学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問16
問題・正答・学習用解説
問題
発電設備等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。消防用設備の非常電源として、所定の構造や性能を満たす燃料電池設備を用いることはできます。「気体燃料を使うから非常電源にできない」という一律の否定が誤りです。燃料電池は、水素と酸素などの電気化学反応を利用して発電する設備で、必要な条件に対応した非常電源用の構成が認められています。
非常電源では、燃料の名称だけでなく、通常の電源が失われたときに、必要な電力を必要な時間だけ確実に供給できることが重要です。燃料供給の継続性、停電後の切替え、機器の安全性などを確認します。通常は電気と熱を利用し、非常時に消防設備へ電力を切り替える構成もあります。ただし、一般家庭の燃料電池を何の確認もなく消防用設備へ使えるという意味ではありません。
一方、非常電源専用受電設備は商用電源から受けるため、供給元そのものが停電すると電力を作れません。発電機、蓄電池、燃料電池などは、それぞれの蓄え方や作り方が違います。「専用」という名称と「外部の停電時にも自立できる」という能力を分けて判断することが、この問題全体の要点です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。非常電源専用受電設備は消防設備向けに受電経路などを保護するものですが、商用電源そのものを失えば供給できません。そのため、大規模な特定防火対象物では消防設備の非常電源として用いることができないという記述は適当です。専用回路にしたことは、建物内の他の負荷の影響を避ける対策であり、外部停電に備えて電気を作る・蓄える対策とは異なります。
選択肢2
(2)適当です。蓄電池で起動までを補わない自家発電設備は、常用電源の停電から電圧確立と投入までを40秒以内とする必要があります。エンジンを始動しただけではなく、機器へ使える電圧となり接続されるまでが対象です。モーターが回り始める時刻と、消防設備へ電力を届けられる時刻は違います。蓄電池を併用する場合との条件差を読み取り、40秒が何の時間かを具体的に理解します。
選択肢3
(3)適当です。デュアルフューエルは二種類の燃料を使える仕組みです。通常はガスを使い、災害でガス供給が止まった場合には、備蓄した重油などの液体燃料へ切り替えて運転を続けられます。単に燃料タンクを大きくする方法とは異なり、供給経路の違う燃料を使えることが継続性に役立ちます。ただし、適用できる燃料や切替え方法は機器仕様で決まるため、任意の燃料を混ぜて使える意味ではありません。
選択肢4
(4)不適当です。必要な基準を満たす燃料電池設備は消防用設備の非常電源に使用できます。気体燃料を用いることだけを理由に禁止されるわけではありません。非常時の供給量、運転継続、切替時間などを確保することが条件です。燃料電池という方式の一般論と、非常電源として認められた設備の具体的な性能を区別しましょう。使える種類に含まれることと、全製品が無条件に適合することは別です。
周辺知識
非常電源の計画では、「いつ使えるか」「どれだけ出せるか」「何時間続くか」を分けて考えます。発電機は始動と電圧確立に時間を要しますが、燃料があれば長時間運転できます。蓄電池は速やかに電力を出せますが、蓄えた量に限りがあります。必要に応じて両者を組み合わせます。
容量kWは同時に供給できる電力、蓄電量kWhや燃料備蓄量は継続時間に関わります。例えば10kWの負荷を理想的に3時間動かすには30kWhが必要ですが、実際には損失や利用できる容量、始動時の電流なども確認します。数字の単位をそろえ、機器の定格だけで時間を判断しないことが大切です。
また、電源本体が動いても、配線が火災で切れたり、冷却や換気が止まったりすれば供給は続きません。燃料電池、発電機、受電設備を選ぶ際は、機器の方式と、それを支える燃料、給排気、配線、切替制御まで一つのシステムとして確認します。消防設備が必要なときに本当に動けるかを経路ごとに考えることが基礎です。