学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問3
問題・正答・学習用解説
問題
換気に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
正解は(3)です。自然給気口は、機械で排気した分の外気を室内へ取り入れる入口です。冬の外気は冷たいので、床面から0.5m以下の低い位置に設けると、足元や座っている人へ冷気が直接届きやすくなります。温熱環境への影響を避けるという目的に対して、配置が不適当です。
排気を水まわりへ集める住宅の換気では、居室の自然給気口を一般に床上1.6m以上の高い位置に設け、必要に応じて吹出し方向なども工夫します。冷気が人へ直接当たる前に室内の空気と混ざる距離を確保し、コールドドラフトによる不快さを抑えるためです。ただし、高い位置にあればどの製品・配置でも同じ効果になるわけではなく、窓、家具、暖房、気流の向きも関係します。
また、寒いから給気口を閉じるだけでは、必要な換気量や空気の流れが損なわれます。空気を入れる必要と快適さを両立するように、入口の位置や形を計画します。排気ファンの能力だけでなく、空気がどこから入り、人のどこを通って排出されるかを考えることが重要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。静止型全熱交換器では、給気と排気が熱交換素子の細かな流路を通ります。その抵抗に打ち勝って両方向へ必要な風量を流すため、一般に給気側と排気側の両方に送風機が必要です。全熱交換は温度の熱だけでなく水蒸気に関わる熱も交換する仕組みです。静止型の「静止」は素子が回転しないという意味で、空気を動かす送風機まで不要になることを示しているわけではありません。
選択肢2
(2)適当です。室内を周囲より高い圧力にすると、隙間で空気が室内から外へ流れやすくなり、周囲の汚染空気の流入を抑えられます。第二種換気は機械給気で正圧にしやすく、第一種でも給排気量を調整して正圧を保てます。手術室やクリーンルームでは、清浄な空気を供給することと、その清浄さを周囲から守ることの両方が必要です。ただし扉の開閉時なども含めた圧力と気流の管理が重要です。
選択肢3
(3)不適当です。床近くの給気口は、冬に冷気が足元へ流れ込みやすく、温熱環境への影響を小さくする配置とはいえません。一般に床上1.6m以上などの高い位置として、直接人へ当たりにくい方向や混合を考えます。温度計が室中央で適温でも、足元だけ冷える局所的不快は残ることがあります。換気回数を満たすだけでなく、人が座る位置や家具の配置まで含めて入口を計画する必要があります。
選択肢4
(4)適当です。風による圧力差は、おおむね外部風速の二乗に比例します。一方、開口を流れる風量は圧力差の平方根に比例するため、合わせると風量は外部風速に概ね比例します。風速が2倍なら圧力差は4倍、その平方根は2倍です。ただし風向や開口条件が同じで、風圧だけによる換気という条件付きです。温度差換気が加わった場合などへ、単純な比例関係をそのまま広げないようにします。
周辺知識
換気では、風量と室内圧力と居住者の快適さを同時に考えます。必要な量の新鮮な空気を入れても、冷気が直接当たれば不快になります。快適さを優先して入口をふさいでしまえば、今度は空気環境が悪化する可能性があります。入口の位置、流れの方向、熱交換などで両立を図ることが計画の役割です。
機械換気の第一種は給排気の両方、第二種は給気、第三種は排気を機械で行います。正圧にしたい室と負圧にしたい室では目的が違います。清浄室を正圧にするのは汚れを入れないため、便所などを負圧にするのは臭気を外へ漏らさないためです。
自然換気の駆動力には風圧と温度差があります。風圧は建物の風上と風下で生じる圧力差、温度差は暖かい空気が軽くなることで生じる圧力差です。どちらも開口や経路に抵抗があると流量が変わります。設備の種別を覚える際には、空気を動かす力と、空気を流したい向きを図で確認すると、用途に適する方式が理解できます。