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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問10

問題・正答・学習用解説

問題

音響に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    音の大きさの感覚量は、音圧レベルが一定の場合、低音域で小さく、10 kHz付近で最大となる。
  2. (2)
    防音塀は、音の回折による減衰を利用して、騒音を低減化するものであり、一般に、低音域よりも高音域において有効である。
  3. (3)
    無限大の面音源から放射された音は、距離減衰することなく伝搬する。
  4. (4)
    室内の平均吸音率が大きい場合、セイビン(Sabine)の残響式により求めた残響時間は、アイリング(Eyring)の残響式により求めたものに比べると、長くなる。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

正解は(1)です。人の耳は、同じ音圧レベルの音でも周波数によって大きさを違って感じます。一般に数kHz、概ね2〜4kHz付近で感度が高く、10kHz付近で最大になるという本肢は不適当です。低い音では同じ音圧でも小さく感じやすいという前半は適当ですが、最大となる音域の説明が違います。
音圧レベルは空気の圧力変動を基にした物理量で、音の大きさの感覚そのものではありません。例えば、同じdBの低い音と数kHzの音を比べても、同じ大きさに聞こえるとは限りません。この関係を、同じ大きさに感じる音の組合せとして表したものが等ラウドネス曲線です。
耳の感度は周波数だけでなく音圧レベルや個人、年齢などにも影響されるため、2〜4kHzの一点だけが全員に共通の絶対的最大という意味ではありません。本問では10kHzを最も敏感な領域とする一般論の誤りを判断します。防音塀や吸音計算も周波数によって効果が変わるため、物理的な音の性質と人の聞こえ方の両方を考える必要があります。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)不適当です。一般に耳の感度が高いのは数kHz、概ね2〜4kHz付近で、10kHz付近が最大ではありません。同じ音圧レベルでも、低音と中高音で大きさの感じ方は異なります。音圧レベルを等しくすることと、主観的に同じ音量へそろえることは別です。高い音ほど際限なく敏感になるわけでもなく、非常に高い音では感度が下がり、個人差や加齢の影響も大きくなります。

選択肢2

(2)適当です。防音塀は音源と受音点の間を遮り、音が上端や側端を回り込んで届く経路を利用して減衰させます。低音は波長が長く回り込みやすいため、高音のほうが一般に効果を得やすくなります。ただし、塀に隙間があったり、塀自体を音が透過したりすれば性能が落ちます。高さだけでなく、音源・受音点との位置関係や連続性を確認する必要があります。

選択肢3

(3)適当です。無限大の面音源という理想条件では、音が進んでもエネルギーを広げる面積が増えることによる距離減衰がありません。点音源のように球面へ広がるモデルとは異なります。ただし、現実の面音源は有限の大きさで、十分遠くでは別の広がり方となります。また空気による吸収などまでゼロという意味ではありません。「無限大」「距離減衰」という対象と条件を限定して理解します。

選択肢4

(4)適当です。セイビン式の分母は平均吸音率αˉ\displaystyle \bar\alphaに比例しますが、アイリング式は−ln⁡(1−αˉ)\displaystyle -\ln(1-\bar\alpha)を使います。0から1の範囲では後者が前者より大きいので、同じ容積・表面積ならアイリング式の時間が短くなります。例えば吸音率0.5なら、0.5に対して−ln⁡0.5≒0.693\displaystyle -\ln0.5\fallingdotseq0.693です。吸音率が小さいと両者は近く、吸音率が大きいほど差が目立ちます。

周辺知識

セイビンとアイリングの残響式は、どちらも室内の音が反射で減っていく様子を近似します。セイビン式とアイリング式は、それぞれ次のとおりです。
TS=0.161VSαˉTE=0.161V−Sln⁡(1−αˉ)\begin{aligned}T_S&=\frac{0.161V}{S\bar\alpha}\\[4pt]T_E&=\frac{0.161V}{-S\ln(1-\bar\alpha)}\end{aligned}
Vは室容積、Sは室内表面積、平均吸音率は反射で戻らない割合です。自然対数lnは、反射のたびに一定の割合で音が残る減衰を扱うために現れます。
吸音率が小さいと−ln⁡(1−αˉ)\displaystyle -\ln(1-\bar\alpha)はαˉ\displaystyle \bar\alphaに近く、二つの式は似た値になります。吸音率が大きいと近似の差が広がり、セイビン式が長めになります。ただし、どちらも拡散した音場などの前提を持ち、極端な形状や吸音の偏りを全て正確に再現する式ではありません。
音源の距離減衰もモデルを確認します。点音源は距離2倍で約6dB、長い線音源は約3dB、理想的な無限面音源は広がりによる減衰がありません。現実の音源は距離によって近似のしかたが変わるため、式だけを暗記せず、音がどんな形へ広がる条件かを確認しましょう。