学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問11
問題・正答・学習用解説
問題
空気調和設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。水蓄熱槽は、水を冷やしたり温めたりして熱を蓄え、必要な時間に利用する設備です。利用温度差は、槽から出る水と戻る水の温度の差です。空調負荷が変わるのに水量を一定にすると、負荷が小さいときは水が受け取る熱も少なくなり、往きと戻りの温度差が小さくなります。そのため、水量一定の制御は利用温度差を確保する目的に合いません。
水が運ぶ熱は、質量流量を、比熱を、温度差をとしてです。負荷が半分になっても水量を変えなければ、温度差は半分になります。温度差を一定に保ちたい場合には、負荷に合わせて水量も減らす制御が必要です。
例えば冷たい水を大量に流し続け、少ししか温まらずに槽へ戻すと、蓄えた温度差を十分使わずに水を循環させることになります。必要な熱を所定の温度差で運べる水量へ調節すれば、槽を有効利用し、ポンプの搬送動力も抑えやすくなります。「一定にしたい量は温度差」であり、「一定にする操作量が水量」とは限らない点を理解します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。水量を一定にすると、負荷が小さい時間には戻り水との温度差が小さくなり、蓄熱槽の利用温度差を確保できません。温度差を保つには、水が運ぶ熱量の式に従って、負荷の低下に合わせて流量も減らします。たくさんの水を流せば蓄熱を有効に使えるとは限りません。必要な熱量に対して流しすぎると、温度差を小さくして水を循環させるため、槽の性能とポンプ動力の両方に不利となり得ます。
選択肢2
(2)適当です。冷却塔のファンは、捨てる熱が少ないときにも最大回転で動かす必要はありません。必要に応じて停止したり回転数を下げたりすれば、放熱能力を調節しながら電力を減らせます。密閉式でも、管内の循環水から外側の空気へ熱を渡すために送風が必要です。水温を適切に維持できる範囲で制御することが前提で、電力を減らすために冷却を不足させてよいわけではありません。
選択肢3
(3)適当です。冷却水は冷凍機が集めた熱を受け取り、冷却塔などへ運びます。中間期に入口温度を夏より低くできれば、冷凍機が熱を捨てる際の温度・圧力の条件が緩くなり、圧縮に必要な仕事を減らせます。これにより成績係数COPの改善が期待できます。ただし、冷却水温を際限なく下げればよいわけではなく、機器の運転範囲と冷却塔やポンプの電力も含めて最適化します。
選択肢4
(4)適当です。吸収冷温水機は、熱を駆動源として冷水などを作ることができます。ガスエンジンの発電などで生じる排熱を投入できる型式なら、捨てていた熱を空調へ利用できます。電気を作った後の熱だから冷房に使えない、ということはありません。ただし、温かい熱をそのまま冷たい水へ変える単純な交換ではなく、吸収式の冷凍サイクルを動かすエネルギーとして使う仕組みです。
周辺知識
熱を運ぶ計算では、「水量」と「温度差」を掛け合わせます。同じ熱量なら、大量の水を小さい温度差で流す方法と、少ない水を大きい温度差で流す方法があります。蓄熱槽では利用できる温度の範囲と水量が、蓄えられる熱量を決めます。水が大量にあることだけで、有効な蓄熱容量が決まるわけではありません。
水の比熱は約です。の水の温度が5℃変われば、運ぶ熱は約21kWです。同じ流量で負荷が10.5kWなら温度差は2.5℃になります。この例から、負荷が変わるときに温度差を保つには流量調節が必要だと分かります。
冷凍機の効率は、冷やす側と熱を捨てる側の温度条件に関係します。冷却水を適切に低温化する方法、冷却塔ファンを必要分だけ回す方法、エンジンの排熱を吸収式へ使う方法は、それぞれ異なる場所の無駄を減らします。熱源、槽、熱交換器、ポンプ、冷却塔を一連の熱の流れとして確認すると、局所的な改善が全体で有効かを判断できます。