学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問9
問題・正答・学習用解説
問題
吸音・遮音に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。中空二重壁は、二枚の壁の間に空気層を設けた構造です。音に対しては、二枚の板が重り、間の空気がばねのように働き、特定の周波数で一緒に振動して音を通しやすくなる共振透過が起こります。空気層を厚くするとばねの作用が柔らかくなり、共振周波数は低くなります。本肢の「高くなる」は逆です。
同じ面積の空気層を同じ距離だけ押し縮める場合、薄い層では元の体積に対する縮みの割合が大きく、圧力が大きく変化します。厚い層では体積に対する変化が小さく、戻そうとするばねの力も弱くなります。柔らかいばねにつないだ重りがゆっくり振動するのと同じ方向です。
板の面密度を固定した単純なモデルでは、共振周波数は空気層厚さの平方根に反比例する関係があり、厚さを4倍にすると周波数は概ね半分へ下がります。ただし実際の壁では、下地を通じた振動や隙間、内部の吸音材なども影響します。空気層を厚くすれば全ての周波数の遮音が同じ割合で改善する、と一般化しないことも重要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。単層壁のコインシデンスは、板の曲げ振動と空気中の音の波が合いやすくなって透過が増える現象です。同じ材料なら、板を薄くするほど性能低下が起きる限界周波数は高い側へ移ります。ただし薄い板は面密度が小さくなるので、基本的な質量による遮音は不利になります。落込みの位置が高くなることと、全体の遮音性能が高くなることは同じではありません。
選択肢2
(2)適当です。建築音響での吸音率は、入射エネルギーのうち元の側へ反射して戻らない割合です。そのため壁内部で熱などへ変わる分だけでなく、反対側へ透過する分も含みます。で、rは反射エネルギーの割合です。開いた窓は室内へ音をほぼ戻さないので吸音率を大きく扱えますが、音を外へ通すため遮音にはなりません。吸音と遮音の違いを理解する重要な定義です。
選択肢3
(3)適当です。子どもの飛び跳ねのような重い衝撃は、床全体を大きく振動させ、低い音として伝わりやすくなります。薄いカーペットなどは小さな硬い物の衝突を和らげるのに有効でも、この重量衝撃を大幅に抑えることは難しい場合があります。床の剛性や厚さ、支持条件なども重要です。表面が柔らかくなったことだけで、建物全体へ伝わる振動まで十分減ったとは判断できません。
選択肢4
(4)不適当です。空気層を厚くすると、ばねとしての空気の剛性が小さくなり、共振周波数は低い側へ移ります。高くなるという記述は逆です。二枚の壁の質量が同じなら、空気層の柔らかさが振動の速さを変えると捉えます。これは一枚の板のコインシデンスとは別の現象です。同じ「遮音性能が落ちる周波数」の話でも、板一枚の曲げ波か、二枚の板と空気ばねかを区別します。
周辺知識
吸音・遮音の問題では、音が入射した後にどこへ行くかを描くと整理できます。一部は反射して戻り、一部は内部で失われ、一部は向こう側へ透過します。室内の響きを減らすには戻る音を小さくし、隣室への伝達を防ぐには透過する音を小さくします。両者は似ていても目的が違います。
二重壁の空気層は、熱に対しては断熱、音に対してはばねのように働く場合があります。共振周波数を低い側へ移し、空気層に吸音材を入れるなどの方法で改善を図りますが、二枚の壁が硬い下地でつながっていれば振動がそこを通ることもあります。壁の断面構成だけでなく接続部も重要です。
床衝撃音は、軽い硬い衝撃と重い柔らかい衝撃で対策の効き方が異なります。床仕上げの柔らかさで改善しやすい音と、床全体の振動を抑える必要がある音を分けます。材料の名称から一律に効果を決めず、音源、周波数、伝わる経路、吸収・反射・透過のどれを変えたいかを順に確認しましょう。