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学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和3年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問4

問題・正答・学習用解説

問題

建築物の伝熱に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    冬期において、二重サッシの間の結露を防止するためには、屋外側よりも室内側のサッシの気密性能を高くするとよい。
  2. (2)
    室内の壁表面における自然対流熱伝達率は、壁表面と室内空気との温度差が大きくなるほど高くなる。
  3. (3)
    繊維系断熱材は、含水率が増加すると水の熱伝導抵抗が加わるので、断熱性能が向上する。
  4. (4)
    複層ガラスにおいて、Low-Eガラスを屋外側に用いると、室内側に用いる場合に比べて遮熱性が高まる。

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正解は(3)です。繊維系断熱材は、細かな繊維の間に空気を多く含み、その空気が大きく動きにくい構造によって熱を通しにくくしています。含水率が上がると、空気が占めていた部分へ水が入り、熱が伝わりやすくなります。したがって、断熱性能は向上ではなく低下する方向です。
水の熱伝導率は常温付近でおおよそ0.6 W/(m⋅K)\displaystyle 0.6\,\mathrm{W/(m\cdot K)}、空気はおおよそ0.026 W/(m⋅K)\displaystyle 0.026\,\mathrm{W/(m\cdot K)}で、水のほうが熱をよく伝えます。ぬれることで「水の抵抗が追加される」と考える本肢は、既存の空気が水に置き換わることを見落としています。乾いた衣服よりぬれた衣服で体が冷えやすくなることも、関連する身近な例です。ただし衣服では蒸発による冷却も加わるので、全てが熱伝導だけの効果ではありません。
断熱材を厚くすることと、同じ材料へ水が入ることは別です。厚さが増えれば熱の通る道が長くなりますが、ぬれて材料全体の熱伝導率が大きくなれば抵抗は小さくなります。断熱性能を維持するには、結露や雨水侵入を防ぐことも重要です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。冬は室内の暖かく湿った空気が二重サッシの間へ入ると、冷たい屋外側ガラスで結露しやすくなります。室内側サッシの気密性を高めれば、その水蒸気の流入を抑えられます。外側だけを非常に気密にして室内側から湿気が入ると、間に湿気を閉じ込める場合があります。どちら側から水蒸気が入り、どこで冷やされるかを考えると、室内側を重視する理由が分かります。

選択肢2

(2)適当です。壁面と室内空気の温度差が大きいと、壁近くの空気の密度差が大きくなり、自然対流の流れが強まります。暖かい壁では空気が上昇し、冷たい壁では下降するため、熱を運ぶ量も増えます。自然対流熱伝達率は、この温度差などに応じて変わります。温度差を掛ける前の係数だから常に一定、とは限りません。材料内部の熱伝導率とは、影響する条件も仕組みも異なります。

選択肢3

(3)不適当です。繊維の間の空気が水に置き換わると熱が通りやすくなり、断熱性能は低下します。水が入ることを、新しい断熱層が一枚追加されるように考えないことが重要です。繊維系断熱材は、乾燥した状態で適切な厚さと形を保って使うことが前提です。結露でぬれると性能低下につながるため、熱だけでなく水蒸気の移動や防湿、外からの雨水の侵入も合わせて対策します。

選択肢4

(4)適当です。複層ガラスの屋外側にLow-Eガラスを配置すると、日射で吸収した熱が室内へ入りにくく、屋外へ放出されやすい構成となり、一般に遮熱性が高まります。Low-Eは低放射を意味し、特殊な膜で放射による熱移動を抑えます。膜は通常中空層側の面に設けます。配置だけで全製品の性能が決まるわけではなく膜の特性も影響しますが、本問は屋外側・室内側という一般的な構成の比較です。

周辺知識

材料層の熱抵抗はR=dλ\displaystyle R=\frac{d}{\lambda}です。厚さd\displaystyle dが大きいほど抵抗が増し、熱伝導率λ\displaystyle \lambdaが大きいほど抵抗は減ります。例えば同じ厚さの断熱材がぬれて熱伝導率を増せば、熱の通りにくさは失われます。「何かが加われば抵抗が増える」とは限らず、どの物質が何と置き換わったかを確認します。
壁や窓では、熱の流れと水蒸気の流れを別々に考え、それらが結露でつながります。室内の湿気が冷たい場所へ達すると水になり、その水が断熱材の性能を下げる場合があります。防湿と気密は水蒸気を含む空気や水蒸気の移動を抑え、断熱は温度分布を整えます。似た目的でも役割は同一ではありません。
Low-E複層ガラスでも、外から来る日射を抑える遮熱と、内外温度差による熱移動を抑える断熱を区別します。冬に日射を取り入れたいか、夏に熱を遮りたいかによって選ぶ性能が変わります。材料名だけで判断せず、配置、乾湿状態、熱の向き、湿気の入口を確認する習慣を付けましょう。