学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和3年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問2
問題・正答・学習用解説
問題
室内の温熱環境に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
正解は(1)です。PMVは、多くの人が平均として「暑い」「寒い」をどう申告するかを予測した値です。0は暑くも寒くもない中立、正は暑い側、負は寒い側です。PPDは、その環境で温熱的に不満足と感じる人の割合の予測値で、PMVが0へ近づくほど低下します。本肢の「高くなる」は逆です。
例えば、平均的に暑いと感じる環境の温度や放射条件を改善して中立へ近づければ、暑さを不満とする人は減る方向になります。ただし、平均が中立でも全員の感じ方が同じにはならず、標準的なPMV・PPDモデルでは、PMVが0でもPPDの最小値は約5%です。これは特定の部屋で必ず5%が不満を言うという実測結果の保証ではなく、集団を扱う予測モデルの性質です。
また、全身の平均的な温冷感が中立でも、片側の冷たい窓や足元の冷気などによる局所的不快は残ることがあります。そこでMRT、放射の不均一性、気流なども確認します。PMVの数値を0へ合わせることだけで、室内環境の全てが解決するわけではない点まで理解します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)不適当です。PMVが0に近づくと、PPDは低くなります。平均的な温冷感が中立へ近づくほど、暑さや寒さによる不満が少なくなるという関係です。ただしモデル上の最小値は約5%で、0%にはなりません。人による着衣や体質などの差があるため、平均値から全員の反応を断定できないことを示します。PMVの符号は暑い・寒いの方向、PPDは不満足者の割合で、役割の違う数値です。
選択肢2
(2)適当です。MRTは、周囲の壁や窓などとの放射熱交換を、一つの代表的な温度で表す平均放射温度です。黒い球の温度であるグローブ温度は放射だけでなく、空気との対流にも影響されます。そのため空気温度と気流速度を用いて対流の影響を補正し、MRTを求めます。黒球温度をそのままMRTと置き換えると、風がある場合などに誤差が生じます。測定器が受ける熱の経路を分けて理解します。
選択肢3
(3)適当です。冷たい壁が片側にあると、体のその側から多くの放射熱を失い、全身平均とは別の不快さが生じます。冷たい壁面について放射温度差を10℃未満に抑える目安は、その偏りを小さくするためです。この10℃を室温と外気温の差や、全ての放射不均一の共通限度と読み替えないようにします。冷たい壁、暖かい天井などでは人の感じ方や評価の条件が異なります。
選択肢4
(4)適当です。静かに座っていても、呼吸や循環などの生命活動でエネルギーを使い、熱を発生させています。1metは体表面積当たり約58Wの代謝に相当し、体表面積を約とすると Wです。これは一人から出る熱のおおよその目安です。激しく動けば発熱は増えるため、人数だけでなく活動内容も空調負荷に関わります。100Wを一日分のエネルギーと混同しないようにします。
周辺知識
温熱環境の基本的な六要素は、空気温度、湿度、気流、放射、着衣量、活動量です。前の四つは周囲の環境、後ろの二つは人の条件です。同じ部屋でも、制服で座る人と運動する人では快適な状態が違う理由を、この六要素から説明できます。
人体は代謝で生じた熱を、対流、放射、汗などの蒸発で逃がします。熱の出入りがつり合うように、衣服や活動量に見合った環境を整えることが基本です。冷たい窓があると、空気温度が同じでも放射で失う熱が増えます。風が強いと対流や蒸発による放熱が増え、寒さを感じる場合があります。
30人が一人約100W発熱すれば、合計は約3000W、3kWです。教室では人体も無視できない熱源になります。ただし発熱は顕熱と潜熱へ分かれるので、全てがそのまま空気温度の上昇になるわけではありません。快適さの評価と空調能力の計算を、人の熱収支という共通の仕組みからつなげて考えると、PMVやMRTの役割が分かります。