物自体を失うと代えがきかない施設を周囲の火災から守る用途があります。室内の火災源へ直接散水する通常のスプリンクラーとは目的が異なります。水の幕で建物の外側の経路を守る設備として理解すると、名称だけでなく設置位置と役割が結び付きます。
選択肢4
(4)不適当です。消防用水は消防隊の消火活動のための水で、初期消火設備の専用水源を意味しません。屋内消火栓やスプリンクラーの水源とは、使用する人、時点、必要な量や取り出し方法が異なります。「火を消す水」という共通点だけで一つにまとめないようにします。消防隊が到着した後、車両から接近して吸水できるかなど、設備の性能以外の利用条件も必要になります。
周辺知識
消火の基本は、燃える物、酸素、熱、燃焼反応の連鎖へ働きかけることです。水は主に冷却、泡は覆って酸素を遮る作用と冷却、粉末などは反応の抑制も利用します。火の種類や場所によって適する方法が違います。設備名と、どの仕組みで火を抑えるかを結び付けると理解できます。
防災計画では、火災を早く見つけ、初期に抑え、安全な避難を確保し、消防隊の活動へつなぐ複数の段階を用意します。パッケージ型自動消火設備やスプリンクラーは早期抑制、ドレンチャーは周囲からの延焼防止、消防用水は消防隊の活動支援というように役割が異なります。
福祉施設では避難に時間がかかる人がいるため、早期の自動消火と区画による安全確保が特に重要です。文化財では建物の保存という目的も加わり、外からの延焼を抑える対策が有効になります。どの設備を設けるかは、建物の用途、火災の想定、避難者の条件、消防活動を一緒に考えて決めます。一つの設備があれば他の備えが全て不要になるわけではありません。